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NO RETREAT!東部戦線1941−1945(国際通信社)の初期配置と補給ルールの疑問について

この記事の目的


No Retreat(以下NR)は手頃なサイズで東部戦線を扱うウォーゲームとして定評があります。日本語版も第2版が国際通信社から発売されています。
しかし日本語版NRは初期配置の記述とマップの表示が曖昧で解釈に困る状態となっています。少なくとも私は困った。
また補給のルールを素直に適用すると開戦早々に枢軸軍の南方の部隊が補給切れになります。
以下に日本語版の元になったオリジナルと思われるヴィクトリーポイント(VP)版NRと比較しておそらく正しい初期配置ルールと補給ルールの処理を提案しようというものです。

注意


この記事の内容は公式のアナウンスではありません。
こうするのが多分正しいですよという提案です。

NRはオリジナルのVP版とリメイクのGMT版があります。公開されている英語のルールとマップを比較してみたところ国通の日本語版はVP版と非常に似ています。というわけで日本語版は基本VP版を元にしていると判断しました。


マップ白線問題


ルール(2.1)に赤字で「NO RETREAT!ではマップ中央付近の白いラインより東側を用います(西側はNA BERLIN!で使用します)」と記述があります。
以下マップ中央部縦に薄く白線が入ってます。

国通版NRの問題児、白線


この白線はヘクスサイドではなくなぜかヘクスの中間を通っています。この白線が通ったヘクスは東と西どちら扱いなんでしょうか。NRとNABERLIN!(以下NB)どちらで使うんでしょうか。それともどちらで使っても良いのでしょうか。ルールブックの内容では判別つきません。

枢軸軍初期の補給問題


ここで補給の問題が出てきます。

このゲームの補給の規定
・補給下の自軍支配都市から4ヘクスの補給線
・都市は自軍マップ端まで補給線(距離無制限)引ければ補給下とする
・自軍マップ端まで距離4ヘクス以内の補給線(直接補給)
・枢軸軍の補給源はマップ西端(灰色)
・フィンランド軍は北端(水色)
・ソ連軍は東端と南端(赤色)

NR白線付近南部

問題の白線付近南部


Bucharestから4ヘクスの連絡線引かないとおそらくオデッサの西方にいるであろうルーマニア軍は補給切れです。また白線に右端がかかっているLvovから補給線引かないと南方軍集団はKiev落とすまでおまんま食い上げです。

でもNRでは白線の東側を用いる(2.1)というルールがあります。
ゲームで使用しないマップ西端から連絡線引いて使用しない都市から補給線引く??「東側を用いる」とは??

ここでオリジナルと思われるVP版のマップ観てみましょう。

VP版NRマップ


このマップは西端のヘクスサイドに確かにグレーの線が入って枢軸の補給源となっています。
VP版はキエフとオデッサを落とすまではマップ西端からの直接補給を想定しているようです。北方と中央はKonigsbergから補給線を引きリガ、ミンスクと攻略していくことになるでしょう。

日本語版の補給ルールの矛盾はVP版からマップが西に追加変更されているのにルール記述を変更せずVP版ルールをそのまま訳したことから発生したようです。

初期配置の問題


シナリオAバルバロッサ&キャンペーンの初期配置の記述もかなり判断に困るものです。
日本語版ルールから一部抜粋します。

「枢軸軍プレイヤーは以下の14個のユニットを配置します。N(北方軍集団)C(中央軍集団)S(南方軍集団)のユニットをドイツ(Greatre Germany)国内にスタック制限内で配置」

国通版NRマップ北部


ドイツ国内にドイツの14ユニットを配置。
NRは白線より東側のみ使用。

以上の条件にこのマップ与えられてどこのヘクスに配置すれば良いか分かりますか?点線は枢軸とソ連の境界線でしょう。でも白線通ってるヘクスの扱いがわかりません。ドイツとハンガリーの国境がどこかもちょっと気になります。だいたいLvovは使っていいんでしょうか。もしユニット配置して良いなら戦況が激変しそうです。
更にいうと白線から東側を使う(2.1)という記述は(曖昧とはいえ)初期配置とシナリオルールの所に記載しておくべきではないでしょうか。

再び初期配置ルールから抜粋
「R(ルーマニアグループ)のユニットをルーマニア国内の3ヘクス内にスタック制限を守って配置します」

国通版NRマップ南部

ルーマニア国内3ヘクス・・・・どこやねん。
しかし察しのかなりいい人は「3ヘクス」がヒントになって正解にたどりつくかもしれません。
「白線がヘクスの左寄りを通っているヘクスは使用可、右寄りを通っているヘクスは使わないのか」
そう解釈すると先に紹介したVP版マップと合致します。
というわけでVPマップを再掲します。

逆襲のVP版マップ

ドイツ14ユニットを配置するドイツ国内とは北西端の色が濃くなっている10ヘクスです。
ルーマニアは南西端の山を含む色の濃くなった3ヘクスです(VP版シナリオブックにはちゃんとマップの色と山の部分に言及されています)

これらを国通版NRマップに反映させてみます。

シン国通版NRマップ

NRとNBの境界は黒太線のヘクスサイドです。
NRでは黒太線から西(左)のヘクスは一切使用しません。
また黒太線がマップ西端となり枢軸軍の補給源となります。

こう規定しておけばゲームで使用しない部分を補給においては使用できる超解釈が必要なくなります。

初期配置ドイツ軍14ユニットはマップ上方の赤斜線10ヘクスに配置します。
ルーマニアはマップ下方の赤斜線3ヘクスです。

気になるLvovはNRで使用できません。おそらくソ連Southwestのユニットは包囲を免れるでしょう。めでたしめでたし。

なんでこうなった


・マップの境界線をヘクスサイドに引いていない。
・補給ルールの記述をマップ変更に合わせて変更していない。
・VP版シナリオブックにあるバルバロッサ&キャンペーンの初期配置画像をルールブックに載せていない。記述も削っている。
・枢軸初期配置の色が変わっている部分も他と同じ色に変更されている。
・初期配置とプレイにあたって重要なルール(2.1)が初期配置の項目に載せていない。

終わりに


この記事には大きなヒントがありました。
nyaoさんのブログです。国通版NRの配置に悩み解決を記した先人です。
本当に参考になりました。ありがとうございます。

またTwitterでも助言をいくつもいただきました。
ありがとうございます。

昔から定評あるゲームでVP版の経験がある人が多かったのかもしれません。
そのため国通版の記述とマップの曖昧さは問題にならなかったのでしょう。
しかし新規に国通版からNRに入ったら国通版ルールとマップで正しい(と思われる)結論にたどりつくのはほぼ無理と思います。
また国通のライセンス版はオリジナルルールやプレイブックにある配置図やゲームのプレイ図例を削りがち(今年発売されたNR2のプレイブックのプレイ例も削除されている)という悪癖?があります。
改善して欲しいところです。
また初期配置ほとんどの人が迷うと思いますがこの記事が役立つとうれしいです。

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