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きちんと弾くには意外と難しい曲の数々

ChopinのBallade4番であるが
"きちんと"弾くことが大変難しい。
勿論演奏に正解不正解はない。

停滞しがちな出だし、手の大きさによっては違う和音に聴こえるところあり。
微妙な小節間のつなぎ、淡々とテンポ良く進む所と反対に激情溢れるの表現の仕方。
これが一つ間違えると最後まで盛り上がらず何をしてるのかわからないままに終焉してしまう。
厄介な曲である。

厄介な曲シリーズではシューマンの幻想曲やクライスレリアーナ、そしてSonataの1番も最近の若手の演奏会では未だ満足な演奏を聴けた事が無い。
交響曲的練習曲については私の師匠がリサイタルで演奏をしたものが最高で、それから数十年…どこかしら不満が残る演奏しか聴けていない。
録音に残っていないのが残念だが、これぞシューマンですよ、と感動したことを今だに覚えています。

シューマンの幻想曲もベテランの演奏家のリサイタルでは素晴らしい解釈、余計なものが何もない演奏を聴いたことはあります。
しかしこれもきちんと弾いているピアニストはダニール・トリフォノフ氏とニコライ・ホジャイノフ氏ヨアフ・レヴァノン氏くらいです。

シューマンはモチーフで出来ており、それをうまくつなげることが出来て、ようやく曲になるのですが、なかなかそれが出来ないんですね。
ただ、爆音で弾いてみたり、小品だとテンポが停滞したり、曲の解釈が整わないうちに終盤を迎えたり、様々な事ですぐに失敗してしまいます。

2022年6/30にオペラシティで行われたALEXANDRE KANTOROW氏のリサイタルの録画をNHK-BSで聴いた。
(阪田知樹さんの演奏会と重なって行けなかったので)
Schumannのピアノソナタ第一番は難解なためあまりリサイタルで演奏される事が無いように思うのでTVとはいえ楽しみだった。
しかしいくらKANTOROW氏の演奏でも、私にとっての線引を超えてくれなければ気にいらないものは気にいらない…。
一楽章、二楽章はまだ許容範囲だった。でも三楽章になってこれはマズイと嫌な予感。
次々変わるモチーフへ淡々とアプローチして欲しいのだがモチーフ自体がボヤけた演奏になっており、結局訳の分からない三楽章になってしまった。
四楽章も私が好きな演奏ではありませんでした。
美しく美しく心にグッと染み渡るようなそういうモチーフの集まりのはずなのですが、モチーフの色付けに特徴が感じられず、何だか違いました。

ただしKANTOROW氏はこの曲ではなく、そして日本でも他の機会にリストやブラームス等はとても素晴らしい演奏を幾度もされているのでシューマンのソナタは向いてらっしゃらないのかもしれません。
それから2023年にパリLouis Vuitton FoundationでのコンサートでConessonのピアノ協奏曲「L'Espérance de l'aube」を世界初演されましたがその時のKANTOROW氏の演奏は表現し難いくらいの素晴らしさでした。
そして2023年のProgramを東京でのリサイタルで聴きました。
ブラームス、リスト、シューベルト、とても美しく素晴らしい一夜でした。

ChopinのBallade4番に話を戻すが、この曲の深い解釈、停滞なきリズム感とスピード感、そして間のとり方、ウィットに富んだ表現…美しい音色…
フランス人ピアニストKim Bernardさんの演奏を聴いてみてほしい。

❖終わり❖