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彩。♯3



「なるほど、いい感じだ」

冴子先生の元、悟は『模倣』に勤しんだ。
冴子の能力は悟の下位互換で自分に合ったカテゴリーしか『熟練』出来ない。
悟は料理で使う手順、切る、焼く、煮る、炒めるetc……全てを冴子から『模倣』した。
後は材料でアレンジするだけだ。


「かなり『模倣』できたな」

それはかなりの料理が出来上がった事を意味している。
とても3人分では無い。


『とりあえず……カズヤ起こしてこよっか』

大量の料理の洗礼が待ち受けているのを二日酔いのサカガミは知らない。

「まぁ、残っても夜にはルナが帰ってくるだろ」

中途半端だった冴子の料理の『模倣』が出来てご満悦の悟だった。

ーーこれで美味いものが何時でも食える。

密かに悟は微笑んだ。

美味い食事は心を溶かす効果があるようだ。


ーー帳面町のふたり。

スズタニへの連絡を終えて、帰路に着くふたり。
夜行バスだ。

乗る前、ルナに冴子からLINEが来ていた。

ーー帰りカズヤのとこ寄れない?晩御飯一緒にどう?

ルナは夜行バスで帰ることを告げて、作られた料理の写真を見て悔しがった。それを横目にカヲルが言う。

「冴子さんの料理ってホント、プロ顔負けよね」
「そーなんよぉ……食べたかったぁ」
「わたしたちは、サービスエリアグルメにしよ?」
「あ、そーだねっ」


ーー物騒な夜行バスへ。


サカガミ邸では、スズタニ、小鳥遊を呼んでの宴になっていた。

二日酔いも迎え酒で屠るのが、ホストたるサカガミ。

それに、彼等と居るとサカガミはとにかく楽しかったのだ。
真物ほんものの仲間がすぐ傍に居ることの幸せを感じていた。

笑い声が響くサカガミ邸。

悟はひとりベランダへ。
其処へサカガミが酔い醒ましに出てきた。
綺麗な月夜だ。

「サカガミ」
「んー?なんだあ?悟」
「オレはひとりで死ぬ気だった」
「ん?」
「ガキの頃から忌み嫌われたこの能力で、まさか仲間が出来ると思わなかった」
「ああ、そうだな。オレたち異端者ははみ出しちまうからな。オレも似たようなもんよ」
「力をフルに使って、好き勝手やってる輩をぶちのめして死ぬつもりだったんだ」
 「今は?」
「そうだな、今も別にくたばっても構わねぇが……」

暫しの沈黙。

「くたばるなら、オマエらのためにくたばりてぇな」

そう笑う悟に、サカガミは少し涙ぐむ。

「バカか……てめぇはくたばらねぇよ」

涙を隠すように月を見たサカガミ。

穏やかな月の夜だったーー。


𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

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