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5月5日 カナダでは

「5月5日はこどもの日」

日本人なら当たり前の端午の節句にあたる5月5日。子供たちの健やかな成長を願い、古くは立身出世の祈祷を込めた行事だった。カナダに暮らして10年以上になるが、カナダでは「MMIWの日」となっている。

学校からの通知

5月に入って、息子の通う学校から、「5月5日は赤い服を着てきてください」とお願いをされた。まったくピンとこなかったのだが、そこに「失踪あるいは殺害された先住民女性への祈りのために」と書かれていた。

なんでそれで赤い色なのか、よくわからなかった。カナダでは建国記念日にあたる7月1日のカナダデーに赤い服を着ていることはあるが、なぜ、先住民と一連の事件と赤色が結びつくのかわからなかった。

これまでも、「ピンク色」「オレンジ色」「黒色」「緑色」など様々な服装で登校させてください、というお願いはあったのだが、赤色と先住民については特に学校から説明もなかった。

ピンクは、ピンク色のシャツでからかわれたことが原因でいじめにつながったこと、オレンジも同様に先住民がそれで迫害を受けたことからシンボルとなっている。

黒はキング牧師の記念日に、そして緑は地球の象徴、アースデーの時にお願いをされた。これらは学校によってまちまちなので、もっとやってるところもあれば、やらないところもある。

先住民の友達の投稿から

カナダの先住民に限らずだが、伝統的な芸術や思想というものが、その土地に長く暮らしている人たちの中には息づいている。カナダの先住民で言えば、生まれたときから自分を象徴する動物を持っていることなどだろうか。

こちらの専門学校に通っていた時に、先住民に分類されるクラスメイトがいた。そのうちの一人とまだSNS上でつながっているのだが、その子の投稿がたまたま上がってきた。

赤は唯一魂が見ることができる色。だからMMIW(殺戮・失踪した先住民女性:Missing and Murdered Indigenous Women)キャンペーンでは赤を着て、同胞たちの鎮魂を祈る。私のいなくなった姉妹のために赤を着る。

ちなみにカナダ先住民の多くの部族では、その部族内に暮らす人間すべてを家族とみなし、直接の血のつながりがなくても兄弟姉妹と言ったりすることが多いそうだ。

赤い色にそんな意味があったことを私は長年カナダで生活していて知らなった。

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どう伝えるのか

気合をいれて全身赤色で登校した息子に、「学校で何かMMIWについて話はあったのか?」と聞いてみたが、覚えていないようだった。インパクトが強い内容ではあるが、ショッキングな内容だしやらなかったのかもしれない。

ユースワーカーの勉強をしていた時に、先住民に対する偏見、差別については、今なお深く複雑な問題で、それゆえに「問題児」として扱われてしまう子供も先住民には多い、と聞いていた。

カナダの過去30年の失踪・殺害の被害者女性は、それ以外の女性の12倍にも上るそうだ。それだけ標的にされやすく、またその被害状況も表に出にくい状況にあるのだそうだ。

この土地にずっと住み続けていたにも関わらず、土地を奪われ、文化を奪われてきた歴史があり、そして今なおも事件に巻き込まれやすいというのは、なぜなのだろうか?

この事実をどうやって子供に伝えたらいいのか、難しいな、と思ったが、それでもこの先住民の友達の投稿が目に入ってきてよかったな、と思う。魂が唯一見ることができる赤色。来年は私も着ようと思う。

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