見出し画像

銀河間トラベラー「アプ星人」との170時間

プロローグーーー今こそエゴイズから愛他主義へ

 読者の皆さんは、この本の内容に驚かれるだろうと思います。
ですが、同じように、もし現代の発明の数々を古代ギリシャの七賢人たちに紹介することができたならば、彼らもまた驚いたことでしょう。
例えば、電気の存在とその多彩な応用。
人類の月面着陸、心臓移植、体外受精。
こうした事柄は、二千年以上前には奇妙な絵空事にすぎなかったはずですから。
 そこで読者の皆さんにお願いがあります。
少しの間でよいので、こうした本を書く身になって考えてみて下さい。
奇っ怪極まりない驚愕の体験について語る、人間の立場を想像してみて下さい。
書き手は、一つ一つの言葉が、人々の苛立ちや疑念を駆り立てるか、あるいは単に嘲笑を誘うだけだと承知しているのです。
 こんな時代(発表当時は1975年、原書注)ですので、私の話は信じがたいせしょうが、なんとか信憑性を高めて皆さんを説得しよう、などというつもりは毛頭ありません。
そんなことをすれば、人間のもつ不屈の知性、思慮、慣習、自分らしく生きる権利を軽んじることになるからです。
 また、私は伝道師になるつもりはありません。
さらに、地球人たちへのプレゼントや紹介状、政治協定の提案書を携えて降臨する新たな〈神々〉の歓迎に備え、信者を募る気もwりません。
なぜなら、地球生活の問題解決を担っているのは、この地球の住人において他にいないからです。
自らの知性、学習と労働を通じて、愛他主義(注釈:他者の幸福を優先して行動すること)的社会を形成しなければならないのは、この私たちなのです。
 ですから、偶発的な〈外国人〉たちの出会いを語ることで、表彰されたり感謝されたりしたいとも思いません。
事実、地球人ならば誰でも彼らに会うことができます。
それに、真摯な態度で臨めば、こうした私の記録を上回る貴重なデータも集積できます。
そうすれば、私たちを取り巻く謎を解き明かすことだってできるのです。
 この本に対してあなたが抱く意見は、それがたとえどんなものであっても尊重されるべきです。
あなたの意見とは、「あなたの思想」と「あなたという存在」の産物だからです。
それは、あなたが生きて考え、決断し、表現する、という聖なる権利の証だからです。
それゆえ、どのような意見も、誰一人傷つけることはありません……
 運動する原子が存在する限り、ユニバースは、創造し変化する無限の広がりであり続けます。
そして、その住人たちは、宇宙の神秘的で果てしない奥地にまで踏み込みながら、旅を続けていくのです。
 唯一の懸念は、人間が素早く一致団結できるか否かという点です。
現代人類は、破壊をもたらす諍いの火口に自らを晒しています。
 労働力の大半を絶え間なく費やすのは兵器工場であるため、兵器庫には武器があふれかえっています。
大砲による同族への爆撃が止むことはなく、原子力爆弾が常に頭上にぶら下がり、地球生命体の存続は脅かされています。
さらに、不治の病に未知の病気、飢餓、貧困は、人間の命を際限なく奪っています。
 そこで、一致団結して学び働くためにも、人間同士の心からの相互理解が急務となってくるのです。
それが、人類存続が保証される唯一の手段なのです。
 だからこそ、私は皆さんに語るのです。
アプ星社会の科学的発展とテクノロジー水準についてはもとより、地球の過去、現在、未来についても。
私は全てを、あのペルー・アンデス山脈に降り立ったスペースシップ内の〈タイム・スクリーン〉で目の当たりにしたのですから……
 科学者、労働者、教師に生徒、兵士と政治家、信者や無神論者、あらゆる人にお願いします。
栄えある人類の歴史を確立すべく、兵器の製造と侵略行為、戦争を永久に放棄して下さい。
全ての人々が平等と見なされる、友情で結ばれた社会の実現のために、真心と善意で貢献して下さい。
争うことなく一致団結し、地球生活と宇宙で生ずる現象を修正できるように、愛他主義的な教えを世界に広めて下さい。
人類の幸福のために共に働き、軍需産業を平和的ヒロイズムに交換するため、力を合わせるのです。
 人間のエゴイズムが、あなたの知性あふれる頭脳の発明を武器に変え、地球の生命を根だやしにようとしています。
命を救うのです!
全ては他者のために。
               
ヴラド・カペタノヴィッチ

※この本の冒頭からプロローグまでは、とても大切と思いましたので本の原文をそのまま書き写しました。

この本に興味ある方はこちらを参考に。

https://m.media-amazon.com/images/I/5143suNBjVL._SX358_BO1,204,203,200_.jpg

銀河間トラベラー「アプ星人」との170時間 (5次元文庫)
https://amzn.asia/d/hBWkrFJ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?