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辻村深月『傲慢と善良』読書感想文

私は要領が悪いアラサーの恋愛ものを好きになりがちです。

例えば、後半の展開が『傲慢と善良』に似ている映画『寝ても覚めても』綿矢りさ『勝手にふるえてろ』とその映画版、そして新作公開のたびにTwitterで阿鼻叫喚の起こる冬野梅子『まじめな会社員』

なので『傲慢と善良』を好きになったのは自然の流れだったように思います。

しかし。いくらこの本が好きだからといって、作品を全肯定するつもりはありません。

特に、作中に出てきた「既婚者の「結婚なんて」を本気にするな」(意訳)同様に、「「結婚したければ傲慢と善良を捨てろ」を本気にするつもりはない」と言っていくつもりです。

作品前半の、結婚相談所の小野里さんを利用した読者への攻撃めいた話の中で、結婚を遅らせるものが傲慢(≒自己愛)と善良(≒いい子でいること)だと述べるくだりがあります。

ここを自分へのメッセージと受け取った善良な方は「結婚したいから作中に出てきた傲慢さと善良さを捨てなきゃ」ってなるかもしれません。

私も業務上の目標登録みたく「〇○歳までに××したいから、相応しい条件のパートナー見つけて△△年中に入籍する」って腹をくくってしまえば、傲慢さも善良さも捨てて戦略立てるし、業務目標達成しました!はできると思っています。

そうは思っているものの、「結婚の優先度は高くないけど手に入りそうなものは全部欲しい」っていう強欲さだけでゆるふわしてる今、傲慢さと善良さを捨てる必要を感じないのです。

私は血肉となった事物への愛が自身の傲慢さの根源だと認識しているので、少なくとも現時点では、傲慢であり続けたいと思っています。

残ったささやかな善良さにつきましては、傲慢さを捨てる気がないから残ってるって感じです。

「脱・善良さ(人生経験値)ビンゴカード」のマスが人より早く埋まりまくっている自覚はあるけれど、埋まる時(=苦労する時)ってたいてい傲慢さが削ぎ落とされると思ってるので、必要最低限の善良さは保持していたいです。

以上、感想というか私のお気持ち表明でした。周りの同居改姓ブームに流されそうななか、このように考えさせてくれた『傲慢と善良』に感謝。

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