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祖父とタバコを吸った話。

まずはじめに伝えておきたいことがある。
タバコを吸うことは、個人の自由だ。
但し、年齢制限やマナーは守らなくてはならない。未成年には、好ましくない内容かもしれないが最後まで付き合ってほしい。

私の家系は、男どもはタバコの道を通ってきている。いわゆるヘビースモーカーというやつかもしれません。

今思い返せば、祖父も父も叔父も従兄弟もタバコを得意げに吸っていたような気がする。それを見ていた影響なのか、仕事の影響なのか。
私の手元にもタバコは常に見えるところにある。

船の整備をしていたとき、釣り糸を巻きながらタバコを吸っていた祖父の姿は、今でも覚えている。歳をとって定年してからは全く吸っている気配すら感じなかった祖父。

私の家族は祖父の家に帰省すると
とあるルールを設ける。

「外でバーベキュー」

四季さまざまだが、こうして毎回担当を決めて準備をするのだ。

男は力仕事、女は台所。

昔ながらの役割ですが、子供の頃からこの手順は揺るがない。祖父は年齢の割には力持ちでアクティブだ。何でも自分でやらなければ気が済まないこともあり、齢30代になっても祖父にあれやこれやと指導されるのです。当たり前の作法なのか、身体が勝手に動いてしまうのは不思議なものです。

バーベキューがはじまると、テレビもラジオもない自然の音を楽しみながら海の風と虫と対決するのですが、そうするうちに肉は焼け、年相応に肉より野菜を多く食べ始めた頃合いでタバコに手が出てしまう。

何も気にせず吸えると言う場所は、また格別なものです。それを見てなのか珍しく祖父が言うのです。

「そったーいけん味がすっどかい?どれ、じいちゃんも一本吸うてみろかいね」

…日本語なのだ。独特だが。
珍しくそんなことを言うものなので不安にもなりつつ一本だけならと思い渡すと、これがまたあの時のような吸い方ではないものの、似合うというか様になっているというか。祖父はいくつになっても漢なのだと、肉や野菜の味よりも匂いが記憶してしまうのです。

老人にタバコはナンセンス。
でもうちの祖父なら大丈夫だろう。
…大丈夫なんだ。すごい生命力だな。
私もこうありたい。と複数思うのでした。

何が親孝行になるかは分かりません。
それでも生きてるうちに世間からは嫌悪する光景が私には美化して見えるひと時でした。

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