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趣味人間万歳!【作曲・演奏編】(14)着メロの終焉

下請けでの着メロ制作、Kクリでの販売活動、いずれも順調でした。
大変でしたが、楽しい毎日を過ごしていました。

テクノロジーの進歩とは凄いもので、8和音だった携帯の着メロはやがて16和音になり、さらに32音、40音にまでなりました。

その度にKクリでは制作ツールが更新されていきました。

当然、着メロデータ制作の難易度も上がってきました。
8和音の時は省略出来た、というか省略しなければならなかった音も、ちゃんと拾わなければならなくなりました。

ある部分では楽になりましたが、ある部分では難しくなってきました。

音数が増えた着メロ制作に慣れてきた頃、色気を出して「通信カラオケデータ制作」にも手を出しました。

カラオケボックスなどに置かれているカラオケの端末に、リクエストに応じて送信されるカラオケ演奏データを制作するものです。

これは大変だった!
基本的な制作方法は同じなのですが、着メロにあったような音の省略が一切なく、いわゆる完全コピーが求められます。

聞こえる音を拾うだけならいいのですが、「聞こえない音」までも拾わなければならないのです。
どういうことかと言いますと、例えばギターの場合、ギターの弦は6本あります。なので必ず6和音、ミュートがあったとしても5和音は必ず鳴っているハズ、という考え方です。

着メロですと3和音、もしくは4和音でコード感が感じられればヨシ、としていましたが、カラオケではそれは通用しません。

そしてカラオケは、お客さんが気持ちよく歌えなければなりません。
その為の音圧とかグルーブ感とか、そこまで考えて作らねばならないのです。

大変でしたがその分単価も高かったですし、何より勉強になりました。

さらに携帯電話に大きな革命が起きました。
「着うた」の登場です。

つまり、携帯電話でサンプリング音声が再生出来るようになったということです。

この時「着メロはいずれ廃れる」と確信しました。

サンプリングが可能になってしまえば、CDの本物の音に敵うわけがありません。

Kクリでも「着うた」対応を行いましたが、僕は最後まで着うたを公開することはありませんでした。

予想通り着メロの需要は減っていき、請け負いの仕事の単価もどんどん下がっていきました。

いつかこの仕事は無くなる時がくる。
そう思いましたが、一方「だったら着メロの死に際を見届けてやる」とも思いました。

やがて請け負いの仕事は消滅し、Kクリは音楽以外にもボイスドラマも扱うなど生き残りを図りましたが、ついにフェードアウトしてしまいました。

今思い出しても、この頃はとても楽しい時期でした。
在宅業務で時間の自由が効いたので、ライブや旅行など自由に出かけることも出来ました。

何より「Kクリ」に関われたことは僕の人生の財産です。

「貸与」のはずだった着メロ制作ツールは返却不要ということになり、今でも宝物として取ってあります。

Kクリのスタッフさんやクリエイター仲間の皆さんとは、今でもFacebookで繋がっています。

こうして僕の「着メロ時代」は終わりました。

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