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2024年2月に読んだ本


「匣の中の失楽」から「アクロイド殺し」までの9冊

東京都同情塔/九段理江

第170回芥川賞受賞作。
最近音読にハマっていて、まず書き出しを口に出してみるとリズムが軽妙で、うおおHIPHOPだ!とテンション高めで始まった。
(HIPHOPの何たるかは知らない)
(著者にHIPHOP文脈があることを事前に知っていて、引っ張られているだけ)
生成AI、民衆による監視社会、ポリコレ
などなど自分の関心の範囲の話で大変面白く読めた。
特に主人公の言葉を選んで絞り出す描写は身に覚えのある行為で、引き付けて、重ねて読んでいた。LINEやTwitterの簡単なやり取りでよ言葉の意味が正しいか、文法が間違っていないか確かめて時間をかけすぎてしまうのだ。
対面のコミュニケーションでも作中のように脳内検閲感をフル稼働させて、言葉を選んで、でも失敗して、訂正して、結果として長々と喋っている。

あとは伊藤計劃が思い浮かんだ。伊藤計劃は予言という言葉で語られることが多いが予言というよりはその頃から現代のような兆候が見えていたのだろうと思う。

新世界より 上/貴志祐介

きっかけは「ガンダムSEED」。「SEED」の続編、「SEEDDESTINY」にはユートピア/ディストピア要素があり、映画FREEDOMでも語られていたのだが満足できるものではなく、不完全燃焼を解消すべく同じくユートピア/ディストピアを書いていて、ファンタジー性の強いか『新世界より』をチョイス。
思ったよりSEED要素が含まれていておもろい。中盤の世界観の開示からは止まれなくてあっという間に上は読んだ。このまま一気に読んでしまいそうなのであえてストップ中。

幼なじみが妹だった景山北斗の、哀と愛。/野村美月

オタクコンテンツでよく使われる「妹との恋愛」を真面目に書いてる作品ってなんかあるかしら?とTwitterで呟いたところに教えて貰った作品。
内容はタイトルがそのままで、作中の秘密開示が読者視点は「知ってるよ」になってしまっているから良くないと思う。
教えて頂いた通り、実社会での兄妹間の恋愛を書いていて、よくある実は義妹でした〜だったり、「世間なんて知らない!おにいと付き合う!」展開ではなく、リアリティを崩さないのは高評価。
同時に実社会で兄妹間の恋愛を書くには限界も感じられて、これ以上を書くならファンタジー的なフィクション性を用いないと難しいのかなと思った。

前述したような実社会からしたらご都合主義的展開を嫌っているかというとそうではなくて、そこに目的や意味が持たせられてるなら全然やって良いと思っている。

スパイ教室 2/竹町

1巻は仕掛けはよくできてるなと思ったけれどどうもスパイ活動中がお遊戯会を見ているようで、いまいちだったのだけれど2巻はキャラ間の連携が取れて全体的に締まってきていて良かった。屋敷での動き方はストラテジーゲームを見ているような気分で良き。

アクロイド殺し/アガサ・クリスティ

トリックが有名な本作。ウンベルト・エーコの「小説の森散策」を読んでいて、アクロイド殺しから引用が始まったので急いで本を閉じて本屋へ走ったのが呼んだ動機だ。(実際には電子書籍)
実は読む前からオチを知っていて、知識目的のため筋をテキトウに追う不真面目な読書スタイル。クリスティファン、ミステリファンの皆さま申し訳ない。

アクロイドを殺したのはだれか/ピエール・バイヤール

どうせならセットで。犯人は実は違うぜ!と意気込み、クリスティ評論、ミステリ評論を交えながら真犯人を追う本作。クリスティファンにはおすすめ。僕はファンじゃないのでこれまた不真面目な読書。いくつかオチを知ってしまった。ミステリ評論としては今読むと目新しさは無いなと。麻耶雄嵩とか新本格を読んでるとまぁ。
とはいえ以前読んだオリエント急行からは麻耶雄嵩みを感じたのでクリスティが無いと今のミステリは無かったんだなと再認識。

暗闇の中で子供/舞城王太郎

My favorite小説家の舞城王太郎による2作目の小説。「ある種の真実は嘘でしか語れないのだ」という一文に全てが詰まっていると感じて読む前から度々使っていた。
正直よく出来た小説だと思わなかった。けれどもここまでストレートに創作論を語っているのはあまりなく、 三郎=舞城本人とも言えるぐらいに密接な関係性(三郎は本作以降も小説家として度々登場する)から語られる本作は読まれて欲しいなと思う。
舞城を既に何冊も読んでいるため超常現象や整合性の無い物語に違和感を持たずに読んでしまい、本作の狙いに鈍感だったのは反省。
Twitterで少し語ったので良ければこちらも。

https://x.com/wankosoba_toaru/status/1765728638480351735?s=46&t=cmnrMndH399BCdczo8njbQ

匣の中の失楽/竹本健治

2年前に1度リタイアしていて、その後
ドグラ・マグラやその他ミステリを読み再挑戦。なんでリタイアしたんだろうと言うぐらいにスっと入ってきて自分に1番驚いた。
というのは嘘で要因に覚えがある。
My favorite小説家、舞城王太郎による「九十九十九」を経由してしているからだ。「九十九十九」の作中にも匣の中の失楽が出てくることからも意識されていることは明白で、構成も近い要素があるのだ。スっと入りすぎて、構成には「ふ〜んなるほどね」ぐらいの態度に。
奇書の名を持つ本作だが、青春物としての要素もあり、思ったより気張らなくても読めてオススメだ。(脱落しといて何を言っているんだ)
残りは黒死館のみ。準備段階の法水麟太郎短編集すら積んでるのでいつになることやら。

さようなら、ギャングたち/高橋源一郎

これまた音読して読んでいて、笑いながらキャッチーな文章を楽しんでいた。
どうやら作中のエピソードはメタファーであるらしく、十全に読めていないらしい。けれど今の自分はこの読み方で良いのだ。未来の自分に期待しよう。今から再読が楽しみ。

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