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シンエヴァとつらい記憶

一つ、ぽつりと点在していたエピソードを思い返すと、ネットワークのように繋がったその当時の思考や感情、気分や行動をたくさん思い出すことがある。私にとってシンエヴァは当時の苦しかった生活の記憶に紐づいているらしい。

小泉悠さんの新刊であるオホーツク核要塞を読むことに関連して世界の軍艦をウィキで調べていた。こういうたぐいの本を読む人間は大体安全保障に興味がある。ほうほう東アジアの海軍戦力はどんな感じなのかな。まずは韓国海軍でも見てみるか。大体わかったぞ。次は日本だ。こんな感じか。では次に人民解放軍海軍でも見てみよう。ご存じの方も多いであろうが、中国はロシアとのつながりのパイプが太い。それはあらゆる分野にも見て取れて、特に軍事の分野は密接に連携がある。中国はある時期まで自国の工業力が未熟なゆえに、ロシアの軍事産業が生み出した工芸品に頼らざるを得なかった。特に軍艦は国家の科学力の結晶という側面が強かったために、簡単には生産できない。つい最近まで人民解放軍海軍はロシアの軍艦を使わねばならなかった。ソヴレメンヌイ級駆逐艦というのがそうらしい。とその時ふと関連するリンクに懐かしいものが見える。シンエヴァンゲリオン。つい手が伸びる。

ページが開く。懐かしい写真。踏切の中央辺りから水平線に続く線路を写真に収めた一枚。思い出す。一人で映画館まで自転車を一生懸命こいでいった冷たい道のりを。映画館で映画を見るのは実に十年ぶり以上のことだった。席を決める券売機のモニターがうまく作動しなくて焦ったこと。ポップコーン買うか否か。耳が裂かれるほどの爆音の戦闘シーン。美しいクラシック調の伴奏。重低音のきいた宇多田ヒカルのone last kissとともに終わってしまった映画。終わった。終わってしまった。永遠に終わるはずのなかった作品が終ってしまった。映画館を出ると外は暗がりを帯びた夕焼けが広がっていた。冷たい風。孤独。劇中ラストでシンジは救われたのだろう。それと対照的に終わらない日常に帰っていく私。

あの時ははっきりと鬱であった。その四か月後に潰瘍性大腸炎を発症し苦しい思いをした。その前駆的な鬱状態の苦しみがあの瞬間にはあった。今も心は黒くて深い霧の中にいる。少しばかり気分の悪い夜。


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