見出し画像

ここは、なんて呼べばいいの?

              森の中を歩くと、よい考えが浮かぶものだ
                       (15世紀の吟遊詩人)
 
 田舎、地方、僻地、辺鄙、田園など都心でも郊外でもない、人口の少ない集落を指す言葉はいろいろあるが、どれもしっくりこないと感じるのは自分だけではないだろう。最近は差別的ニュアンスがあるということなのか「田舎」という言葉は公には使われる機会が少なくなっているようだ。地方というと地方都市も想像される上に、どこか堅苦しいイメージがある。僻地も鄙も、住んでいる人が胸をはって使える言葉ではない。期待を込めて「地方の時代」と言われるが、都市や郊外と違って自分たちの住んでいる集落を指す一般名詞もない、という認識からスタートするべきだろう。言葉というものは思った以上に大事なのだ。 


 では村(邑)はどうだろう? 行政単位として使われるが、元来ムラは「群れる」から派生したという説もあるくらいだから、小さな集落を指す言葉としては最適な単語のように思える。何より一般的な言葉だから使い勝手が良さそうだ。農村・漁村とすれば、たいはんが一次産業で成り立っている集落の特徴も言い表せる。柳田国男が都市と田舎の相互依存的在り方と後者の課題を明らかにした著作も『都市と農村」だったではないか。何よりここは、村ではないか。

 と、ここまではいいがムラはムラで、永田町ムラや原子力ムラなどの使用例からわかるように、旧態依然とした閉鎖的で保守的なイメージからどうしても離れることができない。こうして振り出しに戻ることになる。さてさて、どんな単語が相応しいだろう? 移住に関心があるあなたはどう思いますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?