見出し画像

失恋記念日

今日3月20日は「地下鉄サリン事件」が起こった日だということです。

この日は、僕にとっては「失恋の日」でもあるのです。

奈良に住んでいる僕は当時、東京で暮らすある女の子に「遠距離片想い」をしていました。

小柄でおとなしい、それでいてバイタリティに溢れた子でした。

モテない僕にその子は、なぜかすごく懐いてくれていました。
週末の夜にはいつも長電話をしていました。

同じ声優さんのファン同士で、その声優さんの深夜ラジオを一緒に聴きながら電話で話していました。
時にはどちらかがウトウトしながらも、外が明るくなるまで電話を繋いでいました。

たまに会っては遊びに行くこともありました。

そんなある日、「地下鉄サリン事件」が発生したのです。

かなり広範囲に渡って、地下鉄内で被害が出ました。

イヤな胸騒ぎがしました。
被害が出た範囲は、彼女の活動域と重なっていたのです。

とりあえず電話してみましたが、出ませんでした。

電話といっても、今のように携帯電話があるわけではありません。部屋にかけたわけですが、まぁそうか。もう仕事に出かけてる時間だもんな。と、受話器を起きました。

こちらも自分の仕事があったのですが、全く手につきません。

まさか、まさかとは思うけど。

だんだん不安が募ってきました。

昼休みも、仕事が終わってからも電話をしましたが繋がりませんでした。

だんだん祈るような気持ちになってきました。
とにかく無事でいて欲しい。

そして夜9時頃、電話が繋がりました。
彼女の元気な声が電話から聞こえてきました。

体中の力が抜けました。

彼女、この日はたまたま定期券を買っていて、いつもと乗る列車が違っていたそうなのですが、いつも通り乗っていたらどうなっていたかわからなかった、と。

良かった。本当に良かった。
ホッとすると同時に、気持ちが異様に高ぶっている自分に気が付きました。

「もう、告白してしまおう。」

前フリとして、彼女にこう言いました。

「本当に心配したよ。東京なんかに1人で居させてたら心配だ。彼氏とかおらんの?」

そしたら彼女は

「実はね・・・」

と、

最近、彼氏が出来たことを打ち明けたのです。

一度脱力した身体から、さらに力が抜けました(笑)

こうして、僕の淡い恋は終わりを告げたのです。

ちなみにその彼女、現在は結婚し、幸せに暮らしていますが、
旦那様はその時の彼氏ではありません。

あそこで諦めちゃうのが僕の悪いところなのですが。

毎年この日が来て、このニュースを見る度にあの時の気持ちを思い出すのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?