芥川龍之介『玄鶴山房』論 ー構造と新時代の本質ー

大学院の時に書いた、芥川龍之介の『玄鶴山房』論。9000字越え。


芥川龍之介『玄鶴山房』論ー構造と新時代の本質ー
          
  序、先行研究
 
 『玄鶴山房』は芥川の晩年の本格的な小説として、傑作として評価のある作品である。しかし、傑作とする観点は種々多様であり、作品が構造的欠陥を孕んでいると論じられることもある。そして、例えば㈤章について芥川が自ら高野敬録宛の書簡で、

・   ・「五」は出来損ないかもしれません。
しかしもう時間がありませんから、あきらめることにしました。又実感の乏しい為、手を入れてもだめかと思います。

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