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憲法9条改正の是非 ~解釈問題を中心として~

0.はじめに

大学の課題を少し編集して投稿。先生もしこれ見つけても盗用じゃないです!許してください!


本レポートで考察する憲法改正に関しては、一番議論に挙げられる憲法9条について中心的に取り扱う。ただ単に「憲法改正」という時指している対象は、憲法9条といっても過言ではないほど国民の注目を集めている。また、自民党案においては自衛隊明記が主張されている。このような背景を踏まえ、憲法9条解釈を議題について述べていきたい。


1-1 憲法9条改正派の主張
憲法9条を改正する必要性として東京外国語大学の篠田英朗教授は『これでわかる「憲法9条」の本当の論点〜なぜいま「改正」なのか?』 において9条の解釈確定指摘している。


憲法9条の改正の目的は、はっきりしている。
解釈を確定させることである。
解釈が曖昧なまま放置されているため、国政に壮大な無駄があることも放置されている。
改憲問題の中心である憲法9条の解釈は、特に混乱している。
自衛隊は合憲なのか違憲なのか、自衛権行使は合憲なのか違憲なのか、集団的自衛権は合憲なのか違憲なのか、それぞれが合憲だった場合には、その合憲性の範囲はどう定められるのか、これらの国家運営に重大な意味を持つ問いについて、統一的見解が確立されているとは言えない。


 日本が行う国民の支持の下国際平和協力を行っているが、円滑な活動を行えないといった具体事例を上げ、9条解釈が政策実施の阻害になっている点を指摘。政治や憲法学における一種のイデオロギー闘争の道具として9条の解釈が利用されており、健全な状態ではないことを上げている。複雑な解釈を時の情勢を伺いながら落とし所を探り、その度に制約を作るのでは、経済的・社会的・国際的情勢から今の日本に余裕があるのかと問題視している。
 更に実際の憲法改正にかかる国会の議論については次のように述べている。


改憲反対派は、国会で改憲発議を止めるための議席を持っていない。国会外の運動と連動させて「改憲などありえない」という雰囲気を作るのでなければ、発議を阻止できない。
そこで国会における通常審議を拒絶してでも、国会外の話をしようとするのだ。
中略
立憲民主党は、目の前の支持者層の目の前の欲求を満たすことを最優先した。そして、政権を担当できる能力を持っていることを、広範な有権者層に訴えていくことを怠った。短期的な改憲阻止運動を最優先しないことが、かえって長期的には党勢の拡大につながる、という分析をしなかった。


この様に憲法改正を訴える与党自民党に対する野党のあり方に対しても問題としている。


1-2 憲法9条護憲派の主張
  改正の主張として挙げられる自衛隊の解釈確定に反駁として、『いまさら聞けない「憲法9条と自衛隊」~本当に「憲法改正」は必要なのか?』 で首都大学東京法学系教授木村草太は以下のように述べている。


 外国からの武力攻撃の場面では、憲法9条(戦力による武力行使の禁止)と、憲法13条(国民の安全を保護する政府の義務)が、緊張関係に立つ。では、日本が武力攻撃を受ける場面で、どちらの規定が優先されるのか。
 中略
 集団的自衛権の行使は違憲だが、個別的自衛権を行使するための自衛隊は必要であり、かつ、憲法9条の改正は必要ない――と考えるのが、国民の多数派である。


 この様に憲法9条に改正の必要性として挙げられる自衛隊の解釈確定は既になされており、憲法9条による改正の必要性がないと指摘している。
憲法13条において、「国民の生命、自由、幸福追求の権利」は「国政の上で最大限尊重される」と定めており、外国からの武力攻撃も国民の権利侵害であり、これを防備する必要性が政府には課せられる。そのため憲法上では武力を放棄するとしている憲法9条と13条の政府の国民安全を保護するべき政府の義務が衝突する。そのため政府解釈で個別的自衛権の範疇においては、13条により9条の例外事項が認められたとしている。更に国民世論を鑑みても自衛隊の防衛力に対して肯定的意見が多数を占めており、国民もこの解釈を理解してきたと評価している。このため改正の必要性として挙げられる自衛隊解釈の固定は行われており、自衛隊を憲法違反とする方が難しいと主張する。

2-1 世間での改憲論議に対する危機感

  端的に私の立場を述べると、この論点に興味を持った中学生の時分から憲法9条改正については賛成である。しかし、諸手を挙げて賛同というわけではない。厳密には国民的な熟議が行われた上で改憲が行われるのは賛成であって、現行の状態での改憲に関しては反対である。アリストテレスが、市民が公共の場において法を議論することの重要性を論じた様に「熟議」がなければならない。我々日本国民の議論は決してこの段階に至っていない。NHKによる「憲法に関する意識調査2018」 においては以下のような調査結果が示された。
設問「いまの憲法を改正する必要があるか?」
どちらとも言えないが最多の回答で39%。
設問「9条に自衛隊明記 賛成か? 反対か?」
どちらとも言えないが最多の回答で40%。
設問「いまの憲法の理念・内容をどの程度知っているか?」
知っていると知らないがほぼ半々 。
設問「国民投票制度をどの程度知っているか?」
知らないが59%で過半数を超える。

この結果に拠れば9条の改憲案どころか、憲法改正のプロセス・憲法そのものの中身についての内容にすら理解が及んでいないのである。このような状況下で憲法改正が発議された場合、国民投票になった場合憲法の理念・内容を知らない、9条に自衛隊明記にどちらとも言えない、憲法改正そのものについてもどちらとも言えないという国民が憲法改正の国民投票をすることになる。このような熟議を欠いた国民投票は、危険性が存在する。Brexitのような大きな政治的混乱に陥る可能性が非常に高い。 また、国民の多くが理解せずに改憲に賛同することによって、悪しき前例となり、時の政権によって容易に憲法を改正する危険性が高まる。
このような状況に陥った原因は国民的議論を妨げてきた与野党双方の責任でもある。
集団的自衛権を容認する改憲を模索していた旧民主党の有力政治家達が、2015年安保法制の際に急激な路線変更を行ったのである明らかに政権批判のためこの問題を利用しているとも捉えられかねない。更には憲法改正の議論そのものにすら反対を行っている。一方の与党自民党に関しても改憲について内部からの批判が起きている点 や連立を組んでいる公明党は改憲に慎重な姿勢で統一感は薄い。この様に与野党双方とも憲法改正に対して真っ向から議論を行っているとは言い難い。本来であれば与野党双方が改憲に対して積極的な議論を行い国民にも議論を促すべきだ。

2-2 憲法9条改正をなぜ求めるか。

 私は先に述べたように憲法9条の改正については賛成である。理由に関しては憲法9条に起因する自衛隊の解釈問題を解決するべきであること や自衛隊を軍隊と規定しない事によって安全保障政策に支障が出ると考えているためである。例えば、自衛隊における装備品の調達、武器の共同開発は高度に政治的配慮が行われている。 このような不毛な議論を行っている余裕は少子高齢化、経済成長の鈍化が顕著になっている日本において存在しないはずだ。日本では軍事法廷を設置することができない状態で湾岸戦争以来の反省から我が国はPKOを始めとした国際平和協力に自衛隊の派遣を行っている。しかし、外地での活動で万が一自衛官が現地で何らかの理由で危害を加えれば、現行制度では一般法廷で裁かれる事となる。防衛研究所主任研究官、奥平穣治は産経新聞記事において 「危害許容要件の判断など、軍事事件には専門性が必要になる。軍事的素養がない裁判官が判断できるのか」と専門家からもこのような体制に指摘がなされている。
自衛隊の法的な立ち位置について関連する問題点は山積している。この問題に多く共通している問題は自衛隊が「自衛のための必要最小限度の実力」であるというグレーな解釈による歪である。本来憲法における自衛隊の解釈をするべきはずの司法は統治行為論の影に隠れて判断を下さない。このような状況下で安全保障に直結する9条は改正され、明確に自衛隊を軍と規定するべきである。武力の不行使に関しては既に国連憲章2条4項において明記されており、本質的な9条改憲の争点は武力の不行使ではなく、ここに集約されるものだ。
憲法上における自衛隊の自衛隊の解釈についても長沼ナイキ事件 における第一審では自衛隊を違憲で有るとしたことや上述した世論調査を踏まえた上では、国民が本当に憲法を理解した上で自衛隊を肯定しているかは不透明であると言わざるを得ない。このことからも私は憲法9条を改正することは妥当であると考える。
 文字数4052字
参考文献

・『憲法学の病』 著 篠田 英朗 新潮社 2019 
・『憲法と平和を問いなおす』著 長谷部 恭男 2004

引用・参考記事
・「9条以外も議論を=玉木雄一郎国民民主代表-改憲論議を問う」
時事ドットコムニュース 2019年08月16日07時10分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019081500705&g=pol (最終閲覧2020/01/20)
・「いまさら聞けない「憲法9条と自衛隊」~本当に「憲法改正」は必要なのか?」
筆者:首都大学東京法学系教授 木村 草太
現代ビジネス 2016年7月2日
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/49041 (最終閲覧2020/01/20)
・「これでわかる「憲法9条」の本当の論点〜なぜいま「改正」なのか?」
 筆者:東京外国語大学教授 篠田 英朗
 現代ビジネス 2018年5月3日
 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55523 (最終閲覧2020/01/20)
・民主・枝野氏が「改憲私案」
しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-09-10/2013091002_02_1.html (最終閲覧2020/01/20)
・憲法に関する意識調査2018 https://www3.nhk.or.jp/news/special/kenpou70/yoron2018.html 
(最終閲覧2020/01/20)
・「自民改憲案の提示方針を批判 石破氏」 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36729120Z11C18A0EA3000/ (最終閲覧2020/01/20)
・“素人”裁判 国防が「殺人罪」 一般法廷 軍事的知識なく…「これでは戦えない」
 産経新聞 2017年8月22日
https://www.sankei.com/politics/news/170822/plt1708220003-n4.html(最終閲覧2020/01/20)


 

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