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国民として余り喜べない観光振興からの脱却を!

国内各地で外国人観光客の復調が報じられ、観光関係者の喜びの声が紹介されていますが、観光関係者以外は喜べないのが経済的な背景です。否、海外旅行商品を売る旅行業者も喜んではいられません。

1−1 ⼀⼈当たりの国民所得|データブック国際労働比較2022|JILPT

このレポートでは、我が国の国民所得が年々低下していることが書かれています。他にも、最低賃金比較とか、時給比較などをWeb上で見ることができますが、日本人の労働力は安くなっていることに違いはありません。高給を食んでいる大手ジャーナリズムは、「失われた30年」とか気楽に評していますが、故堺屋太一氏が著書「平成30年」で予見した通り、我が国は、高所得国の人々がオトクなお買い物や食事を楽しむ「発展途上国」と化してしまいました。それを、日本観光が高い評価を得ているなどと喜んでいる姿は、情けないこと限りなしです。

だからと言って、民主党”暗黒”政権下の超円高が良いというのではありません。失業率が下がらない状態での輸出が難しい経済環境が続くのは「下の下」です。あれを良かったと強弁する旧民主党政治家に支持が集まらない程度の理性が有権者に残っていることは光明といえましょう。

日本経済の上を行く各国は、わずかながらでも経済成長を続けてきました。年率0.5%成長だって30年もすれば1.4倍くらいに増えます。一方、こちらは名目成長が見られずデフレ基調となれば、財布の中身の金額は差が開くばかり。訪日外国人が高級レストランでオモテナシを満喫する傍らで日本国民はファミレスの割引キャンペーンで喜んでいるのですから、コロナ対策中に高級店で遊興に耽る政治家たちを恨むのは至極当然です。

所得の増えない日本国民は、外国人客が増え物価が引き上がった国内観光地で余暇を過ごすことさえ叶わなくなります。すでに、都心部のホテル料金は急騰していますので、ビジネスマンの出張の際には民泊施設(空き家)を利用するのが一般化しそうです。民泊で懸念されている「外人が騒いでゴミ出しルールを守らない」という問題は解決されるかもしれませんが、構図的に素直に喜べる話ではないでしょう。

経済失政が生み出した観光立国。それを自らの手柄と言い張る観光庁と政治家諸氏。オトクだから人気があるのではなく、高いけど価値がある憧れの観光地になるための取組は、ごく一部には見られますが、観光政策とは関係ないところで行われています。

補助金中心の底上げ型振興策では、新時代を切り拓くことは望み難く、予算枯渇とともに失速することは確実です。個人の観光支出を広く減税対象にする方が、供給者の多様化を促して、新しい芽吹きを助けることになります。既成勢力の支援政策に未来はありません。


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