心霊スポット。
だいぶ昔の話。
悪友3人とわたし。
深夜に心霊スポットに行く話になった。
車で1時間ほどの某心霊スポット。
わたしも心霊体験などしていない頃だったから、怖がることも無く現地へと。
その場所は山道を回って駐車場に戻ってこれる様になっていた。
深夜の山道ツアーだ。
合計男4人。
しかし、わたしには弱点があった。
夜中の山道。灯りは一切ない。ノリで来ているが故に照明など持ってきてない。
つまり、真の闇なのだ。
わたしは闇に目が慣れるのが極端に遅い。
闇目の効かないわたしは、道中他3人から遅れをとる。
容赦のない悪友は見事にわたしを置き去りにした。
完全な闇の中で山道に独り。
シチュエーションは最悪だ。
奴等の歩調に合わせられないから追いつくことも無い。
真の闇に包まれると、自分がちゃんと立っているのか?どっちを向いているのかが朧気になってくる。
それでも、顔を向けている方に進むのは間違いないと山壁に手を添えながら進んで行った。
刹那。
わたしから見て右手は山壁。
左はそれほど高くはないが崖。
左手前方に誰かがしゃがんで居るのがわかった。
わたしはすぐに理解した。
先に行った野郎共の1人がわたしを脅かそうと、しゃがみこんでいるのだと。
近くを通った瞬間に立ち上がり大きな声でも出すのだろうと。
心構えが出来たわたしは、ゆっくりと、しゃがみこんでいる人物の元へ。なるべく近付かないのように横を抜けたかった。
……おかしい。
だいぶ接近した。
大声を出されてもおかしくない距離だ。
しゃがんでいる人物は微動だにしない。
目を凝らすと……わたしは気付いてしまった。
流石に少しずつではあるが目は慣れてきている。
近くなれば輪郭やら服の模様やらが見えてくるはずなのだが、しゃがみこんでいるやつは、黒なのだ。
黒の塊が人の形をしてしゃがみこんでいるのだ。
……直感で人間ではないと悟った。
かなり動揺していたのだろう。
引き返せばよかったのに此処を通らなくてはみんなの所へ行けないと思い込んでいたわたしは、ゆっくりとその黒い塊へと近付いていく。
横に並ぶ。
直視は出来なかった。
むしろ大声で脅かして欲しかった。その方がよっぽど安心できたからだ。
黒い塊はしゃがみこんだまま動くことは無い。
通り抜けて、注意しながら少し速度を上げて歩いた。
怖かった。
後から着いてくるのではないかと思ったからだ。
その気配はなく……
駐車場へ辿り着いた。
悪友3人は呑気に
「おせーよ!?何やってんだ?」などと言うが、わたしは自分に起きていたことは言えなかった。
言ってしまったら……本当に着いてきてしまいそうだと思ったからだ。
「なんもなかったなー!帰ろうぜー!」
わたしは、黙って頷いて、今後心霊スポットに行くのを辞めると誓った。
[完]
若かりし頃の実話です。
闇って本当に怖いですね。はい。