黒曜石 -生活を支えた漆黒の岩石-
●序文
不定期宝石紹介シリーズ 第4弾「黒曜石」編です。
古代から人々の生活を支えてきた、頼れる漆黒の天然ガラス、黒曜石(オブシディアン)の魅力を紹介します。
● 基本情報
・モース硬度: 5 (宝石 その美と科学)
・屈折率: 1.48 ~ 1.51 (宝石 その美と科学)
・比重: 2.33 ~ 2.42 (宝石 その美と科学)
・結晶系: 非晶質
・劈開: なし
・色: 黒~暗褐色 不透明~半透明
・産地: メキシコ、アメリカ、日本、イタリア
● 化学的な特徴
黒曜石は化学成分や結晶構造で分類すると、ケイ酸分を多く含んだガラス質の流紋岩ということになります。詳しくは後述しますが、厳密には「鉱物」ではなく「岩石」と分類したほうが適切です。流紋岩というのは、ケイ酸が多く粘度の高いマグマが急激に冷えることで、中の成分の結晶が大きく成長することなく固まった岩石です。
黒曜石は組織のほとんどがガラス質なので、叩いて割ると特徴的な貝殻状の模様が現れます。ガラスの破片と同様、破断面はとても鋭く、ナイフとして利用できるほどです。
● 黒曜石の利用
黒曜石は、宝石というよりは道具としての利用されてきた歴史が長い石です。先にも触れたように、割ったときに現れる鋭い破断面を利用して石器時代ではナイフや矢じりとして使われていました。また、現在でも重要な産地である中米の、マヤ文明やアステカ文明では、マクアウィトルと呼ばれる黒曜石の刃を取り付けた木製の剣まで作られていました(下画像)。
古代の道具として重要な材料だったため、遺跡で発見される黒曜石の遺物は考古学の研究の材料としてもよく使われています。黒曜石が考古学研究において重要である理由ものちほどお話しますね。
その鋭利さは最先端の外科手術などでも役に立ち、もっとも鋭利なメスとして現在でも利用されることもあります。その鋭利さは刃先の厚さが30 Å(オングトローム)=3 nm(ナノメートル)ほどにもなるといい、これは通常のカミソリの300 Åと比べると10倍ほど鋭いということになります。
他にも、古代では黒曜石の表面を研磨することで鏡として用いられたりもしたそうです。
古代文明で使われる鏡は、占いや魔術などの道具として使われていました。光をあつめて反射する性質は確かに神秘的ですよね。
もちろん、宝石としても利用されることがあります。古くから磨かれた黒曜石のビーズを首飾りや腕輪のようなアクセサリーとして使われており、現在も黒曜石のビーズは人気です。
カットはというと、黒っぽくて透明度は低いものが多いので、複雑なファセットカットよりもシンプルなカボションカットが多い印象です。ガラス質なので深いブラックでもほんのり自然な透明感を感じることができてとってもきれいです。
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