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観光立国より・・・観光帝国へ

「訪日観光客の回復で景気押上げの効果」と、産経新聞が書いておりました。右傾とされる同紙でさえインバウンド観光を礼賛しておりますが、GDPに占める規模は、新型コロナ感染症による移動規制の前で5兆円未満。1%に及ばない割合です。これが一度は9割減の状態になり、感染症5類移行で移動規制が緩和され回復基調に入りますが、仮に”爆増”したところで産経新聞がはしゃぐほど影響があるものでもありません。

なぜ政府が観光振興をさも次世代の経済成長の柱のような持ち上げ方をするのか、と言えば、地方経済の活性化策が手詰まり状態になって、むりやり明るい話題をひねり出しているから、と考えざるを得ません。地域間の経済格差が解消される兆しがなく、既成の資産家層らを支持基盤にする自由民主党が、地方の選挙でも苦戦する中、頑張ってますアピールが必要なのは理解できます。

製造業に基盤を置く貿易立国で成長してきた我が国が、プラザ合意以降の円高基調というゲームの設定を覆された結果、霞が関の経済産業政策は迷子になり、通商産業省という貿易立国の理念を体現した名称から経済産業省という何でも屋みたいな名前に変更され、スマッシュヒットと評価できる政策を打ち出せていません。アベノミクスの柱の一つ「成長戦略」も、結局それが何だかよく分からないまま、岸田内閣では「新しい資本主義」となり、それも中身がアヤフヤなまま今日に至っています。

数字が伸びつつある産業分野に飛びついて、公金を投入し、さらに数字が伸びたら「政策効果がありました!」と喧伝することが「経済産業政策」と呼べるのかどうか、多々疑問がありますが、霞が関がやっていることはそのような感じです。

さて、マクロ経済の視点からは威力のない訪日観光客の誘致ですが、ミクロ経済的には意義がない訳ではありません。彼らにこそ文化財整備のスポンサーになってもらいたいところです。と言っても、徴収に要するコストを考えたとき、一部地域を除いてあまり効果のなさそうな観光税ではなく、クラウドファンディングへの寄付をお願いして、一定額以上の寄付金を贈ってくれた方には、総理大臣褒章とか知事褒章を差し上げる。寄付の慣習がある欧米系は勲章好きの文化圏だそうですから、伝統工芸を織り込んだ”勲章風”オリジナルアクセサリーをお礼に用意することは効果がありそうです。

デザインは著名アーティストにお願いします。当然、費用が嵩みますが、訳の分からない宣伝活動や奇怪な補助金をばら撒くことを止めれば、まとまった数を制作することは十分に可能でしょう。さらに、地球上で唯一現存するエンペラーファミリーである皇族の方に監修(≒デザイン選定)で関わっていただければ、ブランド力は倍増確実です。プリンセス(皇女様)プロデュースの”勲章風”オリジナルアクセサリーを目当てに、文化財基金に多額の寄付が集まれば、訪日観光客様大感謝ですね。

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