スマホとスマホカバー

僕はスマホである。

情報や調べ物はもちろん、動画やゲーム、買い物や投稿など、色々出来ちゃう優《すぐ》れもの。

沢山いる仲間達の中から、僕はご主人様に選ばれて、もうすぐ1年になる。

少しはご主人様のパートナーになれただろうか。

同じ日に一緒に選ばれた、僕の護衛をしてくれている水色のスマホカバーさんは薄汚れていた。

その汚れの分だけ、僕は守られてきたんだ。

いつも、ありがとう。

そんなある日、スマホカバーさんを僕から引き剥《は》がすご主人様。

捨てられてしまう恐怖が混み上がった。

到頭《とうとう》お役御免となってしまうのかな。

物としては、いずれは通る運命《さだめ》なのかもしれないが、やはり悲しいし、怖い瞬のである。

そう思っていたら、スマホカバーさんは戻ってきて、また僕の護衛をしてくれることになった。

仄《ほの》かに石鹸《せっけん》の香りとお日さまの匂いが漂ってきた。

「あんまり、汚れ落とせなかったけど、まだ大丈夫でしょ。もうしばらく、よろしくお願いします」

ご主人様の声が響いた。

物だから、頑張りたくても性能は変わらない。それどころか、どんどん耐久性がなくなっていくもの。


だけど、スマホカバーさんは、「がんばるね」と声なき感謝の言葉をご主人様に送ったのであった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?