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2024/06に読んだ本 

ラノベたくさん!




たかが従姉妹との恋。2、3/中西鼎

全3巻のライトノベル。

1巻の感想

たかが従姉妹との恋。/中西鼎
読むつもりは無かったけど高評価レビューをよく見かけるのと、あとがきでぼくの好きな舞城や安部公房、坂口安吾などをあげていたから気になって読んでみた。

タイトルから分かるようにラブコメで、ちょいと痛々しい高校生と血縁関係の従姉妹”たち”に囲まれて話は進んでいく。前半はいかにもラノベのラブコメパートで好きな人は好きなんだろう。ぼくにはnot for me 読んでて辛い。
終盤、従姉妹たちでの恋愛談議がお気に入りシーン。年長者の従姉妹ちゃん(名前忘れた)が恋愛論を提示して場を制して、その恋愛論が作品の主張になるのかなと思って読んでいたら、他の従姉妹ちゃんもそれぞれ己の恋愛哲学を持っていて反論したり意見を出していて、作品のための道具じゃなくてキャラクターがそこに「いる」と感じられて良かった。

最後にもう一つ。
「誰かを愛したり愛されたりすることってね、世界を壊すことなんだよ」
作中この台詞が繰り返し繰り返し使われる。主題でありこの台詞のための物語なんだと思う。この手法は舞城に似ている。
1巻のみでこの台詞を語れていたかと言われると全然足りていない。2巻で「誰かを~」が一度も現れなかったらガッカリする。言い忘れていたけど全3巻のシリーズ本。
1巻の総評としては悪くないけど、ラブでコメな部分がnot for meの人はわざわざ読むのは…って感じ。だけどまぁ1巻目なので様子見。1000ページの小説と言われたらわざわざと言いたくなるけどラノベってそういうもんだから。

ハーレムも修羅場も性描写も従姉妹というシチュエーションも何もかも興味が無くて、相変わらずのnot for me。
それ以外の恋愛哲学や描写は興味を惹くものはあったけれど、語り方が読者に対して効果的に発揮していない。徹頭徹尾キャラクターに向けて書かれている小説だと思った。良し悪しは置いといてぼくはそんな話は空虚に感じて好きじゃない。
アトラクション的な次から次へアクションを起こす。飽きさせない小説、という言い方もできるがより薄っぺらさを助長させてると思う。総じて嘘くさい小説だった。

ファイヤーガール 1下/星空めてお

上を読んだのは実に2年前。何となく目に入って読んだ。星空めておも初。Forestはプレイ中。
優しい小説だ。「友達を大事にしよう」うん。タコになるぐらい聞いた。言ってくる。聞かされる。けれどその後の

”「ほむらちゃんが心の底から友達でいたい、一緒にいたいって人を、見つけたら・・・その人を特別扱いして、大切にして?いろんな場所に出かけていって、いろんな人に会ってみるのは、とてもいいことよ」”

という台詞は今まで何度も聞かされた友達論と違ってハッとさせられた。特別扱いということはつまりえこひいきするということで、八方美人ではいけないのだ。綺麗ごとではないこの台詞は自分事として強く受け取った、受け取れた。

ジャンルは未開の異世界を探索する冒険小説で、素直に読んでいて面白い。冒険の中で不意に飛び出る台詞に一々ハッとさせられる。

Y田A子に世界は難しい/大澤めぐみ

高性能自立型AI、和井田瑛子ちゃんがワイワイと学校生活を送るお話。
生まれ堕ちて間もない瑛子ちゃんは、友達作りにバイトに部活にと周りを見ながらインプットして、シミュレートしてどんどんと適応していく。
AIの一人称で日常をつぶさに観察し、インプットして、無意識的な振る舞いを言語化する様子は、我々の普段の振る舞いを優しく掬い取ってくれる。

AIが人をシミュレーションするという行為は人間を観察して小説で動かす行為と似ていると感じる。著者の優しさと解像度の高さが伺える小説だ。
2024年favorite小説のひとつ。

ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王/上遠野浩平

どうやら3作目『パンドラ』を飛ばしていたらしい。

オーバードライブは"普通"の学校生活を送るキャラ達がメインで、歪曲王によってそれぞれが自らと対面し、解決を試みる。内面描写はスタイリッシュという言葉からは程遠く、1、2作目と比べると描写は地味だ。
しかしその解決の描き方がイケていて、スタイリッシュさがは失われていない。

バケモノのきみに告ぐ/柳之助

物語を動かす道具としての謎、探偵と助手という立ち位置、ミステリからミステリを引いてキャラクターが映える要素だけを取り出してるのはいかにもライトノベルで、徹底している。

ヒロインがそれぞれ立ってるのも良いね!主人公が負けないぐらいの魅力があるのが更に良し。

妖姫のおとむらい/希

ラノベにはこんなテイストの小説もあるのかと驚く。 物語の中に大きな命題はなくて、描写とやり取りで読ませる。比喩は情景描写がラノベらしくない。(ラノベをけなしてるわけじゃなくて珍しいなと)
空想のご飯が美味しそうでお腹が減る。

それでいてラノベ的な倒錯した癖やキャラがわちゃわちゃもしてて、バランスが良い。
描写が良いと言ったものの近代文学や格調高い翻訳小説と比べちゃうとそこまでなので、期待しすぎには注意(鏡花的文体という噂から読んで期待しすぎてしまった。決して悪いわけではないよ)

スパイ教室03/竹町

情報の後出しが多いのは綺麗とは言えないけれど、「スパイ」という要素が肯定していて気になりにくい、自分は。とはいえこれからずっと続くと不安。その場その場の盛り上げがシンプルに読んでいてテンションが上がる。

スパイ教室04/竹町

人は外部の存在に認められることによって自らの価値を信じ、生きている。 「焔」のメンバー、それにクラウスも誰もが認め合って、そして認めてもらう為に高め合っている。支配によって自らの価値を与えられない「働き蟻」は救世主ティアによって価値を与えられることで救済される。

こんなつまんない文章しか書けないのは一旦置いておいて、なんでこの感想が出てきたのかが大事で、ぼくのことを誰か認めて救ってくれとそんな気持ちからだ。客観的に見てカスな自分を救って欲しい。スパイ教室のコミュニティに羨むことしかできない自分が悔しい。
そんな自分語りが感想のあるべき姿だと信じて語ってるけど、これまた一旦置いといて、ストーリーは手綱を離さないように上手に作られてる。それもあって楽しく読めたのだけど、もっと無駄があったほうが好きだ。必然のみの作品はよく出来てるけどムズムズする。

新世界より 中/貴志祐介

詳しくは下まで読んでから。また次回。
おもろいけどスルスル読めすぎてちょっと物足りない。

続 若草物語/L・M・オルコット

前作、若草物語と比較して歳を重ねた少女たちはそれぞれがどうなりたいかという信念を持ち始め、よりアグレッシブになる。国外に行ったり、結婚したり。シンプルに前作よりも面白く読んでいた。

ぼくの想像するクラシックな少女小説像とはやや離れていて、や、赤毛のアンも小公子も読んだことがないんだけど、なんかもっとこう、ちゃお的な(ちゃおも読んだことないんだけど)ロマンチックさを想像していたら、キャリアウーマン的な自立した女性を描いていて、その点でも興味深く読めた。どうやら当時の価値観では前衛的だったらしい。

多少の説教臭さはあるけれど、ジョーもローリーも皮肉屋で、気になりにくい。押しつけがましくなく、むしろロックンロールに、考え方を教えてくれる良い小説だ。

ユービック/P・K・ディック

内容はノれなかった。うん、これぐらい。なぜこれぐらいかと言うとネタバレを食らっていてそれどころじゃなかったからだ。内容は再読する自分自身に任せるとして、ディックなんか読みたいな~と本屋さんで眺めてて、背のあらすじから面白そうと手に取ったのがユービックだった訳だ。で、そのあらすじがネタバレもネタバレ。バーナード嬢のも取り上げられていた。
(過去に読んだはずなのにな)

バーナード嬢曰く。1 施川ユウキ

黒猫館・続黒猫館/倉田悠子

kindleのセールから。事前知識は無いに等しい。1980年代のアダルトアニメのノベライズ。戦時中という背景と官能的な描写と消え去る美しさの語りとが重なって退廃的な雰囲気が立ち上がってくる。

折角ならアニメも見ようと調べていたらUNEXTに存在することが分かって、後で見ようとメモしといたら気づいたらUNEXTから全てのアダルトアニメが消えてた。

ドン・キホーテ 前編 1/セルバンデス 

前編もそれも1だけなので詳しくはまた今度ってことで。
それにしても面白い。もっと読んだ方がいいよもんな。えっ、もう読んでるって?
それこそラノベはオマージュしやすいんじゃなかろうか。
ハルヒはドン・キホーテらしさを感じる。ドン・キホーテことハルヒをキョンが観測している。違うのはハルヒの妄想、狂気は実現すること。

児童文学論/リリアン・H・スミス

ライトノベルの読む態度もしくは勧める態度の参考になればといいなと読み始めた。ライトノベルと児童文学とでジャンルは違うけれど、似た立ち位置に存在すると思ったため。

引用される児童文学の読みについては面白く読んでいた。が、全体を通して(本書の掲げる)優れた児童文学のみを読むと良いという論調で進んでいってそのことには同意できない。子供時代に良くない本を読むのは時間の無駄と切り捨てる。


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