2024年5月19日:2廻し

 「代理さん、今日は手伝ってくれてありがとね。なにか飲み物いる?」
「あーはい、じゃあ烏龍茶ください」
「ほいよ」
「ありがとうございます」
 美樹さんは俺の机の前に飲み物を置いてくれた。
 休憩室には長机2つを長辺通しを合わせるように配置されていた。その両方の机には、パイプ椅子が2つずつあり、俺は美樹さんの真正面に座る形をとっている。
「で、とりあえずは店の雰囲気は伝わったかな?」
「いや、あの、なんで俺はいきなり『ぼったくりバー』で働かされてるんですかねぇ!?」
「ちょっと待ってちょっと待って『ぼったくりバー』じゃないから!『メイド喫茶』だから!」
 美樹さんは顔を真っ赤にさせ、慌てて訂正してきた。
 いや、そんなわけないじゃないか。騙されるものか。
「いやだって飲み物2杯にパフェ1つで4000円って高すぎますよ」
「お客様へのサービスを手厚くしてるからその分料金に上乗せされてるってだけで、やみくもに高くしてないよ」
 うん、まぁ確かにお客を席に案内して料理を運ぶ以外にも、頻繁に席に行っては客と話をしている人たちを目にしていた。テーマパークで売ってるものは、よそで買うより割高になっていることが多い。ここもそういうものだと考えれば納得もいく。だが。
「それにしてはさっきのお客さんたち、めちゃくちゃしどろもどろになってましたよ。やっぱり脅したりとかしてるんじゃないですか?」
「そんなことするわけないじゃん。あれは人見知りとか異性に慣れてないとか、そーゆーのじゃない?」
 そうかもしれない。というか言われてみるとそっちのがあり得そうだ、なんだよ『ぼったくりばー』って……。
 

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