2つの祖国をもつ2人の男、ときどき3人

NHKの「映像の世紀」という番組が好きだ。
好きだ、といいながら内容が重たい(悲しみや怒りに満ちた歴史が多い)ので、見るときはよほど心と体に余裕があるときだけ。いつかみようととりあえず毎週録画している。

そして、今日がとりあえず余裕あるときだったのか2つの気になっていた番組を見た。ブルースリーのとゼレンスキーのである。

はじめはゼレンスキーの番組だけ見ようとしていたのだが、なぜか私の脳みそがブルースリーのもみろ、と指示を出してきたのではじめブルース・リーを見た。
この番組で、ブルース・リーがイギリスと香港の血を引くとはじめて知った。
欧米ではアジア人に対する差別にあい
香港では白人に対する差別にあった。
同じ武術を習う先輩から才能を妬まれ
白人の血を引く彼に中国伝統の武術を習う資格はないと道場を追い出されたらしい。
だが、彼が優れていたのは技術や肉体ではなく頭脳だったのかもしれない。
武道で感情をコントロールできることを知っていたかれは感情に呑まれることはなかった。
彼はアメリカに渡り名門ワシントン大学で哲学科にすすむ。
哲学を学ぶのことで、武道とはなにか?武道でなにができるのか?をきわめていった。
水のようにどんな型にもなり
型を破り、誰でも受け入れる
水は肌の色などで区別はしない

コップに注げばコップの形になり
急須に注げは急須の形になる

どんな形にでもなれるが、つかむことはできない。すべてにおいて超越している理想が水という存在だった。


さて次はゼレンスキー。かれはもっと複雑だった。
ゼレンスキーの祖父はウクライナに住むユダヤ人であった。
ウクライナの人がかつてソ連から独立するためナチスドイツを受け入れてしまった(プーチンがウクライナのことをネオナチ、ナチスの残党などとよぶのはこういった歴史があるからだろう)
ために、ウクライナに住むユダヤ人はウクライナの人々からも迫害され虐殺された。ゼレンスキーの祖父は家族のなかで唯一の生き残りであった。 

ゼレンスキーの少年時代のウクライナはまだソ連統制のなかにあり、ゼレンスキーはロシア語を話し、ロシアのコメディ番組でコメディアンとしてデビューした。やがて自身の劇団を結成した。

転機となったのは、ウクライナでゼレンスキー演じる高校教師がウクライナの大統領になるという、いま現在
そのもののような内容のドラマが放送されて人気がでたことらしい。

ウクライナ国民の半分は見ていたというから凄まじい。
このドラマを機にゼレンスキーはウクライナ語を学びマスターし、映像を通して国民に呼びかけた。選挙のためのテレビ出演は禁じられていたそうだが、ドラマの続編というフィクションという形でウクライナ大統領を演じた。

…ここまで書いても、信じてもらえるかどうか分からないが、番組でそういっていたのだからそのままを書いたまでである。

そして明日2.24でウクライナがロシアに侵攻されて2年目になろうとしている。

中東のガザ侵攻や震災など国内外で問題が山積みななかで、自分がウクライナにいちばん関心を寄せているのは
自分が被爆地の長崎出身であるからだと思う。
ロシアの核の威嚇を、その危険が迫っているウクライナを人ごとのように思えないからだと思う。
もちろん私自身は戦争体験も原爆体験もない。
だが昔、日本で戦争があって核が使われたことを知っている。
それがどんなに酷いものだったかを、語ってくれた人がいて、できるだけ耳を傾けてきたつもりである。

大義のためという名のもとに、どんな非道も許されるわけがない。

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