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ByeBye ℳ𝑦.Love。


最後の街並みは、よく行った鉄板焼き屋さんだった。
今はもう店をたたんでしまって営業はしていない。
そこから海の通りへ。
お互い理解している。
お互い未来へと進む為に。
男は優しく呟き、女は泣いていた。

海は穏やかで、波は緩やかに寄せては返す。
潮騒がふたりを包んでいた。
熱い缶コーヒーをふたりで開けてひと口。
カモメが独り、恋に啼く。

とにかく生きろと呟き、男は女の頭に手を当てる。
その意味を女は誰よりもわかっていた。
泣きながら頷いた女。
踵を返して行く男。
背中を見送る女は未来を見ていただろうか?
男は視線を受けながらそんな事を考えた。
もうひと声、カモメが啼く。
今度は何を啼いたのか?
男にはわからなかったが、女にはわかったことだろう。

歩きながら、おもむろに煙草に火を付けて、紫煙を空へ放つ男。
紫煙の先は遙か未来か?
そんな事を考えては少し笑った。

女は男が放った紫煙を目で追いかけていた。
陽の光が紫煙を霧散させて、少し幻想的だった。
それを見て、少し笑った。

ーーーありがとう。


ByeBye ℳ𝑦.Love



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暁月夜 まくら
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