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008.電柱と家賃と昔話(3/3)

 先祖の遺産として相続した山奥の土地。そこに立っている電柱の家賃を支払いたいと電力会社から通知が届いたが所在地に覚えがない。一族の誰も知らない新事実が分かるかもと期待して私は現地へ。



結論から言うと現地へは行かなかった。自宅の室内で全て解決してしまったのだ。

現地へ走って謎の電柱をこの目で見てみたいとは思ったものの、その所在地は県境の山の中。普通車で通るには技術と勇気が試される細い道で、踏み外せば谷へ真っ逆さまだ。
今は便利な時代になったものでグーグルマップを利用すると道路わきの電柱番号もある程度見ることができる。まずこれを利用して目的の電柱、あるいは近い番号を見つけて、目的地のアタリを付けておくことにした。

しかし写真で道を辿って問題の集落跡から隣県まで到達しても近い番号の電柱すら見つからない。道を外れた山の中に立っている可能性もあるが、確認した限り電線が山の中へ伸びている様子もない。

非常に残念だったが自力での到達を諦め電力会社へ問い合わせることにした。


集落と電柱の所在地は2つの県のちょうど境にあり、隣の県はこちらとは管轄の電力会社が違う。そして問題の電柱の管理者は隣県側の電力会社となっている。

電柱番号から正確な立地情報まで教えてくれるのか不安だったが、電話先の担当者が親切に地図情報まで踏まえて説明してくれた。

電柱が立っている場所は人がいる集落のど真ん中だった。
というか家のそばだった。K地区ではない。話が違うではないか。

結局最初に送られてきた通知に書かれた住所が正確なものではなく、ある程度の位置を把握できるよう、電力会社のシステムが近い地名を自動的に表示しているということだった。県境の集落だったのでより隣県側に近い地名が出てしまったのだろうと担当者が教えてくれた。


 結局問題の電柱はもともと存在を把握していた物のことだった。なんとも締まらないオチになってしまった。

とはいえ今回のことがなければ自分がご先祖の人生の一端に触れることもなかっただろう。あれこれと手前勝手なストーリーを考えている時間もそれなりに有意義なものだった。
次回の電柱家賃の支払いは3年後。そのとき今回のことを忘れてまた大騒ぎしないように気を付けたいと思う。


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