「猫を棄てる」

「猫を棄てる」

村上春樹が珍しく自分の父親のことをまとめて語った小冊子です。小説、エッセイ、翻訳そのどれとも違う、生春樹。普段はあえて削ぎ落とされた生活感が剥き出しでたじろがされます。

イノセントな友人、セーターの上からでもわかる小ぶりだが形の良いおっぱい、と並んで
“父親殺し”は氏の作品に通底するテーマの一つ。
思春期の青年から熱烈に支持されたり世界中で翻訳される要因もその辺りにあるわけですが、氏の父親モチーフに関する扱いは年々変化してきています。「棄てられるもの」という補助線で示される、飾らない村上春樹。

“われわれは交換可能な雨粒。だが歴史を引き継いでいく責務がある。交換可能であっても、いやだからこそ”


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