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大丈夫じゃない大丈夫。

とある一軒家に私、賀喜遥香は住んでいる。


、、、、、、いや。


"住んでいる"とはとても言い難いな。


この家に私の居場所なんてどこにも無い。


強いていうなら1階の和室の隅が私の居場所。

大好きだった祖父母の仏壇がよく見える位置だ。


今日も学校から帰って、すぐにこの場所に座った。


仏壇を見れば、口角を少し上げた優しい表情のおばあちゃんとおじいちゃんが遺影として供えられている。


あぁ、、、


私が泣いたりしたらすぐに頭を撫でてくれてたっけ。


2人とも死んじゃう前にはもう鳥の足みたいに細くなっちゃってたけど、あの暖かさだけは全く変わらなかったな。


会いたいよ、、、、、、


もう何度目か分からない位に頭をよぎった思い。


その時、和室の障子が荒々しい音を立てて開けられた。


私がこの世で最も嫌う生物が入ってきた。


「お、遥香。」


遥香「、、、なに。」


「帰って来てんなら声くらいかけろよ。」


遥香「あんたにそんな義理はないから。」


「はっ、言うじゃねぇか。
 そんなことより酒がねぇじゃんか。」


遥香「あんたが一昨日、癇癪を起こした時に
   全部飲み尽くしたでしょ。」


「なんで買ってねぇんだよ。」


遥香「買えるわけないでしょバカ。
   私まだ高校2年のみせいねっ、、、!!」


バチンッ!!


私の頬をアイツは力いっぱいに叩く。


「お前も偉くなったなぁ、、、」


遥香「、、、何すんのよ!!」


「俺に口聞いていいと思ってんのか?
 この一家の大黒柱様によぉ?」


遥香「あんたなんか家族でもなんでも無いっ!!
   この家の大黒柱はおじいちゃんだもん!」


「死んだじじいの話なんてすんじゃねぇよ、、、
 とりあえず酒持ってこいよ。な?」


遥香「、、、、、分かったからこの部屋から消えて。」


「やっぱ遥香は母親に似て物分かりがいいなぁ。
 俺の言うことをすぐに聞くお前の母親と。」


汚らしい笑い声を上げてその男は去っていった。


私は行きたくも無いお酒の調達に外へ出た。


さっきのアイツは私の、、、母の再婚相手。


両親は私が生まれる前に離婚をし、母は1人で私を産んだ。


しかし、1人で子どもを育てるには難しすぎるこの時代。


そこで母が頼ったのがおじいちゃん達。


私はおじいちゃん達に育てられたと言っても過言では無い。


学校から帰ったら一緒におやつを食べて、夕飯作りを手伝って、笑い合いながら夕食を食べて、、、


そういう日常を送っていた。


幸せだった。


いつも真っ直ぐに私の目を見つめてくれ、学校であった面白い話をにこやかに聞いてくれる。


私はそんなおじいちゃん達が大好きだった。


しかしその反面、母は私を産んでから家に帰ることが少なくなった。


私と言う邪魔な存在をおじいちゃん達に預けて飽きるまで夜遊び。


私が小学生の頃、母が深夜に帰ってきたことがある。


家中にお酒の匂いが強く充満し、一瞬で呼吸がしづらい空間となった。


だけど私は嬉しかった。


久しぶりに母に会うことができると思ったから。


なんの話をしよう。


話したい事が頭の中に次から次へと浮かんでいく。


だけど現実は甘くないと言うことを私はその時に学んだ。


派手なメイクを施し、だらしなく椅子に座っている母。


遥香「ママ、、、あっ、、、あのね!」


「うるさい。」


遥香「えっ、、、、、、?」


「あたし今疲れてんの、さっさと消えて。」


遥香「でっ、、、でもね!お話ししたいことが」


「うるさいっ!!」


遥香「ひっ、、、!」


初めて聞いた母の大声は私の涙を引き出すのには充分なものだった。


遥香「うぅ、、、ひぐっ、、、」


大泣きしている私の声を聞いたおじいちゃん達が急いで私の元に駆けつけてきた。


すると。


「遥香、おじいちゃん達はお母さんと話があるから先に寝ていなさい。」


いつものような優しい笑顔を浮かべたおじいちゃんが私を寝室まで送り届けてくれた。


「おやすみ、遥香。」


最後に頭を撫でてくれたおじいちゃんは、寝室の扉を静かに閉めた。


私は夢を見ていたんだ。


さっきのお母さんは本物じゃない。


本物はもっと優しいんだ。


そう思い込んで私は目を瞑った。


しかし、少しすると何やら言い争う声が聞こえてきた。


おじいちゃん、おばあちゃん、お母さんの口論。


私はいても立ってもいられず、おじいちゃん達のいる部屋を覗いた。

そこにはいつもの優しい表情をしたおじいちゃん達はいなかった。


鬼のような形相でお母さんに檄をぶつけているようだ。


その内容は私のことについてだった。


遥香を育てる気はあるのか、子供の未来を棒にふる気か、親として無責任だ、、、、、、


そんな声がおじいちゃん、おばあちゃんの口から次々と出てくる。


それにお母さんも大声で言い返していく。


だけどお酒を飲んで呂律が回っていないようだ。


何を言っているのかまるで分からない。


私はその空間から逃げた。


子どもながらに何かを察したんだろう。


私はそのまま布団に潜って眠ろうとした、、、、が。


おじいちゃん達の怒鳴り声が頭に響いて、その日は一睡も出来なかった。


真夏「あれ?遥香ちゃん?」

遥香「、、、、、、真夏さん。」


お酒を買いに行く途中、昔からお世話になってる近所のお姉さんに会った。


秋元真夏さん。


おじいちゃん達が家を開けた時には、真夏さんのお家で遊んだりご飯を食べさせたりしてもらった。


それに同い年の男の子がいると言うことでよく遊びに行っていた。


優しくてとってもいい人だ。


真夏「、、、、、、ちょっと!
   一体どうしたのその顔にある跡!!」


跡?


あぁ、さっきアイツに殴られた時の跡だろう。


もう慣れてしまって隠すこともしなくなっていた。


真夏「ほんとに酷い!!
   ちょっとうちにおいで!!」


遥香「いっ、いえ、、、」


真夏「なに謙遜してるの!
   それにうちには〇〇もいるし安心だよ!」


遥香「〇〇、、、なおさら無理です、、、///」


幼馴染である〇〇に今の顔を見せるわけにないかない。

こんなアザのできた顔を。


真夏「手当しない方が悪くなっちゃうよ!
   うちでしっかり手当てをして行きなよ!」


遥香「じゃあ、、、お言葉に甘えて、、、」


私は真夏さんに連れられて秋元家に向かった。

ある人物に見られているとも知らずに、、、、、、


「あ?遥香じゃねぇか、、、」


秋元家。

真夏「ただいまー!」
遥香「お、、、お邪魔します、、、」


真夏さんは4人家族で暮らしている。


真夏さん、旦那さん、それに〇〇と妹の奈央ちゃん。


この家族はいつも楽しそうで、私の憧れだった。


いつかお母さんとおじいちゃん達が仲直りして一緒に暮らすことが。


まぁ叶うことはもう無いけど。


奈央「おかえりー!!」

真夏「ただいま!ほらお客さんに挨拶!」


奈央「えっと、、、こんにちは!
   あきもとなおっていいます!」



これが奈央ちゃんか。

〇〇から妹ちゃんの話は何度か聞いていたけど可愛いな、、、


真夏「お兄ちゃんはどこ??」


奈央「にぃにはおへや!」


真夏「そっか!じゃあリビングで手当てしよう!」


遥香「すみません、、、」


秋元家、リビング。


遥香「えっと、、、」

奈央「〜〜♪」


奈央ちゃんが私の膝の上に座っている。
何だか嬉しそう、、、


真夏「こら!遥香ちゃんの膝から下りなさい!」

遥香「いっ、、、いえ!私は大丈夫です!」

奈央「なおもだいじょーぶ!」

真夏「まったく、、、」


そう言って真夏さんは棚から救急箱をとりだして私の手当てをしてくれる。

少し頬が切れてしまっている所もあり、それ用の軟膏薬を優しく塗ってもらう。



真夏「まったく!
   女子の顔に傷をつけるなんて許せない!!」


奈央「なおもゆるせないぞー!」


遥香「ふふっ、ありがとう、、、」



私は2人に笑顔を見せ、安心させようとした。

けど、たぶん引き攣ってたんだろうな。

真夏さんにすぐバレてしまったみたい。


真夏「遥香ちゃん、、、」


すこし何かを考えたふりをして私に言う。


真夏「遥香ちゃん、今日はここに泊まってかない?」


遥香「えっ?!
   そんなの悪いですよ!!」


真夏「失礼だけど、遥香ちゃんがあの家に居たら
   壊れちゃうと思う。暴力を振るわれたのも
   今日が初めてじゃ無いでしょ?」


遥香「そっ、、、それは、、、」


真夏「だから今日は家に泊まって警察に
   相談しに行こ!」

この人は何で私に優しくしてくれるのだろう。

家族でも無いただの高校生を、、、

私は思わず聞いてしまった。


遥香「何でそんなに優しくしてくれるんですか、、、」


真夏「遥香ちゃんはもう家族みたいなものだから!
   小さい頃から見て来たからね!」


遥香「真夏さん、、、」グスッ


真夏「泣かないの!
   そうと決まったらやることは一つ!!」


そう言って出かける準備をはじめる真夏さん。


私と奈央ちゃんは何をするのかよく分からずポカンとしてた。


真夏「ほらほら!2人とも準備して!」


奈央「なにするの??」


真夏「遥香ちゃんがお泊まりするのに必要な物を
   買いに行くの!」


遥香「えぇっ!そこまでお世話になるには、、、」


真夏「いいのいいの!それじゃあレッツゴー!」
奈央「ごー!」


それから私は近くのデパートに向かい、パジャマや下着などを買っていただいた。


本当に感謝してもしきれない。


そして真夏さんのお家に戻ると、、、、


真夏、奈央「「ただいまー!」」
遥香「お邪魔します。」


〇〇「おかえりー、、、あれ?遥香じゃん!」


真夏「今日はうちでお泊まりだもんねー?」


奈央「ねー!」


遥香「そういうことなんだ、、、///」


〇〇「へぇー。じゃあもう1人分作んないとな、、、」


真夏「あ!夜ご飯作ってくれてたの?」


〇〇「まぁね。」

奈央「おにいちゃんのお料理だいすき!」


〇〇「ありがとな〜。」ナデナデ


真夏さんは料理が得意で、昔から私も大好きだった。

だけど〇〇もその血を継いでいるのか料理がめちゃくちゃ上手い。

前に食べたことあるけど本当に美味しかった、、、


真夏「あっ!今日はお父さんが出張で帰ってこない
   から4人分で良いよ!」


〇〇「いやそれ早く言ってよ、、、」


真夏「忘れてた💕」


〇〇「まったく、、、」


「「「「いただきまーす!」」」」


遥香「美味しい!!」


〇〇「そりゃ良かった笑。」


真夏「まぁ私よりは少し劣るかなー?」


〇〇「どこで意地はってんだ笑。」


奈央「ママもおにいちゃんのもすきー!」


、、、、、、暖かい。

こんなに楽しく夕食を食べたのはいつ振りだろう。


いつもあの男に怯えながらご飯を食べる生活がもう何年も続いていたから。


ご飯ってこんなにも楽しくて、美味しい物だったんだ。


ご飯を食べ終わるとお風呂をいただくことにした。

すると、、、


奈央「はるちゃんと入るー!」


遥香「ふふっ、一緒に入ろっか!」


奈央「やったー!」


奈央ちゃんが私とお風呂に入りたいと言ってくれた。

お互いの体を洗い合ったり、私が奈央ちゃんの頭を洗ったり、、、

目に泡が入っちゃって大変だったけど、慌てる奈央ちゃんが可愛くて、、、💕


奈央「うぅ、、、しみるよぉ、、、」


お風呂から上がったら私、奈央ちゃん、〇〇の3人でテレビゲーム。


〇〇は料理も運動も勉強もそつなくこなすんだけどゲーム系は全くダメ。


普段は見れない〇〇の顔が見れてとても楽しかった!


遥香「やっぱり〇〇ってゲーム系は、、、笑。」


〇〇「笑うなよ、、、」


奈央「おにいちゃんよわーい!」


〇〇「うぐっ、、、」


可愛がってる妹に真っ直ぐな悪口を言われてしまい中々に傷ついてるご様子。


ちょっぴり可哀想だな、、、笑。


その後も諦めの悪い〇〇が何度もリベンジをしてくるが全く勝てない、、、笑。


そして時刻は夜の10時。


そのうち奈央ちゃんが眠たくなって来てしまった。


奈央「、、、ねみゅい。」


〇〇「奈央はそろそろ寝よっか?」


奈央「おふとんまでつれてってぇ、、、」


〇〇「はいはい笑。」


奈央「はるちゃん、、、おやしゅみ、、、」


遥香「おやすみ!」


そう言って〇〇は嬉しそうに奈央ちゃんを抱っこして寝室へと連れて行きました。


あんなに可愛い妹がいたら溺愛しちゃうのもわかるなぁ。


大体10分くらいが経ったあと、奈央ちゃんを寝かしつけた〇〇が帰って来た。


遥香「奈央ちゃんは寝た?」


〇〇「うん。今日は遊んでくれてありがとな。」


遥香「私もすごい楽しかった!
   奈央ちゃんのこと大好きになっちゃった笑。」


〇〇「奈央も遥香のこと大好きだから
   また遊びに来てよ、、、、、、ん?」


遥香「どうかした?」


〇〇の右手が私の頬に触れた。


それにどんどんと近づいてくる〇〇の綺麗な顔。


え?!


ちょっと、、、急にそんな、、、ダメだよ、、、///


そんな思いとは裏腹に私はそっと目を閉じた。


〇〇「この傷どうした?」


遥香「え?」


〇〇「このほっぺたの傷。
   学校で会った時はこんなの無かったろ。」


遥香「あぁ、、、これはちょっとね。」


〇〇「なんかあったら俺に相談しろよ?」


遥香「ううん!私は大丈夫だから!」


うそ。

本当は全く大丈夫じゃ無い。

今すぐにでも誰かに助けて欲しい。

おじいちゃん達の家を取り返して欲しい。

情けないことに私1人じゃ何もできない、、、

でも〇〇に心配かけるわけにはいかないから。

そう思って私は笑顔を作る。



〇〇「ばーか。
   今まで何年一緒にいると思ってんだ。」


遥香「、、、え?」


〇〇「遥香の考えてることくらい目を見りゃ
   分かるよ。」


遥香「、、、なにそれ。」


〇〇「いつでも俺を頼れよ、約束な。」


遥香「ありがと、、、、////」


昔は私よりも子供っぽい〇〇だったけど、いつの間にかこんなカッコいいことを言うようになったんだ。

もっと好きになっちゃうじゃん、、、///


真夏「かっこいいね〜!」


〇〇「聞いてたのかよ、、、」


真夏「そろそろ寝るから最後にお水飲もっかな〜って
   思ったら2人の声が聞こえて来てね♪」


〇〇「なんか恥ずいわ笑。」


真夏「まぁまぁ!それじゃおやすみー!」


それから私たちは2人で他愛もない話をした。

ソファに2人並んで取り止めもない話を延々とする。


〇〇「どうやったらゲームって上手くなんの?」


遥香「〇〇はゲームセンス絶望的だから、、、笑」


〇〇「腹立つな〜笑。」


遥香「だってどれだけ教えても上達しないじゃん!」


〇〇「、、、、、、それは遥香の教え方が悪い。」


遥香「うわー。人のせいするタイプだ。」


〇〇「ほんとですから〜。」


遥香「ひっどい男だなぁ笑。」


こんな話をずーっと。

不思議なことに話題は一向に尽きない。

たぶん朝まで話せる気がする。


、、、、、、もし〇〇と結婚したらこんな生活が待ってるのかな。


ふとそんな事が頭をよぎった。

まだ付き合ってるわけでもないのに急に結婚なんて何考えてるんだ、、、///

でも絶対にしあわせである事は間違いないと思う。


ピンポーン、、、ピンポーン、、、、、、


〇〇「え?こんな時間に誰?」


遥香「もう夜の10時なのにね。」


〇〇「ちょっと出てくるわ。」


ソファから立ち上がった〇〇が玄関のほう向かっていく。

玄関の扉が開く音がした。

ドアチェーンを掛けているおかげでガチャンッと金属音がする。


〇〇「どちらさまですか?」


私は〇〇とお客さんの会話に聞き耳を立てた。


「すみません、遥香はいますか?」


〇〇「遥香?あなたは、、、」


「あぁ、まだ君とは会った事が無かったね。


遥香の父です。


私は一瞬で鳥肌が立った。

なんで、、、こんな所までアイツが、、、、、、!!


〇〇「そうだったんですね!待ってて下さい。」


扉を一旦閉めた〇〇が私の元へ戻って来た。


〇〇「おーい遥香!
   お父さんが迎えに来たけど、、、遥香?」


遥香「はぁ、、、はぁ、、、、、、!!」

〇〇「どうした?!」


遥香「どうして、、、こんなところまでっ、、、!!」


〇〇「、、、落ち着け。ゆっくり息を吸え。」ギュッ


〇〇は私を優しく抱きしめ、落ち着かせようと頭を撫でてくれる。

そして私の目をじっと見つめ、何かを察してくれたようだ。


〇〇「今日は何とか帰ってもらうからここで
   待っとけ。絶対に玄関には来んなよ。」


最後に私の頭を2回、ポンポンっとしてくれた。

そしてまた玄関に戻って行った。


〇〇「すみません。遥香はもう寝ているので
   今日のところはうちで」


「んな戯言はいいんだよ。黙って遥香を渡せ。」


〇〇「だから遥香は」


「いいから遥香を出せって言ってんだよ!!」


ガンッッ、、、ガンッッ!!!


「遥香は俺の娘だ!
 そいつをどうしようが俺の勝手だろ!!」


ドアチェーンを無理やり壊そうと何度も何度もドアを開ける音がする。

その音がまだ私を恐怖へと誘う。


〇〇「、、、うるせぇよ。」


「あ?お前いま何つった?!」


〇〇「うるせぇって言ったんだよ!!」


今まで聞いたことのない声を上げた〇〇。


〇〇「さっきから遥香のことを都合いいモノみたいに
   言いやがって!」


「だっ、、、だから遥香は俺の」


〇〇「遥香は"俺の"大切な人だ!!」


「、、、、、、っ!!」


〇〇「俺の大切な人を悲しませる奴は誰であろうと
   許さねぇ!そいつが父親であってもな!!」


「、、、、、、黙れ黙れ!!俺は」


その時、パトカーがサイレンを鳴らしながらこの家に近づいてきた。

そして中から数人の警官が走ってくる。


「この野郎っ!なにすんだよ!!」


真夏「私が呼んだの。うちの玄関に大声で
   喚き散らかしてる男がいるって。」

〇〇「母さん!」  遥香「真夏さん!」


真夏「〇〇!よく遥香ちゃんを守ったね!」


〇〇「、、、当たり前だから。」



「おい遥香っ!」


警官に取り押さえられていたアイツが大声で私の名前を呼ぶ。


「なんとかしろよっ!俺の娘なら助けろよ!!」


この期に及んでまだ私を娘として扱うか。

今まで散々と奴隷みたいに扱って来たくせに。

私はゆっくりと近づく。


バチンッ!!


遥香「アンタなんか、、、父親でも何でもないっ!!」


最後に思いっきり平手打ちをして、アイツは警官に連行されて行った。


翌日。


私の父親は逮捕された。

そして母親も。

母は父親以外にも多くの男を作っていたらしい。

その中に違法薬物を使用していた男がおり、母も使用していた事が発覚したために逮捕されたらしい。


私はひとりぼっちになってしまった。

警察からの事情聴取を終え、今は私1人しか居ない家の前に立ち尽くしていた。


遥香「、、、、、、、、、」


〇〇「遥香。」


遥香「これからどうしよっかな、、、」


〇〇「なぁ、一つ提案があるんだけどさ。」


遥香「、、、なに?」



〇〇「俺と結婚してくれ。」


遥香「えぇっ?!」


まさかすぎる提案に思わず驚きの声を上げてしまった。

だけど〇〇は真剣な様子。


〇〇「俺と結婚して、家族になろう。」


遥香「でっ、、、でも急に結婚なんて、、、///」


〇〇「俺は絶対に遥香を1人にしない。
   これからの時間を俺と歩いて欲しい。」


遥香「〇〇、、、、私は、、、」


10年後、とある式場にて。


奈央「はるちゃーん!」

あの時から10年が経ち、高校1年生となった奈央ちゃんも真夏さん譲りの美人さんになった。


奈央「すっごい綺麗だよ!
   本当にお兄ちゃんが羨ましい、、、!!」

遥香「ありがとう、、、///」


私は純白のウエディングドレスに身を包み、花嫁としての準備をしていた。


奈央「あれ?お兄ちゃんは?」

遥香「私のドレス姿をずーっと褒めちぎってたら
   真夏さんに連れてかれた笑。」

奈央「もぉ、、、お兄ちゃんったら、、、」


「遥香さーん!バージンロードへの移動をお願いします!」


遥香「はい!」

奈央「それじゃあ先に行って待ってるね!」


真夏「あっ!来た来た!」

遥香「あれ?真夏さん?」



バージンロードは真夏さんの旦那さん、私のお父さんと一緒に歩こうって話をしてたんだけど、、、


真夏「お父さんったら『遥香の花嫁姿見たら涙が
   止まらないから真夏が代わりに、、、』って
   今は奈央に見てもらってる!」

遥香「そうなんだ、、、笑。」


「それでは扉が開きます!」


式場スタッフの方の声を合図に、目の前の扉が開いた。

そこには私と〇〇の友人達が拍手を送ってくれている。

そして前列にはめちゃくちゃに号泣しているお父さんと背中をさすりながら私に手を振っている奈央ちゃんがいる。


私は真夏さんの手を離し、前にいる夫の元へ向かう。


遥香「〇〇、、、///」


〇〇「綺麗だよ、遥香。」


遥香「〇〇もカッコいいよ、、、///」


〇〇「絶対に幸せにするから。」

遥香「うん、、、///」



おじいちゃん、おばあちゃん。

見てくれているかな。

2人のおかげで私は大切な人と出会えました。

これからも私のことを見守っててくれるかな。

ずっと大好きだよ。

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