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THE STROKES IN FUJIROCK

 言葉が見つからない。一体何を言えばいいのか。何か言うことが間違ってるとさえ思えるくらい、あの夜は完成されていた。
 高校生のころ、数少ない友人であり、いずれ親友となるSからいろんな洋楽を教えてもらっていた。BUMPやRADを聴いてた自分にとってはどんなビッグネームだろうと新鮮で、かっこよくて、いつかミュージシャンになりたいと思うきっかけのひとつにもなった。その中にTHE STROKESもいた。
 僕はその頃綺麗なメロディ(通称美メロ)を奏でるバンドが好きで、ゲオ(だったと思う)で少ないお小遣いの中からOK COMPUTER(少しずれてるような気がするが)をレンタルした。小遣いが残ったので、その時Sが推してたSTROKESも借りてみた。ついでにって言う気持ちで。(レンタルというのが時代を感じる)
 本命のオケコンを先に聞くのは勿体無いからと、先にITI?を聴いた。特に感じることはなかった。それもそのはず。音楽初心者だった俺にとってはストロークスの特徴のロックンローリバイバルの域まで汲み取る知識がなかったのだ。
 しかし。不思議なことが起こる。なぜかリピートが止まらない。そのことに気づいた時の記憶がぼんやり残ってる。ドンキで買い物をしてる時、モダンエイジ〜ソーマを聞いて何かを感じた。
 それは多分聴きやすさだったと思っている。限界まで削られた必要最低限のサウンド(使い回しの形容詞だが)に中毒性があったのだ。そしてついにレンタル中にオケコンを聞いたのは一回…いや聞いてなかったかもしれない。とにかくITI?をヘビロテしていた。
 それから彼らの他の作品、生い立ち、ネット評論家(仮)による作品の説明を読むうちにどんどんSTROKESにのめり込んでいく。他のバンドとは違う、それだけは確かにわかった。
 そしてYouTubeでライブ映像を見てその洗練された見た目に圧倒される。ロックンロールはカッコよければなんでもいい。彼らはとにかく、とにかくカッコよかった。
 しかし彼らが最後に来日したのはおよそ10年前。まさにSTROKESを聴き始めた頃だったのでライブに行くという発想はなかった。そもそも来日アーティストのライブというのは、僕には少しハードルが高かった。月日が経つにつれてそのハードルも低くなった頃には彼らは曲を出さなくなっていた(笑)
 多分俺は一生この人らを拝むことはないんだろうなと、つべでのライブ映像を見ながら、雲の上の存在のように感じていた。
 しかし2020年!彼らは再び動き出す。そして来日までするという!しかしその頃は体調が悪くライブに行ける状態ではなかった。そうかー、見に行きたかったなー、とどこか俯瞰してその様子を見守っていた。
 が、さらにしかし、コロナ禍がやってくる。来日イベントはことごとく中止され、STROKESも来られなくなってしまった。なんとなく、ああもうこれで彼らを見る機会は完全に失われてしまったんだなとぼんやり思っていた。
 月日は流れ2023年。僕の予想はあっさり覆される。FUJIROCK、STROKES参戦。まじか。これは行くしかないと思いつつ、体調はまだ万全ではなく、40,000人の波の中に入っていくことに抵抗を感じた。でももしかしたらほんとにこれで最後かもしれない、とそう思うと居ても立っても居られなくなった。ほんとに気が付けばチケットを持って苗場に向かっていた。
 僕はフジロック初心者で、フジロック会場はほんとに圧倒された。ほんとにただの山だ、と思った。少し怯みそうになったが、こんな機会絶対にないと自分に言い聞かせ、小説片手に、アイドルズから最前列を確保して、五時間だろうか?幻が現実になる瞬間を待っていた。(その間に見た矢沢永吉含めるアーティストも素晴らしかったけれど、それはまた別の機会に)
 21:10。その時はついに訪れた。訪れてしまったのだ。あのチルさ満点ファブが、優しそうなニコライが、クールすぎるニックが、お茶目なアルバートが、、唯一無二のカリスマ。ジュリアンカサブランカスが、ゆらゆらとステージに現れた。
 モダンエイジ。ああ、つべで何度も見た、聴いたSTROKESが、目の前にいる。目を疑うなんてこと自分には無関係だと思っていた。しかし何度も頬をつねって夢じゃないって確認したいくらい、五人が音を鳴らしてる景色は非現実的で、圧倒的にリアルだった。
 もう感無量を通り越して、発狂していた。ステージで不機嫌そうにPAに指示を出すジュリアンに、心底陶酔していた。
 ライブはあっという間に終わり、アンコールもあってボリューム満点のセットリストだった。
 上がりすぎたテンションの反動でそのあと僕は2日ぐらい気絶していた。でも、あの時間が夢だとは思わなかった。あの場に確かに5人がいた。脳裏にはっきりと焼きついている。確かにSTROKESを体験したのだ。こうして文章を打ち込んでる今もまだ、思い出しうっとりとしてしまう。
 とにかく、学生時代から惚れ込んだミュージシャンを生で見るなんて経験がほとんどなかった自分には、それはほんとに特別なライブだった。ラストナイトのギターソロパートはまるで天からの贈り物のようで、体全体で音を浴びて「最高!!!」と叫ばずにはいられなかった。
 こんな拙い文章で申し訳ないが、この感動が消えないうちにどうしても残しておきたかった。僕は伝説を目の当たりにしたと思っている。この先もいろんなライブを目にするだろうけど、STROKESが特別であることに変わりはないだろう。もう一度言おう。僕は伝説を目の当たりにしたのだ。

 最後に、今回サポートしてくれた家族、友人、そしてSTROKESに偉大なる敬意を持ってありがとうと伝えたい。

 いつか自分も、フジロックに出たいと思った。

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