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災害に対する自助努力を促す1冊

寺田寅彦は言った。「天災は忘れた頃にやってくる。」(実際は寺田の言葉ではなく、中谷宇吉郎があと付けしたコトバである。)

現代の寺田寅彦=河野太郎氏は本書で


気候変動によって、これまでの想定を大きく上回る豪雨などが高頻度化します。
これまでの前提であった「100年に1度」「50年に1度」の災害に備えるという尺度が崩れ去り、従来の対策では安全とされてきたものが通用はしなくなるという深刻な問題が生じつつあります。

このように言った。

朧気な記憶だが、子供の頃、真冬はマイナス2桁が今よりも多かったような記憶がある。
夜間はほぼ毎日水道を落としていた。
ここ10年ほど、水道を落として深夜を迎えることはなくなった。気温がマイナス2桁になる日は数えるほどしかない。(札幌市の指標では、100年間で年平均気温は2℃上昇している。)

反面、急なドカ雪や、ホワイトアウトになるほどの吹雪、落雷、蝦夷梅雨や短時間に激しい降水が起こるゲリラ豪雨。昔はなかった現象がみられるようになり、災害が身近に感じられるようになってきた。

本書は、大まかに2部構成になっている。
1部目は過去の災害(伊勢湾台風、阪神・淡路大震災、東日本大震災)を振り返り、その教訓と地球温暖化か進行する世界において、未来の災害対応の提言(法律の制定、改廃なども含め)をしている。

2部目は災害が起こった時のシミュレーションをした内容。地震、台風、土砂災害、洪水をテーマにし、「家族」を主体にした物語になっている。
備えがある人、ない人、知識がある人、ない人、それぞれの立ち位置で行動が変わってくる。自分ならどうするだろうか?と考えさせられる。
欲を言えば、この章は再現ドラマにして見たかった。DVD付きで販売できたなら・・・。

本書の弱いところ

シミュレーションの主体が家族に限定されているところだ。
現在の日本は、独居世帯、核家族、シェアハウス、路上生活者、ネットカフェ生活者などもいる。

また、被災する時間は早朝か、朝か、昼か、夕方か、夜か、夜間か。
季節、地域も関係してくる。

劇場で映画を見てる時かもしれず、温泉に入っている時かもしれず、ツイ廃をしている時かもしれない。入院している、介護施設で生活している、身体が不自由である、など、列挙するだけでも、様々な想定がありえる。

だが、百科事典ではないので「1冊の本」にする限りは、河野氏も有識者と話し合い、ある程度バッサリと内容を絞り込んだであろう。

準備と練習

河野氏の迷言?まちがい、名言に「準備と練習」がある。以下、本人のツイートより引用する。

災害は準備(災害保険への加入、避難場所の確認、食料の備蓄)こそできても、練習は家庭ではなかなかできない。
本書を通読し、自分が被災した時のイメージトレーニングをすることで「練習」代わりにできる内容になっている。

災害が全国各地で毎年発生する状況にある今。
困ったら自衛隊が何とかしてくれる。だけではなく、災害発生時「誰かが頑張るのではなく、普段から一人一人が、みんなで当たり前のように備える」という自助努力をし、家族、地域、仲間の繋がりで災害に備え助け合うことが、「国防」「自分の人生、他人の人生を守り豊かにする」事へ繋がっていく。

この本で紹介している四家族のシミュレーションは、全ての日本人に何らかの形で、共通点が見いだせます。本書が、皆様の災害への備えに向けた第一歩となれば幸いです。
はじめに より 引用。

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