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2「あなたはうつ病だからドナーにはなれません」


 前の記事にスキ&コメントありがとうございました!本当に嬉しかったです!
 うつ病を周囲にひた隠しにしてきた私には、自分の感情をさらけ出すことはとても不安なことでした。メンヘラきもいとか、自分語りうざいとか、批判されたらどうしようと色々考えて勝手に身構えていたのですが、書いて良かったと今なら素直にそう思えます。
私の心はどうしようもなくちっぽけで、醜くて、そんな自分が大嫌いで、でも、確かにどこかにまだ残っている私の小さな自尊心を、守ってくれてありがとうございました。

 おかげで今日は4時間程眠ることができました。平日は夫は仕事をしているので、日中は家にいません。だから、早く起きたら夫にくっついて寝息を聞くことにしています。体温を感じると胸があたたかくなります。寝息を聞くと安心します。夫が生きている。それだけのことが、私にはとても嬉しいのです。私は元々警戒心が強くて、神経質で、眠りも浅くて、人前ではろくに眠ることができませんでした。けれど初めて一緒に夫と眠ったとき、私は朝まで熟睡しました。それは私にはとても衝撃的なことでした。うつ病と同時に不眠症を患ってからは、熟睡こそできなくなりましたが、暗くて孤独で長い夜、夫がいると多少なりとも私の心は慰められるのです。

 引かれてしまうかもしれませんが、私は良い子どもではありませんでした。家庭環境のせいにするつもりはありません。ここに書けないようなひどいことをたくさんしましたが、特にひどかったのは異性関係です。かつて私は人との距離の取り方がよくわからず、普通に話をするのも苦手だったので、男性といるとすぐに性交渉に及んでいました。時には女性ともです。友情なんて不確かなものは信じられませんでした。少しでも相手に好意を持っていなければできない性交渉の方が、よっぽど手っ取り早く愛されていると信じられて安心したのです。相手に好意がなくても性交渉が成立すると知った今は、本当に愚かだったなあと思います。初めて妊娠・中絶した時の相手は、友達の彼氏でした。
 夫は乏精子症で、自然妊娠は無理だと医者に診断されています。けれど付き合い始めてすぐ、私は夫の子どもを妊娠しました。夫は喜びましたが、私は怖かった。虐待されて育った子どもは、自分の子どもも虐待するといいます。もちろん実行に移したことはありませんが、患者にすら時々凶暴性が込み上げてきて、手を上げそうになる私が子育て?
 悩みましたが、夫との子どもは二度とできないかもしれない。私は夫のプロポーズを受け入れ結婚して、そして、稽留流産しました。私たちの子どもは、お腹の中で亡くなってしまった。今までの罰が当たったんだと、真っ先にそう思いました。夫はしばらく落ち込んでいました。

 心身ともに健康な妻がいて、かわいい子どもがいて、部屋はいつもきれいに掃除されていて、仕事から帰ってきてビールを飲んだらおいしいごはんがあって、あたたかいお風呂に入って、布団でぐっすり眠る。そういう当たり前の幸せを、私は夫に与えられなかった。
 でも、ようやく私にも夫にあげられそうなものができた。それが腎臓です。

 昨日の私はちょっと調子が悪くて、一日中寝たきりでした。結果、たまっていた洗い物を仕事から帰ってきて疲れている夫にやらせてしまいました。私が謝ると、「こういうのは気付いた方がやればいいんだから気にしないで。今回はたまたま俺が気付いたからやっただけ」と言って笑ってくれました。
 昨日は調子が悪かったので罪悪感が勝ちましたが、その笑顔に今までどれだけ私が救われてきたことか。

 私には三人の父親がいて、三人目の父親以外好きじゃない。でも、ずっと父親というものに憧れはあった。
 夫と結婚したばかりの頃、こんなエピソードがありました。机の下に落とし物をして、それを取って出てこようとしたら、うっかり頭をしこたまぶつけてしまったのです。すぐに音に気付いた夫が飛んできて、「大丈夫?ゴチンしちゃったの?痛かったねえ」とぶつけた頭を撫でてくれました。私は無意識に「パパ」と呟き、幼児退行でも起こしたかのように夫の胸で号泣しました。成人済みの女がです。こうして文字に起こすとだいぶ気持ち悪いですね……。一回り年上の夫に、父性を求めていたことに、私はその時初めて気がついたのです。誤解のないように言っておきますが、私は夫を異性としてちゃんと愛しています。ただ同時に夫は父であり、兄であり、親友であり、私の全てなのです。

 ステージ5の慢性腎不全ということで、夫は最近とても疲れやすいです。貧血症状もあります。そんな夫を助けたい。支えたい。でも、今日も布団から出られない私です。私と同じ病気の方も、どこかで同じもどかしさを抱えているのでしょうか。

 私のうつ病って甘えなんじゃないの?仕事に行けないのもただのサボり癖なんじゃないの?と、たまに自分でさえ思います。目に見えない病気は本当に厄介ですよね。時々どんなに部屋をあたたかくしても、お風呂に入っても、あたたまってくれない場所が胸の奥にあって、そういうとき私はいつも、心がそこにあると感じます。本当はそこに負った深い傷を見せつけてやりたい。でもそんなことに意味なんてない。だから虚しい。

 今も苦しんでいる優しい人が、今夜はよく眠れますように。

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