ニッポンリゾートの新時代は来るのかな
観光地の英語表現にように出てくる「リゾート」という言葉。
「休養」という意味合いも含まれるそうで、その場合には「保養所」と訳されたりします。よって、お仕事用PCを持って行くことは許されざる場所という話です。
リゾート/resortは、[再び]の「re」と 「sort」は[出向く]なので、リピートすることが基本の場所ということのようです。さらに、[頼ること]という意味もあって、「助かる」という感覚を与えてもらえるというイメージもあるようです。
そうすると、リゾートマンションというのは、何度も行く前提で、心のオアシス機能があるとなれば、正しく「resort」な場所と言えるでしょう。
しかし、行き詰ったリゾートマンションが各所に出現しているというのは、前々から出ている話で、最近は、高齢者の終の棲家需要なども取り込み、多少上向いたところもあると報じられる一方で、激安マンションの記事も出回っています。
西武ホールディングスの場合、2022年6月に「ザ・プリンスパークタワー東京」や「苗場プリンスホテル」などのシティホテル・リゾートホテル、ゴルフ場、スキー場など全国の31施設を1,471億円で売却すると発表しておりました。この金額には激安感がありますが、今後の収益見込みと維持管理費をはかりにかけると、値が付くうちに売ってしまおうと判断したのでしょう。
物件を取得したのは、シンガポール政府投資公社(GIC)で、主に不動産や債券、株式を中心に投資を行い、日本では汐留シティセンター、福岡 Yahoo! JAPANドーム(現:福岡PayPayドーム)、ウェスティンホテル東京、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルなどを取得しているようです。
活用方法を見出した者と、アイデアが枯渇した者がいるから取引が成立する訳で、ここに日本の集客ビジネスの弱さを見ることが出来ます。集客ビジネスはかつて「観光興行/興業」のような言われ方をしていて、○○観光興業株式会社という社名を見れば反社団体の関係と解されるのが一般的な時代もありました。イベントプロデューサーも、かつては「興行師」。山師の一種みたいな語感で、堅気の関わる世界ではないと見られておりました。
「一年ぶりの誕生日です」「朝食は毎朝食べてます」などコイズミ構文の使い手の父君・小泉純一郎内閣の時代。観光立国を掲げ、平成18年に観光立国基本法が成立したことを受けて、観光産業が遂に正業になったと歓喜する人もいました。
「鉄は国家なり」のフレーズが表すように、産業とは製造業のこと・・・そんな感覚が浸透して、娯楽を提供するビジネスは尊敬されませんでした。ノーベル文学賞作家・川端康成の名作「伊豆の踊子」のファンタジー設定は、国家エリート候補の帝国大学の学生が、河原乞食の蔑称を持つ旅芸人一座と行動を共にするという点。プロ野球だって創生期は職業野球とさげすまれ、このイメージを刷新するための一手が東京六大学のスター・三原 脩氏(早大)を大日本東京野球倶楽部(巨人の前身)に入団させたこと。当時は「優秀」の代名詞であった大学生が卒業後、見世物スポーツに身を投じるとはセンセーショナル!手塚治虫氏の作品がPTAの尽力で有害図書指定された時代もありました。デジタルゲームがブレイクする直前の頃、任天堂の内定を貰った慶大生が父親からひどく怒られたという話を聞いたこともあります。花札やトランプなどヤクザ者の遊び道具を作る会社に入るために大学に入れたのではない!と。
こんな歴史的背景の下で、楽しませることの対価を得るビジネスが世界水準に至るのは容易ではありません。しかし、時代は下り、任天堂のゲームで育った世代が子や孫を持つ世代になりました。日本マンガは世界に影響を与えています。日本の職業野球界を経て渡米した大谷翔平選手は今やMLBで「偉大」と評される世界的スターです。子供が芸能界で活躍することを願う親は少なくありません。すると・・・観光業のシンギュラリティはこれから始まるのでしょう。観光庁は、ホームルーム優等生の感性を押し付け、支援すべき観光とそうでない観光の格差をつけるような変な政策(≒チョッカイ)を出さないことです。
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