あのときあの子にしか言われなかった「可愛い」を取り返さなきゃいけない

中学校を卒業してから友達と母校を訪れた。先生は、「まあ二人とも久しぶり!顔みせて」とマスクを外させた。私は一瞬顎下までマスクをさげて、すぐに戻した。
「○○さん、すっごい美人になったわね!」
先生はそういった。友達は顔を赤らめていた。
「ほんとそうですよね~!○○さんコンタクトにかえてからすごく印象かわってtt」
とかなんだか私は言った気がする。惨めだった。

なぜか私には爆美女の友達がいるけれど(爆美女が友達になってくれたというよりは、幼馴染が成長するにつれそのポテンシャルをいかんなく発揮して爆美女に進化した、というほうが正しい)私たちの長い付き合いをよく知らない人からは「○○さん、なんで爆美女ちゃんと仲いいの?全然タイプちがうのに」
と言われた。

部活に入部したてのとき、男の先輩は私への自己紹介をあっさり済ませ、隣の美少女新入生ちゃんに自分の事細かな自己紹介を熱弁していた。
彼女も私も内気なほうで初対面の人とは全くうまく話すことができないタイプだったけれど、彼女のほうにはいつも人がいて私はいつもひとりだった。

文化祭のとき、学年で一番美人だったあの子はお姫様のようなドレスをまとっていて、写真撮影の列ができていた。私はよくわからない地味な衣装をみてその子のことを横目に眺めていた。
可愛いその子は顔だけで他学年にファンがいて、誕生日にはクラスも部活もなんの共通点もない後輩から、デパコスをもらっていた。彼女の言葉には皆が耳を傾けて、誰も彼女のことは疑わなくて私がしりぬぐいをしたこともあった。

溌剌とした美少女で彼氏のとだえなかったあの子は、同じ部活なのに私の名前すら覚えてくれなかった。彼女が可愛くて憧れで、少しでも仲良くなりたかったけれど、周りからみてもそんな私の姿は滑稽だったんだろうな。彼女から見ても同レベルの人間じゃないと目に入らないよね。でもそれは彼女が悪いとかじゃない、私たち人間が公園にいる鳩をいちいち個体として認識していないとかそんなレベルのこと。

基本的に塩対応でちょっと怖がられていた高校の男子クラスメイトは、顔が可愛い子とペアになるときだけあからさまに優しかった。勿論、私には優しいわけがなかった。

文化祭であの子がステージに立った時だけ盛り上がりが大きかった。先輩たちは「○○ちゃんほんまに可愛いよね」と盛り上がっていた。


私だって可愛いもの身に付けたいし可愛いって言われたい。メイクもファッションも挑戦してみたけど無理だった。こんなにデブスな自分には身の丈にあってないって恥ずかしくなって化粧を落とした。可愛い服はサイトで眺めるだけ。服屋になんて場違いすぎて入れない。誰かの付き添いっていうていじゃないと無理。アイドル好きだけど公言できない。こんなブスが可愛い子好きっておかしいから無理。「KPOP?うーん、ウォニョンちゃんくらいしか知らないです、可愛いですよね」ってごまかすの辛くなる。本当は中学のころから色んなグループ追ってるくせに。ブランドのカバンとか欲しい。それで通学してる人うらやましい。お金もないけれど自分に合わないから買っても意味ない。ネイルもずっとしたい。マニュキュアですらブスな自分には背伸びしすぎだから家の中でしか楽しめない。ほんとはキラキラワンホンネイルとか眺めるのめちゃくちゃ好きだけれど他の人には言えない。
別に周りの人をブスだとは思わない。私の顔、親の遺伝だなーって思う箇所沢山あるけれど別に親の顔をブスだと思わない。自分の顔だけ本当にブサイクに感じる。体型も同じ。160後半で50前半って別に特段デブじゃないのかもしれないけどとにかくなんていうかキモイ。生物として無理。受け入れられない。結論自分きもい。