時々、夢の中で架空の街に迷い込む。
そこは灯りも店もあり、人も車もいるのに、どこか無機質で冷たい街。自分はその街の名前を知っているはずなのに、いつも道を探していて、目的地は遠く、決してたどり着くことはない。
今朝もそんな夢だった。横断歩道を渡った先にずうっと続く登り坂は、学生時代、最初に暮らしていたアパートを出てすぐの道に似ていた。

道や街といった景色を夢に見る時、自分はいつも迷っている。いつか見た夢では、蟻地獄のようなカーブを描く高速道路で、目的の分岐に辿り着けずに事故を起こしていた。あの夢にはきっと、2020年の春に初めて首都高を運転していた時の心象風景が映し出されていた。

不思議と、昔見た夢の中に、ぼんやりと覚えているものがいくつかある。自分の心象風景と、つまり別の記憶と強く結びついているからだと思う。
ずっと、何かの希望のように、時々思い出す景色がある。明かりの落ちた劇場。客席の上、舞台を見下ろす鉄骨に並んで座る。取り止めのない話をして、隣で笑っていた誰かを、ずっと探しているような気がする。

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