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グリーン電力とグリーン電力証書

 およそ15年ほど前に気候変動に関する相談を受けたことがあります。当時は気候変動に関する興味もほとんどなく、用語をうっすらと知っていた程度ですが、今や時代は様変わり。ここ最近は気候変動に関する問い合わせも増えてきております。それもあって勉強して環境承認制制度脱炭素アドバイザーという資格も取得しました。おかげさまでそれなりの知識も習得することができました。

 さて、一言で気候変動といっても内容もかなり広く、用語もたくさんあり、理論的な部分もあり、これを全部頭に入れるのは大変ですし、そもそも皆様の本来やるべき業務範囲を超えていると思います。しかし、大きな概念としては知っておく必要があるでしょう。中国でカーボンニュートラル対策を進める中で頻繁に登場する概念として「緑証」(グリーン電力証書)、「緑電」(グリーン電力)、そして「国際緑証」(国際グリーン電力証書)があります。緑電と緑証は同じもの?国内緑証と海外緑証の違いは?なぜ企業は緑証を購入するの?本日は、これら3つの概念とそれぞれの違いについて照会します。

1.中国グリーン電力証書(GEC:Green Electricity Certificate)

 グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーで生成されたグリーン電力のために発行される電子証明書で、各発電プロジェクトに固有の識別コードを持っています。1つのグリーン電力証書は1000kWhの再生可能エネルギー電力を表し、1000kWhのグリーン電力が生成されるごとに1つのグリーン電力証書が発行されます。


2017年に中国はグリーン電力証書の発行と自主受託制度を試験的に導入し、国は補助金を受ける陸上風力発電及び集中型太陽光発電プロジェクトに対して接続電力量に応じてグリーン電力証書を発行し、消費者はグリーン電力証書の購入を通じてグリーン電力消費の証明とすることになりました。

 再生可能エネルギーの種類や応用分野の発展に伴い、グリーン電力証書の供給と需要において変化が発生し、元々のグリーン電力証書の発給と自発的引受取引制度において、グリーン電力証書の発給取引が完全にカバーされない、グリーン電力証書の応用分野のさらなる拡大が必要、などの問題が生じ、再生可能エネルギーの発展に適応することができないものとなってしまっていました。

 そして2023年7月に国家能源局は《再生可能エネルギーグリーン電力証書の全面的なカバーによる再生可能エネルギー電力消費の促進に関する通知》を発表し、グリーン電力取引のサポート、グリーン電力消費の認定、再生可能エネルギー電力消費量の計算などの基本的役割を明確にしました。そしてここでグリーン電力証書の申請範囲を拡大し、すべての再生可能エネルギー発電がグリーン電力証書発行の対象となりました。

 グリーン電力証書の特徴として、緑色電力証明書はトレーサビリティがなく、ユーザーは緑色電力の環境属性のみを購入し、実際には緑色電力を使用していません。そのため、「証電合一」(グリーン電力証書と発電が一体化されていること)は実現することはできません。

 その他取引関係については以下をご参考下さい。

2.緑色電力(グリーン電力)

 石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やして得られる従来の火力発電とは異なり、再生可能エネルギーによる電力は環境保全や持続可能な発展に寄与するため「グリーン電力」と呼ばれています。

 2021年9月、国家発展改革委員会と国家能源局は国家電網公司と南方家電網公司に対し、グリーン電力交易試点業務の推進を指示しました。グリーン電力の導入はグリーン電力証書よりも4年遅れてのことになります。

 グリーン電力取引は「証電合一」方式を採用し、物理属性と環境属性を統一しています。生産者(新エネルギー企業)と消費者(電力使用企業、売電会社など)が直接契約を締結し、生産から伝送、消費までの全プロセスを完結するものです。ユーザーは電力エネルギーの使用と同時にグリーン電力の環境権益を獲得し、信頼できる証憑を取得します。

 グリーン電力消費証憑はブロックチェーン技術により、1kWh当たりのエネルギーのグリーン属性のトレースと認証を行い、生産から取引、伝送、消費、決済の各段階を記録し、ブロックチェーンに基づく唯一の証明書を生成します。これにより、企業はグリーン電力消費のニーズを満たし、「双碳」(「炭素排出量のピーク(カーボンピーク)」と「炭素中立(カーボンニュートラル)」)という目標の実現を推し進めることができます。


3.国際グリーン電力証書

 国際グリーン電力証書には、I-REC、GO(Guarantees of Origins)、NAR/TIGRなどがあります。

(1)I−REC

 I-RECはInternational Renewable Energy Certificateの略称で、オランダの非営利財団I-REC Standardが発行するものです。RE100(企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ。世界や日本の企業が参加しています)によって認められ、世界的に取引される国際グリーン電力証書です。

 世界的な大企業が非グリーン消費電力の排出相殺のために利用しており、中国国内の再生可能エネルギー企業もI-RECを発行、取引しているところがあります。

(2)APX Tigrs

 APX機関は米国に本部を置き、グリーン電力証書の登録、トレーサビリティ、取引を行うオンラインプラットフォームを運営しています。NAR(北米用)とTigrs(北米以外用)の2種類のグリーン電力証書があり、APX Tigrsは北米を除く世界的に発行、取引される国際グリーン電力証書です。

(3)GO

 EUの保証証書(Guarantees of Origins)で、2009年のEU再生可能エネルギー指令によって導入され、2012年にEU内で正式に推進されました。EU加盟国及びノルウェー、スイスで認可されています。

 すべてのGO証書には、エネルギーの生産地、投資支援の有無、国の補助金制度の適用状況、証書の発行日と国、施設の稼働日などの情報が含まれています。


 グリーン電力証書を必要とする場合、いったいどれを購入すべきかということに考える必要が出てきます。購入するわけですから価格は気になりますし、信頼性も気になります。また、どこ向けにアピールするのか(顧客に向けて?中国という国に向けて?国際的なカーボンニュートラル目標達成に向けて?)といったあたりを総合的に勘案して購入するグリーン電力証書の種類を決定することになるでしょう。


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