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amazarashi「七号線ロストボーイズ」感想

アルバム「ボイコット」で、amazarashiは一つの終着点を迎えたかのように自分は感じていた。
言葉を大切にしてきたamazarashiが、「言葉を取り戻せ」と叫ぶ「独白」、今までの道のりを肯定する、回り道だって道草だって意味のあることだったと肯定する「未来になれなかったあの夜に」。
amazarashiはついに完成系になったのだと感じていた。

だけど、この「七号線ロストボーイズ」は、自分の考えが間違っていたことを教えてくれた。

amazarashiは終着駅にいたのではない。まだ途中で、まだ進み続けていたのだ。

アルバム最初の曲「感情道路七号線」のイントロにまずビビった。こんなロックな重低音をamazarashiから聴くことになるなんて。

そこからの「火種」はやばい。
こんな曲調今までなかった。歌詞は攻めまくってたamazarashiが、サウンドでも攻め出した。

「今までのamazarashiじゃない」と拒否反応が出る人がいるかもしれない。でも、確かに今までの延長線上にこの曲はある。

アルバム全体を通して、「喪失と獲得」がテーマなのではと思った。
何かを捨てなければ何かを得ることは出来ない。
このアルバムから「青春の喪失」を感じる。
あの頃の熱い気持ちも悪くなかった。一生懸命生きるので精一杯だったあの頃も良かった。
だけど、今も悪くないよな。そうだよな。

失ってしまったからこそ、今があると。
そして失ってしまうからこそ過去は愛おしいと。
でもそれに浸ってばかりでもダメだと。
そう感じさせる曲達であった。

かなり全体の歌詞はamazarashiの秋田さんの内面や経験に沿った歌詞となっている。だけど、なぜか、聴く側にとっても、自分達の懐かしい青春を思い出させる。あの頃の自分が今の自分を見つめてくるんだ。

アダプテッドの連想ゲームみたいな歌詞は好きだ。
「死ぬには広すぎる海底では ただよっている
ただ酔っていアダプテッド」
言葉遊びがすごい。
こうやって勢いで繋がってるような、繋がってないような、そんな人間の不連続点を跳躍しながら今の自分がある。

amazarashiは死をタブー視しない。死がすごく身近に存在している。でも、だからこそ生きなければ、「雨晒しでも、それでも」その意味が込められたamazarashiというユニット名。
もがいて、苦しんで、悩んで生きている人にブッ刺さるバンド、amazarashi。

「空白の車窓から」がラスト曲になっているが、もうこの曲ではamazarashiはどんどん先に進んでいっている。
「この先は空白だ もう恐れない 自由とはなんで寂しいんだろう」
未来という空白に向かってamazarashiは進んでいる。この曲にはなんとなく今までの曲の残滓が残ってる感じがする。今までの曲を想起させるような歌詞がちらほらある。でも、それらを置いていって、「失って」、新しい場所に行こうとしている。

いつまでも過去の感傷に浸っていてはダメだな。頑張らなきゃな。そう思えたアルバムだった。

追記
歌詞の脇に付いている詩を読んだら、もっと楽しいので、ぜひアルバム買ってね。

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