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【エッセイ】ノスタルジアと4歳の娘と夫婦の会話


4歳の娘は赤ん坊の頃から寝るのが大嫌いだ。
理由をきくと「つまらないから」と答える。

私自身、寝ることが嫌いなため、気持ちはよくわかる。もちろん理由は同じく「つまらないから」である。

父母(娘からするとじーじばーば)が言うには、私も小さい頃もなかなか寝ず、夜はよく車で寝かしつけドライブに行ったと言う。

遺伝なのだろうと、もはや諦めの気持ちが大きい。

寝かしつけの前の行動をルーティンにするとすんなり寝てくれると数多ある寝かしつけ本に必ず書いてあるため、その通り素直に実行している。

その日の気分の絵本3冊娘に選んでもらい、読み聞かせをし、感想を言い合いながら寝る作戦はなかなか有効的だ。

しかし、それでも眠れない夜はやはり娘も夜のドライブへ行きたがった。
旦那も私も体力の残ってる日は夜六甲山まで登って夜景を見に行くこともある。

しかし、寒すぎる日や、あまりに夜遅い時間は、
2人で景色の良い動画と心地よい音を聴きながら眠りにつく

そんなある日、娘と寝る前に冬の雪山観える夜景の動画を娘と見ていた。

おそらく動画の撮られた時間帯は夜から夜明けにかけて

「冬はつとめて」とはよく言ったもので、雪と夜景と、まだ暗いが朝方の冬のクリアな空気が動画でも伝わってきてその情景があまりに美しかった。

BGMでついていたピアノの音色がとても切なくマッチしていて、私は思わず泣いてしまった。

涙を拭いながら私は娘に「私はあなたと綺麗な景色を見ることがとても好きなのよ」と伝える。

すると娘は、「わかる気がする。私も綺麗な景色を見られるし、ママも綺麗な景色を見られる、でも1人だと寂しくなっちゃうもんね。だから一緒に観たいんでしょ」

まだ4年しか生きていないこの人生の中で娘はもうノスタルジアの感情を見つけているんだと驚いた。

景色を1人で見ると寂しくなって大切な人に会いたくなるそんな切ない気持ち

4歳はもう大人だと思っていたが、繊細な感情の鋭さはきっと大人以上だろう。

この気持ちを無碍にしてはいけない。
無くしてはいけないと思った。


そう思いながらいつのまにか2人で眠りについた。


次の日の夜、
夕ご飯のしゃぶしゃぶを食べながら
夫に昨夜のことを話した。

夫はなぜか納得してないような表情だった。

なぜ腑に落ちていない表情を見せるのか聞くと、

夫曰く「景色は景色。夜景をみても景色以外の感情が動いたことがない」と言う。

さすがは、サイコパス夫。
某ディズ○ー映画など、ミュージカルのような挿入歌の長い音楽が入る映画で、睡眠率100%の数字を叩き出すだけある。

あまりに私と違いすぎる感覚に、とても興味を抱いた。

どう言うことなのかと掘り下げた。


絶景を1人で見た時に、誰かに見せたいとか、横に誰かいて欲しいとか言う感覚に陥ったことはあるのか?

ーないなぁ。景色は景色だから。綺麗だなぁ。それで終わり。1人でもみても誰かと見ても変わらない。

あまり景色に心が動かないタイプなのか。何か切ない気持ちになるときはどう言う時なのか

ーそもそも切ないとかノスタルジアってのがよく感情としてわからない。


あーどこから何を説明したらいいんだろう、、、

高校生のときからの腐れ縁であるこの目の前の夫のことが一気に他人に見えた。


小学生の頃通ってた校舎をみても、寂しく思ったりすることない?それは切ないって気持ちと近い気がするんだけど。時には懐かしく思うような。でも、戻ることができない切なさというか。

ー小学校の校舎こんなんだったなぁ〜。くらいかな?


私はこの夫とこれから、死ぬまでの長い年月やっていけるのだろうか。不安になった。

夫婦の思い出の中に懐かしい気持ちの蓄積がないと、今の感情だけで心変わりすることは簡単だ。

これから先、私が行動の選択肢を間違え、夫婦の間の空気感が悪くなると、今しか見えない夫は、いつか簡単に私を捨てるのではないか。付き合い10年以上の関係でもまだそう感じさせる夫は、ある意味生粋のモテ男なのかもしれない。


最後に夫にこう聞いた

感動するものを見た時に、私のことを思い出さないのなら、どういうところで私への「好き」という気持ちが湧いてくるのか。もう出会ったばかりの恋人のようなドキドキはないのだから、いないときに会いたいと思わないのであれば、どこで大切だとか好きだという気持ちを確認するというのだろうか。疑問だった。もはや好きという気持ちはないのだろうか。

夫の返答はすぐにあった。



ー〇〇(私)が笑ってる時かな。

私の不安だった心は突如満たされて、

ジェットコースターのように最低値から最高値まで急上昇した。

自分でもチョロすぎると思う。

私が笑わなくなったらどうなるのか、
不安は考え出したら山積みだが、

今はとりあえず、毎日笑うようにしよう。

それだけを心に決め、
照れ隠しに目の前のお肉をしゃぶしゃぶした

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