見出し画像

読書エッセイ② 抹茶体験ツアーと読書『日日是好日』でお茶を味わう

●抹茶体験ツアー@和束町

山の斜面に緑のグラデーションが広がる、美しい茶畑。ぼんやり眺めているだけで心が落ち着き、初めて訪れたのに、どこか懐かしく感じる「茶源郷」。

ここは、京都府南部に位置する宇治茶の一大産地、和束町。このまちで、“抹茶”を通じて世界と生産者をつなぎ、まちを盛り上げようと活動する「株式会社抹茶ツーリズム」の「抹茶体験ツアー」に参加したのは7月半ばで、二番茶の摘み取りが行われている時期でした。

少し小さいけれど、きれいな緑色の柔らかくて瑞々しい茶葉を、爪を立てずにプチっと摘み取る。おしゃべりをしながら続け、気が付くと盆ざるに緑色の小山ができていました…。

摘み取った茶葉は、手で揉み、ホットプレートで釜炒り風の煎茶にしていただきます。少しぬるめの適温で淹れたお茶は、澄んだ黄色で、口に含むとまろやかな優しい味が広がります。口をついて出た言葉は、ただただ「おいしい」でした。

その後、抹茶づくりにも挑戦しました。てん茶の茶葉を石臼に挟み、ハンドルを持ってグルグル回すことしばし。持ち上げてみると、「粉状になっている!」。しかし、粒が大きくてお湯に溶けず、濃厚な「抹茶ペースト」といった感じになりました。

きめ細やかな「抹茶」は、石臼で1時間挽いて、30〜40グラムしかできないのだとか。摘み取り前には、茶葉を被覆して一定期間日光を遮るなど、“タイパ”重視の時代にあっても、手間暇をかけて、大切に作られている抹茶。おいしくて、値段が高いのも頷けます。

●読書『日日是好日』

さてさて、「お茶」を体験して、思い浮かんだのは、森下典子さんの『日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせー』(新潮社)。「武田のおばさん」にお茶を習い始めた著者の、25年間が綴られたエッセイです。

お茶は「先に『形』を作っておいて、その入れ物に後から『心』が入るもの」。「頭で考えないで」と先生に言われ、一つひとつの作法、所作の理由が分からないままお稽古を続けますが、何度やっても覚えられない。著者のもどかしさが伝わってきます。

しかし、あるとき、手が勝手に動くようになり、点と点がつながり線になる瞬間が訪れる。今まで何度も見ていた掛け軸の意味が、突然分かるようになる。様々な経験を重ねることで、自然と知るようになるタイミングが訪れるのです。「あっ、そうか!」と。

私が好きなのは、雨の描写。雨樋を濁流のような水が流れる様、庭の草木に当たった雨がはじかれる様、軒や道路を打つ激しい雨音。「ザーーー!」という滝のような雨音に包まれた稽古場で、著者はしばし雨と同調し、自分が「ただ、いる」という状態を、自分は自由であることを知ります。この描写を読んだ私も、その雨に包まれているような感覚を味わいました。

今回、ツアーに参加して、本も読んだら、無性においしいお抹茶をいただきたくなりました♡

お読みいただき、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?