「ブッチャーズ クロッシング」ジョン・ウィリアムズ

「ブッチャーズ クロッシング」
ジョン・ウィリアムズ

十九世紀アメリカ西部の大自然。バッファロー狩りに挑んだ四人の男(お互いほぼ初対面、利害バラバラ)は、紆余曲折の末、峻厳な冬山に帰路を閉ざされる。彼らを待つのは生か、死か。

理解や共感、成長、富、名声、経験、様々なものを求めて自然に向かい合う男たちが迷い込むのは、それと全く違う次元にただ存在する圧倒的な原生の世界。そこには癒しも抱擁も真善美もなく、物語や教訓すらない。想像力も解釈すら拒む剥き出しの自然描写は圧巻の一言。そこで浮き彫りにされる「人間」。

バッファローの群れの足音、肉の腐敗臭、むせ返る熱気、風圧、肩を歪ませる重量と疲労、切り裂く冷気と吹雪、野生と理性のせめぎ、正気と狂気と、ただ息をしている自分。

自分のオールタイムベストの一つです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?