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彼女がなんて言えば良いのか迷ってる様子だったので僕から口を開いた。。
「今日が最後なんでしょ。最初から気づいていたよ」

相手は驚き、そして少し安堵した様に見えた。
「うん、ごめんね。もうあなたを見ても何も思わなくなっちゃった。昨日までとまったく違う自分になってるみたい。自分でもよく分からないの」

彼女のことを昔から知っている僕としては何も不思議に思わなかった。
作り上げたものをあっさり放り投げ、そして新しい場所を求める。
彼女の奔放さは時に残酷に映る事もあったし、迷惑だと感じる人も居ただろう。
けれど僕は彼女のそういう部分に魅力を感じていたし好きだった。

彼女のそういった類の話をこれまでにいくつも聞いてきた。
今回は自分が放り投げられる側になっただけだ。

「君は今日また新しく生まれ変わったんだよ。昨日までの君はもう何処にも居ない。顔見りゃわかるよ」

今日初めて彼女が笑った。
「何でも分かるのね。ありがとう。あなたにそう言われて少し救われたわ」

「これまでいろんな君の顔を見てきたからね。こちらこそ礼を言うよ。僕は君からたくさんのものを受け取ったんだから」

「あなたと出会えて良かったわ。本当よ」

「うん。僕も同じだよ。ここでお別れしよう。」
手を差し出し握手と共に別れを告げた。

花が咲けばいつか散る。
朝になれば陽が上り夕方には沈んでいく。
同じ時などどこにも無くて、絶えず変化を続けている。
人もまた同じ。

移ろいゆく時間の中では人と人の決め事など何の意味もなさず
変化する相手を責めるより、それも自然の流れと受け止める。

僕もまた同じ。
昨日の僕はもう居ない。
今この瞬間も新しいものに生まれ変わっている。
新しい僕が次は何を求めるのか。

流れる時間に身を委ねる。

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