誠品生活は他の小売と何が違うのか?
こんにちは。リテール領域のプランニングなどを10年余り行っているゴン太郎と申します。ただ、ぼんやりとリテール領域の様々な話題に関する自分なりの考えを投稿していきたいと考えています。
今回取り上げるのは、先日、日本橋にオープンしたばかりの「誠品生活」。リテールに興味のある方なら訪れた方も多いのではないでしょうか?
様々なメディアにも取り上げられていますので、どんなお店の雰囲気なのかはご存知かと思います。
今回は、この「誠品生活」に行って感じたこと、そしてそこから見えてきたリアル店舗の新たな方向性についてお話ししていきます。
「誠品生活」に行って、率直に感じた私の感想は、「確かに楽しそうなおみせなんだけど・・・買いたいモノがない」でした。
みんなも同じ意見なのかと、他の人に聞いてみたり、SNSを覗いて見ると、「すごく大好き」と「イマイチ」という両極端な声が存在していることが分かりました。
ここから見えてきたことは、「好きな人は好きだけど、嫌いな人は嫌いな店」ということでした。当たり前じゃんと思えるかもしれませんが、リテールに携わる人間からすると、これって結構衝撃的なことなのです。
なぜならば、基本的にリアル店舗というのは、狙いたい層(例えば、20代~30代のOLとか)はありながらも、お店は常に開かれているので「オールターゲット」で店づくりがされていることが多いからなのです。つまり、「誰からも嫌われないお店」になるようなつくりがされているのです。
そうすると、この「誠品生活」は特殊なお店なのではないか?と思い、自分の考えを深めてみました。
「誠品生活」が示す新たなリアル店舗の方向性
「誠品生活」のような雑貨を扱うリアル店舗というのは、大きく分けて2つに分けられていたと考えられる。
①機能性訴求型店舗・・・各商品の機能性を重視して訴求を行い自家消費に対応している。各商品の「良さ」をいかに伝えるかが重要になる。『無印良品』や『東急ハンズ』が該当。
②共感訴求型店舗・・・ギフトやジョーク等のコミュニティーでの共感が得られることを訴求していく。「トレンド」に連動した商品をお客様に提供できるかが重要になる。『LOFT』や『ヴィレッジバンガード』が該当。
「誠品生活」やそれを参考にしたとされる「蔦屋書店」はこれら2つの方向性とは異なり、新たな方向性を指し示しているのではないか?それは、
③コンテンツ共鳴型店舗・・・店舗をメディアとして店の意志あるコンテンツを生活者に共鳴してもらう。『誠品生活』や『蔦屋書店』が該当。
つまり、お店としての強い”意志(思い)”をお客様に伝えて、それに共感したお客様にだけ購入してもらえば良いという、これまでの「オールターゲット」の思想から大きく異なる考え方が表れているのである。
この③コンテンツ共鳴型店舗の考え方は、ECの世界では当たり前になっている。代表的なのは「北欧、暮らしの道具店」であろうし、近年勢いを増すD2Cブランドの多くもこの考え方をベースにしているように感じる。
①機能性訴求型店舗はECとの激しい競争にさらされている。②共感訴求型店舗はトレンドに敏感に対応していくためのヒト・モノのリソースの確保に近年苦労している。
そんな中で、③コンテンツ共鳴型店舗はリアル店舗が生き残る道なのだ。コンテンツ=”店の意志(思い)”をお客様に受け取っていただくためには、ECよりもリアル店舗の方に強みがある。何せ、リアル店舗ではお客様が五感全体を使ってコンテンツ=”店の意志(思い)”を楽しめるのだから、その優劣は明らかであろう。
店舗をメディアとして、強力なコンテンツ=”店の意志(思い)”を発して、それに共鳴する大事なお客様とずっと付き合っていく。
リアル店舗はそんな時代に突入したのではないだろうか?
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