始祖の幻影を文字にする【3】

〇どうやら、精神も破綻しかけてきたようで、始祖の幻影を文字にすることなど、浅はかなことだったのかも、しれないという、一抹の不安があるにしても、俺は俺で、何かを切っ掛けにして、文字を掴むだろうと思って居た其の侭、この、3回に渡って書いて来たこの小説が、実際には、始祖の幻影を文字にすること、だったんじゃないかと、思い出すに至る。無論、こんな弁証法が誰もかもに伝わるとも思っていないし、演繹的だから、俺の精神は、決壊している。

〇言いたいことを、言いたいように、言うことは難しい。しかし、難しいというのは、それだけ精神が複雑だ、ということなのであって、始祖の眠る奇跡の墓地へと足を運べば、少なくとも、陽の光具合によって、幻影は見えるのだろうから。そうだからといって、幻影だけでは何も伝わらない。文字と言うものが、これ程重要だと、気付いたのも今更なのだ。俺は、行くてを阻むものを阻害すうるよりも、取り込んだ方が勝ちだと思って居る主義だから。

〇始祖の幻影を文字にする、どこまで、文章で、読んで頂いている方に、伝わっただろうか、という疑念とともに、或る種の解放感があある。始祖はもう、天国でゆっくりしているだろうから。幻影ももう見えない、文字にするのは、始祖の幻影ではなく、俺が始祖の幻影について考えたことだけだったように思う。しかし、それで良いだろう、俺は真摯に対峙したのだ、文字に対して。始祖もそれをわかっているだろうから、始祖の幻影を文字にするは、ここで終幕しようと思う。ついに最後に脳裏をかすめた言葉、始祖の幻影を文字にする作業は、俺にとっては、光だった。

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