ごみちゃん

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マッチングアプリのシンデレラ 15章【恋愛小説】

15章 十二時の魔法  「お邪魔します。あいちゃんの部屋、女の子らしくて綺麗だね。カチューシャたくさん持ってるんだね」  君が可愛いって言ってくれたから、たくさん集めたんだよ。可愛いって言ってほしくて。  「ありがとう。ソファ座りな。何か映画とか観る? 」  「ホラー映画好き? 」  「好きだけど一人暮らしをしてからは怖くてみてないかな」  「じゃあみよ! 」  「えー怖い! けいた君が帰ったら思い出しちゃうじゃん」  「いいじゃん! 」  部屋を暗くする。怖い  アルコ

    • マッチングアプリのシンデレラ 14章【恋愛小説】

      14章 過去を塗り替えるように  ピロン。あ、けいた君からかな。何だろう?  「あいの、会いたい。この前彼女いらないって言ったけど、会うだけでもダメ? 」  けいた君じゃない。会いたいという感情はもうない。でも……。あなたは過去の人。私は前は進んでいる。でも、でも……。  「いいよ。今日うち来なよ」  だめだ。本当はいいなんて思っていない。でも。  「今から行くね」  結局私は都合のいい女。好きな子ができても、気になる子ができても、私はずっとクズな遊び人。ごみちゃんのまま。

      • マッチングアプリのシンデレラ 13章【恋愛小説】

        13章 どこへでも連れ出すよ  ペンキをこぼしたように青く晴れた、十月の朝の空。月が眠りにつき、太陽が目を覚ます時間。今日もまた同じ、だけど昨日とは少し違う新しい道を歩く。  「あいちゃん帰ったよ! ピアスいい感じ。ありがとね」  「私も家に着いたよ! それはよかったー! 」  何事もなかったかのようにメッセージを返す。さっきまでのことを思い返していた。あの子の可愛らしい顔に似つかわしくない、強引なキス。やってしまったと言わんばかりの罪悪感。でもあの感覚が脳裏について離れ

        • マッチングアプリのシンデレラ 12章【恋愛小説】

          12章 星が綺麗ですね  二人でいい感じに酔っ払う。そして外で飲みなおす。彼は公園が好きらしい。私が行きたかった新宿の公園に、行ったことがあるらしい。もうすぐ十月になる。東京の秋は初めてだ。薄着の私は肌寒さを感じていた。コンビニで買ったお酒を芝生の上に置き、地面に二人で寝そべった。そこにはきれいな星空が広がっていた。本来ずっと見てきたキラキラした世界。小さい頃に実家の前で寝そべって見た星空を思い出した。あの頃は何も知らなかった。美しい空をただ眺めていたかった。  「こうやっ

        マッチングアプリのシンデレラ 15章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 11章【恋愛小説】

          11章 ベロベロごみちゃん  真っ暗で人通りのない帰り道を歩く。今朝も通った道。でも少し違う道。今朝とは違う私の、通った道。  「ただいま」  日曜の午後九時。私は気絶をするかのように眠りについた。  ピロン。着信音で目が覚める。時刻は深夜の一時。こんな時間に誰、ほんとに。  「あいちゃん起きてる? 今電話できる? 」  あの子だ! まさかの電話のお誘い。もちろんオッケー。  「もしもし? 何してたの? 」  「寝てたよ。帰ってからすぐ寝てた」  前日に男に会ってから行っ

          マッチングアプリのシンデレラ 11章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 10章【恋愛小説】

          10章 運命の輪  「そろそろ違うところ行こうか。俺占いとか信じてないよね。でも安いしやってみる」  五百円でできる、いい感じの手相占い屋に入る。なんとも嘘くさいオカルティーな屋台式の占い屋。  まずは私の手相。  「あなた、とてもマイペースね。がんばりやさんだね」  たしかに自分のペースで生きてきた。でも私は周りに影響されやすい。矛盾しているかもだけど実際にそうなのだ。だからこんなことになっているのかもしれない。痛感した。続いてこの子の番。  「あなたモテるね。とってもい

          マッチングアプリのシンデレラ 10章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 9章【恋愛小説】

          9章 あいちゃん  「白いブラウスに黒いスカートで、金髪でボブの人だよ」  いつも通りに外見の特徴を言う。  「ごみちゃんかな? 」  「あ、そうだよ。遅れてごめんね。よろしく! 」  結構かっこいい。これは合格だ。昨日嫌なことあったし、今日はこの人と一日だけでも楽しむか。  ぎゅうぎゅうに押し込まれた電車の中で、他愛もない会話をする。この子は法学部。法学部……。思い出してしまう。出身は西日本。趣味は音楽。ピアノが弾けるらしい。なかなか悪くない。でも緊張してるのかな。この

          マッチングアプリのシンデレラ 9章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 8章【恋愛小説】

          8章 素朴な子  だめだった。もう何もかもダメだった。結果は同じ。酔って。連れ込まれて。抵抗はしない。バカだった。自分を責めた。私はこんなことをするために東京へ来たんじゃない。  隣で男が寝ている。朝の四時。友達から貰った言葉を裏切るような行為。自分が醜い。  傘を持たない私は、昨晩から続く雨に打たれながら歩いていた。ずっと起きていたからなのか、雨が強くなっていることに気が付かなかった。水位の上がった川を、操られたように覗き込む。吸い込まれてゆく。真面目だった頃に戻りたい

          マッチングアプリのシンデレラ 8章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 7章【恋愛小説】

          7章 マッチングアプリ  「今日暇? 恋愛相談したいんだけど、新宿で飲まん? 」  友人からの返信が来る前から、私は支度を始めていた。  「いいよ! 新宿駅前集合ね」  大きいアシンメトリーのピアス、シルバーの軟骨ピアス、大きな黒縁のカラコン、つけまつげ、ミニスカート。気合いは入っている。完全に女受けの格好で向かう。  「えー久しぶり! 高校卒業して以来会ってなかったよね」  「わかる、久しぶり。いやーマジで最近色々あったんさ。実はマッチングアプリで好きな人ができちゃったん

          マッチングアプリのシンデレラ 7章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 6章【恋愛小説】

          6章 沼  今日もまたたくさんのいいねを送り、たくさんの男とやりとりをする。この作業が一番だるい。  「ごみちゃんかわいい! よかったらはなそ」  ありきたりな文章、不合格。そもそも仲良くなりたいなんて一ミリも思ってないでしょ。でたらめのメッセージを無視して、また無意味な作業を始める。  あれ、マッチしてる。黒髪マッシュで、高身長、良い大学に通ってる。タイプ過ぎる。仲良くなりたい。  「マッチありがとうございます! かっこいいです。仲良くなりたいです! 」  自分からメッ

          マッチングアプリのシンデレラ 6章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 5章【恋愛小説】

          5章 ごみちゃん  目が覚めると隣には誰もいなかった。知らないホテルのベッドの上にただ一人。衣服は身につけていなかった。昨夜からの記憶が曖昧。正直あまり覚えていない。頭がジンジンする。すぐに支度をして始発でアパートへ戻った。  一瞬でもいいから必要とされる快感。アルコールが身体を回る高揚感。生真面目に生きてきたのがバカバカしい。何を悩んでいるのだろう。何もかも、やめてしまえばいい。糸が切れたように。  昨日一緒にいた男の連絡先は知らない。アプリでメッセージを送っても何も返

          マッチングアプリのシンデレラ 5章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 4章【恋愛小説】

          4章 カルアミルク  ピロン。さっそくマッチした。どれどれ? うわーすごいイケメンだ。  「可愛いですね。仲良くなりたいです」  可愛いと言われて悪い気持ちはしない。正直嬉しい。  「ぜひ仲良くしましょう」  メッセージのやりとりをおこない、次の日の夕方に駅で待ち合わせをした。ちょっと急だけど、カフェでお話ししたり、ご飯を食べたりなら大丈夫かな。  「白いリボンのブラウスに紺色のスカートを履いてます。髪型はボブです! 」  アプリ上でメッセージを送る。駅前で立っている私は

          マッチングアプリのシンデレラ 4章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 3章【恋愛小説】

          3章 壊れてゆく 「今日ご飯食べに行かなーい? 」 「ごめん今からバイトなんだ! また今度誘って」  学校終わりにバイトへ行く。何も変わらない日常。 「あいのちゃん今日メイク変えた? 可愛い」 「ありがとうございます。今日ピンクっぽいメイクにしてきました」 「だよね! いいね」  ば先のイケメンの先輩に褒められた。嬉しい。イケメンである上に、女性の細かいところにまで気を遣えるなんて。今日は先輩と二人でホールを任された。頑張れる。 「あいのちゃんってどこの大学行ってるんだっけ

          マッチングアプリのシンデレラ 3章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 2章【恋愛小説】

          2章 キラキラ大学生  「あいのちゃんおはよう! 」  「おはよう! 一限だるいねー」  「そうだね。でも友達に会えるし、私この授業結構好きだよ」  「えーなんか真面目だね」  鮮やかな桜が散る門をくぐり、私は大学生になった。  一年浪人して第一志望、では無かったけどやりたいことができる女子大に入学できた。幼いころからの夢であるキャビンアテンダントになるため。英語を勉強して使えるようになりたい。留学もしたい。そして真っ当に大学を卒業して、真っ当に就職する。完璧な人生計画。臆

          マッチングアプリのシンデレラ 2章【恋愛小説】

          マッチングアプリのシンデレラ 1章【恋愛小説】

          1章 憧れていた上京  「まもなく〜東京」  アナウンスと共に目を覚ますと、窓の外にはキラキラと輝くビル。白く輝く雪山は、いつのまにか近未来的な建造物に変わっていた。それは、空にも届きそうなほど高い、どれだけ手を伸ばしても届かない、遠い存在。  高鳴る鼓動を抑えながら、重たいスーツケースをガラガラと引かせて足早に新幹線を降りる。雪解け水の流れない、初めての春。東京の三月も、少しひんやりしている。澄んだ空気がすーっと鼻の中に入ってくる。濃いピンク色の香り。まだ冷たい春の風が、

          マッチングアプリのシンデレラ 1章【恋愛小説】