キミにさよならを♯12
あれから少し経って。
3人はサカガミ、冴子、スズタニ、小鳥遊先生、4人の墓を作った。
小高い丘の上。七種カヲルが眠る先に。
ーーみんな、世話になった。ありがとう。
悟は花を添えた。
ーー何で……死んじゃうんだよ……みんな……弱くなんてないのにさ……
ルナは花を添えた。
ーーみなさん……安らかに。おねぇちゃん……いつも一緒だよ。
カヲルは花を添えた。
カヲルは、ふたりと別れて程なくして運送業を始めた。
もちろん『スズタニ運送』だ。
サカガミの店のホストたちが半分、スズタニ運送へ就職した。
サカガミに代わる店長の計らいだ。
裏の仕事は、カヲルだけで受けた。
闇を狩り取る希望となるために。
悟とルナ。
4人の墓からの帰り道。
「家に帰ろーよ、悟」
「あぁ、ちょっと買い物して帰るから先に帰ってろよ」
「じゃーあたしも行くよ」
「いいって、大したものじゃねぇんだ」
「んだよっ!じゃー帰るっ」
「あぁ、またな、ルナ」
ルナの後ろ姿に呟く悟は街の人混みに消えていった。
悟のアパートに着いたルナ。
玄関を開けて、リビングに。
ふとテーブルの上を見ると。
殴り書きの汚い字で書かれている
『さよなら』
『お前は弱くて、足手まといだから邪魔だわ。カヲルと一緒に生きろ。カヲルを助けてやれよな』
ーーざっっっけんなっ!!!あの野郎!!!
悟に電話をかけるが……。
『この番号は現在使われておりませんーー』
「あの野郎っ!!!!」
カヲルに電話をかけながら街へ飛び出すルナ。
『もしもし、ルナちゃん?』
「カヲルちゃん!悟来てないよね?」
『うん、来てないけど……どうしたの?』
「あの野郎、出ていきやがった!」
『出ていった?』
「さよならってつまんねー手紙置いてさ!腹立つ!!」
『あー……それでか……』
「なに?カヲルちゃん」
『悟さんから少し前にLINEが来てね【ルナと生きろ】ってひと言。返事したんだけど既読が一切つかなくて』
「何やってんだよ、あの野郎は!」
『多分だけどね……あの人、独りで背負い込む人だから……きっと独りでまた新たなフィクサーと戦う気でいるんだと思う。悟さん、あの人に似てるから』
電話口でカヲルは苦笑い。
「わっかんねーよ!何でひとりで!?」
『きっと……わたし達を守る為。それから……自分が……独りなら辛くないと思ってるんじゃないかな』
「辛い??」
『サカガミさんや冴子さん、スズねぇに小鳥遊先生。自分に関わった人が死んでいくのが辛かったんだと思う』
「そりゃ……」
ーーそっか……悟もあたしも……みんなが死んで……辛かったんだ。
「そうだ……よね」
カヲルはルナが泣いているのに気付いて、『大丈夫だよ』と声を掛け続けた。
『悟さんは、きっとーー』
言おうとしたカヲルに涙が溢れた。
独り、桜並木を行く悟。
煙草の紫煙を燻らせて。
ーーカヲルが闇を切り裂く希望なら、オレは闇を喰らう悪魔でいい。あいつらに闇の牙が届かないよう、喰らい続ける羅刹でいい。
𝑒𝑛𝑑