インスタントフィクション『青い空ぐるり』
教室の窓から見える空は四角。
明日から夏休みだと伝える先生の声は三角。
やったーと喜びを露わにするクラスメイト達の歓声は丸。
初めての夏休み。学校から解放される40日に対する私の気持ちは、正六万五千五百三十七角形。
「なにそれ?」
と、聞き返されても私にその言葉は届かない。
あー、また始まった。
いつまで経っても、クラスに馴染めないのは私に図形がないからなのか。
日焼けした肌、茶色。
運動会の練習、赤色。
遠足の準備、水色。
明日から冬休みだと伝える先生の声は緑色。
やったーと喜びを露わにするクラスメイト達の歓声は、オレンジ色。
教室にいない私から見える空は四角くも丸くも三角でもなく、ただただ青い。
少し前だが、ピース又吉さんのYouTube「渦」内のインスタントフィクションというコーナーで採用された。
又吉さんが、ほぼほぼ私の表現したかったことを解説していて驚いた。
なにより、中学時代からの憧れの相手が自分の文章に向き合っている時間というのが、とても感慨深く嬉しかった。
自分の書いた文章に自ら解説するのは野暮だが、一つ付け足すとしたら最後の部分は個人的にはハッピーエンドである。
ただ、読み手の状態によってどう受け取るか変わるという意図も含んでいたので、結局のところ読み方に正解は無い。
他にも付け足すとしたら、色々あるけど…それを規定してしまったら、おもしろくないので。これにて。
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