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『X.D.』♯19.8


11月3日。晴れ。


親父に呼び出される。
いつもの口調で。
大事でも小言でも何も変わらないあの口調。
感情を感じさせないあの口調で。

呼び出された公園で告げられた事。

「何がやりたいんだ、お前は」
「何がって何だよ?」
「無意味な事をするな、そんな事をしても何の意味もない。俺のキャリアは変わらんぞ」

ーー揉み消したのか……親父……。

「邪魔をするな、大義の最中だ」
「何が大義だ、お前がやってる事は僕と大して変わらないだろ。お前の息子だから同じことしてやったんだよ!」

刹那に飛んでくる拳は腹にめり込んで、僕は地に伏した。
ひらりとコートから落ちる紙切れを何となく握り締めて親父を見据えた。

「貴様がやってる事は無意味な殺人だ。俺は違う」
「違わねぇ……よ」

踵を返した親父を痛む身体では追えずに、握った紙に目を落とす。

『‪✕‬‪✕‬病院、助けて』

血で書かれたその文字。
僕はイノウエミサトと直感した。

せめて、イノウエミサトだけは助け出さなくては。



11月5日。雨。

巨大精神病院。
そこのスタッフになり潜入した。
決まったスタッフしか立ち入ることが出来ない病棟がある事を聞き出した。

何でも精神疾患が酷くて、鍵をかけなくてはイケナイほどだとか。

贋物だ。

そこにイノウエミサトは居るのだろう。
とにかく巨大な病院だ。
仕事をしながら、探っていった。


11月21日。曇り。

やっと見つけた。
そこのスタッフになるため、心血を注いだ。
セキュリティカードを手にすることが出来た。

そこのドクターの愚痴を聞いた。

『105号室のじいさんさ、自分を完全に教授だと思っててさ、自分が妙な実験してると思ってるんだよ』

詳しく聞いて、患者の手伝いをすることを快諾した。
用意するものは日記だ。

僕にちょうどいい日記。
思い起こして書いてやろう。

セキュリティカードを手にしたとて、病棟内は自由に行くことが出来なかった。医者では無い僕に立ち入る理由がない。あるとしたら、この日記を完成させた時だろう。

信用を損なわぬよう仕事をしながら日記を完成させるんだ。


12月24日。

準備は出来た。

僕の全てを賭けて、イノウエミサトを生かす。





「後半3ヶ月は……要らないか」

カヲルはそう言うと、日記の後半を破り、置いていった。


七種カヲル、最期の戦いへ向かった。



続 ~『X.D.』♯20~



取ってつけたように埋めた3ヶ月。

『胸アイ』に繋げたくて書いてみました。
よろしかったら。


サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。