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英語の呪縛から講師の私が解き放たれた12年の軌跡(中編)「ITTANプリズナー達との出会い」

2016年「なす英語倶楽部」は大きく変化する。
ITTANプリズナー達が「なす英語倶楽部」に登場した年だ。
*ITTANプリズナーとは・・・那須高原のゲストハウスITTANにボランティアステイをしているノンジャパニーズ旅行客の方々。車がないとどこへも行けない那須高原&ボランティアステイのため、ゲストハウスやそれ以外の頼まれた仕事をしないといけないので、まとめてプリズナーと呼ばれていた。

ボランティアステイのシステムや、畑仕事や英語倶楽部を手伝ってもらっていた概要はこちらから。

「スピーキング力を伸ばすにはまずはたくさん話すこと、だよね!」
2016年の冬、そんな軽い気持ちで始めた、英語を教えるプロではないノンジャパニーズの旅行客ITTANプリズナー達との英会話レッスン。
国籍はヨーロッパ系ではドイツ・フランスが多く、アジア系ではマレーシア・シンガポールなど、あとメキシコ、アメリカ人も。
年齢も幅広く、10代〜40代まで。20代が多かったかな。
1週間〜3ヶ月くらい那須高原に滞在しているし、気に入って何度も那須に来てくれるリピーターさんも多かったので、自然と仲良くなっていく。

英語が母国語の割合は2割程度。あとは第2・第3外国語で英語を話す方々で、日本語ができる人はほとんどいないため、コミュニケーションは英語になる。
ほとんどの人は貧乏旅行をしていた。東京からヒッチハイクで那須まで来た人とも何人も会った。「日本人は親切だし、日本は安全な国だ。」口を揃えて、そう言っていた。
ごくたまに、ほとんど英語ができない人もいたけれど、「君の方が僕より英語上手いよー」なんて言いながら、みんな英語倶楽部を手伝ってくれた。(笑)

旅行客のノンジャパニーズ達との英会話レッスン。
個性豊かなITTANプリズナー達との1年目のスタートは波瀾万丈だった。
彼らはとにかくしゃべる。間違ってようが、相手に伝わってなかろうが、どんどんしゃべる。これがコントロールできないと、日本人の受講生のトレーニングにはならない。
英語倶楽部に参加したいノンジャパニーズが多すぎて、日本人1人にノンジャパ2〜3人なんてこともあった。
何を言っているかわからなくて困った顔になっちゃうシニアの受講生さんがいたり、お互いに言いたいことが通じなくて固まっちゃうことも。

ITTANプリズナー達に英語倶楽部を手伝ってもらいながら1シーズン(3ヶ月)が終わるころ、私はレッスンの流れのコントロールもできるようになってきた。
受講生も長期滞在のプリズナー達とは気心も知れてきて、癖のある英語もだんだん聞き取れるようになってきていた。
自分から話しかけることが苦手な受講生も、何度か会うと積極的に話すようにもなってきた。
英語の単語や文法をたくさん知っている人よりも、身振り手振りや筆談を交えて話す人の方が、たくさん楽しそうに話していた。

相手の言っていることを「理解したい」
自分の思っていることを「伝えたい」

そんな思いから英語での会話が広がっていった。

文法や発音が間違っていても気にせず話し続けるノンジャパニーズ達と接していると「間違うこと」が気にならなくなってくる。
自分の国の歴史や現状について、政治や社会問題について時には真面目に話す姿を見て、自分も日本のことをもっと伝えたいと思ってくる。

相手のこと・相手の国のことを知りたい。
そして自分のこと・日本のことを伝えたい。

 
I want to know you and I want you to know me.
このwantが会話を広げていった。
受講生の顔つきが活き活きしてきた。

そうか、これだったのか。
わかっているようで、私も実感したことなかったんだな。

学生時代から囚われていた「英語の呪縛」
文法は合ってるか?単語はわかってるか?ちゃんと話せてるか?
英語を教えるようになってからも、私はちゃんと教えているか?TOEICスコアは上がるのか?正しいトレーニングを伝えているか?
そんな「呪縛」が常にまとわりついていた。
「楽しむこと」は企業英語クラスには無かった。

私自身が囚われていた「英語の呪縛」から私が解放されたようだった。

2017年からは「英語は度胸!」をスローガンに掲げて、那須を訪れるITTANプリズナー達との交流は続いた。
2016年冬から2020年春まで英語倶楽部を手伝ってくれたITTANプリズナー達。レギュラーのカフェでのレッスンだけでなく、那須高原の旅館や施設などでの接客ワークショップにも来てもらった。
着物を着て一緒に「お茶会」、料理教室やってもらったり、地元のお祭りに参加したり。ゲストハウスITTANでは定期的に一緒に夕食食べたり、森でBBQしたり。
「英語を学ぶ」ではなく「たまたま共通言語は英語だね」
という感覚になっていった。
日本人の英語苦手意識も無くなりそうな、そんな方法を見つけたと思っていた。

しかし、2020年からのコロナパンデミックで海外からの旅行客はいなくなった・・・もちろんITTANプリズナーもいなくなった。

2020年冬、私の新たな挑戦がまた始まることとなる・・
(後編へ続く)





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