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「ヘミングのミュージックナイト」を終えて

夢じゃなかった。ほんとうにあったんだ。

これは、オープニングとエンディングを飾ったショートショートにある一節です。3月5日(土)6日(日)の2日間にわたって「ヘミングのミュージックナイト」が開催されました。

このイベントは、絵本「スマバレイの錆びれた時計塔」の発売に関連し、企画したもの。絵本に登場する、子どもたちが主役のイベント「ヘミングのミュージックタイム」を現実世界で大人向けにアレンジしました。舞台は、神戸三宮の「神戸北野HAPPY LAURA」さん。坂の上にある、洒落たムード漂うライブハウスです。

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無事に幕を閉じ、僕は冒頭に記した一節のような気持ちでいます。イベントのためにオープニングとエンディング用のショートショートを書いたときは、まさか自分がそのような心境になるとは思いもしませんでした。

今回のイベントは、音楽あり、マジックあり、ライブペインティングあり、朗読ありと、盛りだくさん。しかも、まん延防止等重点措置により、時短での開催でした。迎えた初日はリハーサルからバタバタで、特にイベント慣れしていない僕は、自分が出演するわけでもないに心臓がバクバクしていました。

オープニングアクトは、山木梨可さんによる短い朗読。観客の皆さまを、絵本の世界へエスコートしていただきました。

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すぐさま鳴り響いたのは、アカツキサトシさんのサックスの音色。サックスを始めて1年半とは思えない堂々としたパフォーマンスでした。

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アカツキさんは、さまざまなことに興味を持ち、貪欲に挑戦する人。サックスもそう。その姿勢に、少し年下の僕はいつも尊敬しています。なんだかわからないですが、アカツキさんといると「絶対大丈夫!」と思えるから不思議です。

アカツキさんの演奏の後、僭越ながらステージに上がり、挨拶をさせてもらいました。僕は人前で話すのが苦手です。「嘘つけ!」と突っ込む声が聞こえなくはないですが、本当です。小学生の頃などは、国語の授業で立って教科書を読むのも苦痛で、息継ぎを忘れて先生から心配されるほどでした。

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緊張で何を喋ったのかあまり覚えていませんが、周りを見る余裕なんてなく、アカツキさんのことを紹介もせず、一方的に話してしまいました。アカツキさん、ごめんなさい!

曲がりなりにも挨拶を終え、MCの優木瑛美さんにバトンタッチ。2日間、優木さんのMC力には脱帽しっぱなしでした。

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ライブは生ものです。すべてがスムーズに運ぶとは限りません。お客さまや出演者さまに寄り添い、全体を見渡し、咄嗟にさり気なくつなぐ様子は頼もしく、優木さんにはとても助けられました。

優木さんの呼び込みで最初に登場したのはマジシャンの松原俊之さん。ビリビリに破ったはずの新聞紙が元通りになると、マスクの中でくぐもる感嘆の声が観客席から低く漏れ聞こえました。

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会場は、一瞬でマツバラワールドに。繰り広げられる数々のマジックは、驚きの連続でした。

松原さんは、今回のイベントのプロデューサー的存在でもあります。僕を立ててくれてはいますが、開催にこぎ着ける準備段階や当日の運営では松原さんやアカツキさんが中心になって尽力してくださいました。この二人がいなければ、「ヘミングのミュージックナイト」は実現しなかった。感謝しています。

次に登場したのは、たなかまことさんhareさんです。

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“ステーキソース売りの歌い人(笑)”たなかまことさんが歌い、絵本のイラストを担当してくれた絵描きのhareさんがライブペインティングするコラボ。初日の絵はお客さまにお買い上げいただき、2日目の絵は僕がゲットしました。

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『イジワルな世界に花束を』。初日にたなかまことさんが歌った楽曲に出てくるフレーズと同名のライブ(2021年3月開催)が、僕とhareさんをつなげてくれました。

彼の歌はどこまでも優しくて、励まされる。僕は気づきませんでしたが、hareさんは泣きながら絵を描いていたそう。彼女も、たなかまことさんに救われた一人。それはめぐりめぐって、僕のことも救ってくれています。hareさんに出会わなければ、「スマバレイの錆びれた時計塔」という物語は絵本にならなかった。この物語は、絵本になることでようやく完成したのです。絵本を作る「スマバレイプロジェクト」がスタートし、僕は創作に対する活力を徐々に取り戻していった実感があります。

その「スマバレイプロジェクト」がきっかけで出会えたのが、山木梨可さんと鍋島奈穂子さんです。

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絵本「スマバレイの錆びれた時計塔」の朗読は、目を閉じると風景やキャラクターたちの表情が脳内に浮かび上がる感動的なものでした。声を巧みに使い分け、二人だけで少なくはない登場人物たちを演じる。プロの技は圧巻で、朗読の素晴らしさを全身で感じ取ることができました。

初日には、MCの優木さんからコメントを振られた際に「(我ながら)ええ話やなと思いました」と手前味噌感全開でしたが、照れ隠しだったので、ご容赦ください。「作った人間が感動に浸っている場合じゃないだろ!」と、もう一人の冷静な僕が牽制していたのです。聞き入っておられるお客さまの後ろ姿にも、僕は後方で心を震わせておりました。

初日のトリを務めてくださったのは、unclose。ピアノのshimaさんは、僕とアカツキさんのYouTube「FMスマバレイ」のためにジングルを作ってくれました。僕らにはもったいないくらい、おしゃれなジングルです。

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ボーカルのタツミトモエさんは、すごくパワフル。人柄と声量は関係ないでしょうが、チャーミングさとのギャップが魅力です。

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そうそう、僕がボソッとつぶやいたリクエストをアカツキさんがこっそり伝えてくれていて、サザンオールスターズの『いとしのエリー』をカバーしてくれました。uncloseバージョンの『いとしのエリー』、最高でした。どんな楽曲も自分たちの色に染め上げられるのは、確固たる世界観が構築されているからなのかもしれません。エネルギッシュなステージに酔いしれました。

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初日の唯一の後悔は、出演者やスタッフ全員での集合写真を撮り忘れていたこと……。uncloseのお二人、今度の打ち上げで一緒に写真を撮ってください!

そして2日目、早くも最終日。緊張感はありつつも、初日を経験していた分、ほんのちょっとだけ余裕が生まれていました(僕は相変わらずドギマギしていましたが)。舞台でパフォーマンスする人たちの胆力というものを、改めて見せつけられました。僕には無理です。

この日は、アカツキさんの演奏にギターの伊藤シュンペイさんが参加。

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サックスとギターのセッションは、初日とは違った雰囲気をもたらしてくれました。カッコいいのはもちろん、お二人の掛け合いから音楽の楽しさが伝わってきました。

松原さんのマジック、たなかまことさんとhareさんのコラボ、山木さんと鍋島さんによる絵本の朗読。初日と同じプログラムで、時計の針が進んでいきます。

2日目のトリを務めてくださったのは、u-full。アコーディオン&ボーカル・寺田侑加(yuka)さんと、ギター・フナハシダイチさんによるアコースティックユニットです。

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奏でるメロディーが絵本にぴったりに感じられたのと(僕の勝手なイメージに過ぎないのですが)、昨今の情勢とのシンクロが相まって、1曲目から感情が揺さぶられました。美しさゆえに、張り裂けそうになる。終演後にCDを買わせていただき、今はそれを聴きながらこの文章を書いています。

事前に絵本を読んでくださっていたようで、合間のMCでは、僕が物語に込めた想いを咀嚼して言葉にしていただき、そのことについても感激しました。

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最終日も鍋島奈穂子さんによる短い朗読でエンディング……と、思いきや、MCの優木さんのご厚意で、最後のご挨拶をさせていただくことに。打ち合わせをしていなかったので、何の準備もなく、僕はステージへ。まとまっていたかどうか自信ありませんが、そのときに思ったことを素直にお話させていただきました。

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2日間の「ヘミングのミュージックナイト」は、あっという間でした。やっぱり不安は多少残るもの。至らないところも多々あったかと思います。ただ、ご来場の方々から「良かった!」「楽しかった!」「どのパフォーマンスも素晴らしかった!」「涙が出そうになった」などのコメントをいただけてありがたかったです(絵本もいっぱいご購入いただき、ありがとうございました!)

加えて、ご出演者やスタッフの方々から「また、このメンバーで何かやりたい!」「また、会いたい!」と言ってもらえて何より嬉しかった。近々、必ず打ち上げしましょうね!

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お客さまご退店時、店内に流れていたのは『上を向いて歩こう』。いたるところに笑顔が咲き、その光景を眺めていると幸せな気持ちに包まれました。こういうのって、人生において必要だと僕は思います。決して、不要不急じゃない。

最近は、自分だけが幸せでいいのか、笑っていていいのか、そんなことを感じてしまう人も多いかもしれません。でも、誰もが自分自身と、大切な誰かをたった一人でも笑顔にできれば、それが広がることで世の中の幸せが創られていくような気がします。

たくさんの人とのご縁をつないでくれる「スマバレイの錆びれた時計塔」という物語は、僕の宝物です。数年前に書いた短編小説が、クラウドファンディングによって絵本になって、イベントまでできるなんて……。想像すらしていませんでした。これからも大切にしながら、関わってくれる人たち全員がおもしろがれることを、生まれ育った神戸でやっていければいいなと思います。

「ヘミングのミュージックナイト」は両日とも満員御礼でした。ご来場いただきました皆さま、ご出演者・スタッフの皆さま、神戸北野HAPPY LAURAさま、誠にありがとうございました。皆さまのおかげで、ステキな思い出ができました!感無量です。心より御礼申し上げます。

最後に、エンディングで朗読いただいたショートショートから、こちらを。

これからどうなるかわからない。ただ、こうして明日も幸せを噛み締めたいと思う。どこかで、鐘の音が鳴った気がした。

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photo by たなかまこと(一部除く)

【ヘミングのミュージックナイト】
■出演者
unclose(Vo&Pf)※5日のみ出演
u-full(Vo,Acc &Gt)※6日のみ出演
たなかまこと(Vo,Gt)
伊藤シュンペイ(Gt)※6日のみ出演
アカツキサトシ(Sax)
hare(ペイント)
山木梨可(朗読)
鍋島菜穂子(朗読)
松原俊之(マジック)
優木瑛美(MC)
ゴンドーマサキ(企画)

■会場
神戸北野HAPPY LAURA

【hareさんがライブ当日に描いた絵をデータ販売中!】
ご来場いただいた方も、そうでない方も、ぜひ記念にどうぞ。

【絵本「スマバレイの錆びれた時計塔」Amazonおよび、いしだえほん直販サイトで発売中!】








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