見出し画像

ドラムセット・アレンジメントのすすめ

これは、私が考案したドラムセット用いた全く新しいアートを普及するための提案である。

まず、世のドラマー諸君に告ぐ。
諸君らのドラムのセッティングは美しいだろうか?
そこに造形美や芸術性を感じられているだろうか?

ドラム経験のない人には分からないかもしれないが、「個性を出したければ他人と違うセッティングをしろ」と言われるほど、ドラムにとってセッティングというのは重要なのである。
ドラムという楽器は、各太鼓やシンバルをどの位置に配置するか、どのような角度でセットするかによって、出せる音色や叩けるリズムが全く変わってくるものなのだ。

実際に一線で活躍する有名プロドラマー達は個性を出すためにオーダーメイドのドラムやラックシステムなどを利用し、それぞれに個性的なセッティングを実現している。

今回の記事は、そんなドラムのセッティングについて一石を投じるものになるだろう。

*

今思えば、若かりし頃は全ドラムメーカーのカタログを楽器屋から持ち帰り、夜な夜なアイドルの写真集を見るがごとくドラムセットのカタログを眺めていた私がこの道に進むのは必然だったのかもしれない。

10代の頃の私は1人でスタジオに入ると、練習をする前にまずドラムセットがどうすれば美しく見えるか、それぞれのパーツの角度や高さを調節しながら試行錯誤を行い、写真を撮るなどして楽しんでいた。

しかし、歳月が過ぎ20代も後半に差し掛かった頃、私はある疑問を抱いた。

それは、セッティングにおいて叩きやすさと美しさの両立を考えてしまうことが、ドラムセットが本来発揮できる造形美や芸術性の可能性を狭めているのではないかということだった。

叩きやすさを犠牲にすることで、もっとドラムのセッティングの可能性は広がる。そう確信した私はすぐにドラムセットのあるレンタルスタジオへ急いだ。

まずは叩きやすさを一旦考慮せず、見た目の美しさや芸術性だけを重視したセッティングを考えてみるため、私はスタジオに籠もった。
そしてドラムを一切叩くことなく様々なセッティングを試し、2時間ほど試行錯誤した結果生まれたのがこの作品(セッティング)だ。

画像1

これが、全ての原点である。
鹿の角のように高くそびえるのはシンバルスタンドとタム(太鼓)ホルダーを合体させたものだ。ドラムとして叩ける部位を削ぎ落とし、見た目のインパクトだけを重視したこのセッティングができた時、私の中で光が見えた。

私はこの作品に「奈良」というタイトルをつけた。

叩きやすさを度外視することにより、オーソドックスなドラムセットでも無限の可能性を感じることができた。

それと同時に、このドラムセッティングの芸術性を追求する行為を「ドラムセット・アレンジメント」と名付け、自らがその創始者として、この活動を世に広めようと誓ったのだ。

ではここで、私の数ある作品の中でも特に芸術性の高かったものを時系列に沿って何点か紹介してみよう。

【作品タイトル:荒城の月】

画像6

まず最初は見た目の美しさという点において、素人でもその芸術性を比較的理解しやすいと思われる作品から紹介する。
この作品では太鼓類が朽ち果てた城を、斜めに設置した手前のシンバルが吹き荒ぶ風を、左奥のシンバルが月を表現している。

一見普通に叩けそうにも見えるが、左奥のシンバルはあえて演奏中に手の届かない位置に配置した。

しかし、手が届かなくて良いのである。
何故なら人間がどれだけ手を伸ばしても月には決して届かないのだから。

【作品タイトル:CR中澤裕子】

画像5

このあたりからもはや叩けるかどうかについては一切考慮しなくなっている。芸術性の爆発が始まったのだ。中央から外側に向けて伸びる2本のスティックでパチンコの開閉するハネを、シンバル類で上部から落ちてくるパチンコ玉を、太鼓類でパチンコ台のガチャガチャとした雰囲気を表現している。

タイトルにある「中澤裕子」はモーニング娘。の元メンバーでカラスの女房だが、なぜこのタイトルにしたのかは自分でもよく分からない。おそらく芸術の世界に没頭するあまり、頭がおかしくなっていたのだろう。芸術とはそういうものなのだ。

【作品タイトル:逃げちゃダメだ】

画像2

本来、太鼓を乗せるための床置き型のスタンドを、あえて太鼓の上に乗せるという逆転の発想からこの作品は生まれた。太鼓やシンバルの点数を減らし、引き算の美学を体現している。

その太鼓の上に乗せられたスタンドが、国民的アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場するエヴァ初号機の角のようなフォルムに感じられたので、作中の主人公の名言からこのタイトルをつけた。

私の作品の中でもかなり気に入っているものであり、この作品は私のFacebook(放置中)のアイコンにもなっている。

何か人生で辛いことがあった時に見たくなる作品だ。

【作品タイトル:英国紳士】

画像3

この時点で私は叩けるかどうかを度外視するだけでなく、演奏以外の用途で使うものを組み合わせるという次元に到達した。芸術にはルールなど存在しないのである。ドラムセットが根底にあれば、もはや何でもありだ。

この作品ではカジュアルなイメージの強いドラムセットに対し、折り目のついたスラックスでフォーマルな印象をプラスすることに成功した。また、撮影時期が夏だったこともあり、裾のロールアップで涼しげなスタイルを演出している。

オシャレもセッティングもコツは同じなのである。アラサー以上であればこういったキレイめなアイテムも積極的に取り入れていくと良いだろう。


そして、ここまでの作品をネット上で発表していた私は、ある日、友人から「アート作品の展示と弾き語りのコラボイベントをやるから、ドラムセット・アレンジメント作品を出展してみないか」との誘いを受けた。

私はこの活動を広く知ってもらうチャンスと感じ、満を持して次の作品を制作し、展示した。

【作品タイトル:Bone To Be Wild】

画像7

画像8

前作でドラムセットに服を着せる着想を得た私はここでもその技法を用いて革ジャンを着せている。
また、ハイハットにサングラスをかけ、タバコをくわえさせ、その他のパーツでは大型バイクを表現している。

くわえタバコでハーレーに乗るアメリカのワイルドなライダーのような姿に、映画「イージーライダー」の主題歌のタイトルをつけた。

少々やり過ぎな気もしたが、私自身、これこそがドラムセットアレンジメントのひとつの到達点であるという満足感を得ることができた。

しかしそれと同時に、もはやこれ以上の作品を作ることはできないだろうという思いもあった。何事も引き際が肝心だ。展示イベント終了後、私は密かにドラムセット・アレンジメントの世界を引退した。

それから数年の月日が流れた頃、件の友人から「展示イベントをもう一度やろうと思うんだけど、また出展してくれないか」との誘いを受けた。

私は悩んだ、あの「Bone To Be Wild」を超える作品が作れる自信がなかったからだ。しかし、数年の月日を経たことで、私も様々な経験をして成長しているという自負もあった。

次の作品は私にとって、過去の自分への挑戦だった。芸術というのは常に自分との闘いなのだ。

【作品タイトル:弱者達の革命、支配からの脱却】

画像9

もはや叩けるとか云々の次元ではないことは前作と同様だが、私は見た目の美しさだけでなく「その作品にストーリーを感じることができるか」という点において、新しい表現の余地を見出した。

そして試行錯誤の末に完成したのがこの作品である。

22インチもの口径を誇るバスドラムはいわば、ドラムセットの世界では絶対王者である。対する他の太鼓類は12インチ〜16インチなので、その大きさを比較しても力の差は歴然だということが分かるだろう。

しかし、この作品では人型に進化した12インチと13インチのタム(太鼓)が協力し合うことで、12+13=25インチ相当のパワーを発揮し22インチのバスドラムを制圧し拘束、その独裁政権に終止符を打つ姿を表現している。
また、後方にはスティックや使用済みのドラムヘッド(皮)などでオブジェを作成し、バスドラムがこれまで築き上げてきた王国を表現している。

ちなみにこの作品ではバスドラムを拘束するために大量のサランラップを消費している。

この作品が今のところ、私の最後の作品である。

私は今後も特に弟子をとるつもりはないし、もしドラムセット・アレンジメントの後継者になりたいという人がいれば、自由にやってもらって構わない。
もし諸君のセッティングへのこだわりが実用性を超えてしまった時、それは新たなドラムセット・アレンジメント作家誕生の瞬間なのだ。

おしまい

画像5


==============================
↓の「サポートをする」ボタンにて100円から投げ銭が出来ます。
ご支援いただいた金額は無駄なアート作成費用として利用させていただきます。
==============================

お賽銭箱はこちらです。