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看護師が研究をするメリットって何?

看護師は研究をしなければならないと思いこんでいる。

でも、もっと大事なのは研究を読んで、そこで明らかになった「エビデンス」を自分たちの行う看護に、活用すること。自分たちで研究をするのは、そのあとで十分。

病院で働く看護師は研究が「嫌い」

臨床で働く看護師、特に入職後2〜3年目に「看護研究」を研修の一環として実施している病院は多い。これが、看護師にとって、案外苦痛の種になっている。

なぜか。看護師になって2〜3年目はまだまだ仕事に慣れない。特に近年は、患者の入院日数が短縮され、急性期の状態にある患者がほとんどで、一人一人のケアに時間がかかる。

そのため看護師は、担当患者のことで精一杯。シフトが終われば、自宅に帰ってゆっくりと休みたい。でも、「ああ、研究がある」と思うと、ゆっくりもできず、パソコンの前に座って途方に暮れる….というような状況に陥ることが容易に想像できる。

もうかなり前のことだが、関西の公立病院の30代の看護師が過労が重なり、自殺に追い込まれた事件があった。時の新聞によると、彼女の部屋のパソコンから死ぬ直前まで研究に追われていた様子が伺えたと報道されていた。

また、看護師が研究に対して嫌気がさすのは、多忙だからだけではない。病院の中で研究に対するサポート体制が整っていない場合が多い。相談をしたくても、先輩の看護師たちが必ずしも頼りにはならない。分析に困っても相談する人がいない場合が多い。若い看護師は研究の計画の段階から不安を抱えたまま孤独で走り続けることになる。

これでは、研究が嫌いになるのも無理はない。なんとも勿体無い話であ

なぜ看護師は「研究」することを期待されるのか?

看護師や看護教員の間で認識されている看護師が研究を行う意義とは、「看護の質の向上」である。この考え方に一理あるとは思う。

その昔看護研究が今のように重要視されていない時代。そこでは、看護師は自分に与えられた仕事をこなし、疑問を持つこともなく、淡々と業務をこなしていた。そこでは、おそらく間違った方法でも誰も気づかずそのままで、質の低い看護が行われていたかもしれない。

一つ一つのケアのあり方を丁寧に吟味することは必要。どうしたら感染を起こさずに治療ができるのか、どうしたらもっと早く退院できるのか、なぜこの患者は薬を拒否するのか、というような現象について、その原因を科学的な方法で明らかにしていくことで看護の質は確かに向上していく。

でも、正論は必ずしも、合理性があるとは限らない。

研究をやる以外に看護の質の向上させる方法

結論として、膨大な時間をかけて研究をするよりも、その問題になっている看護の事象について、すでにある研究からのエビデンスを活用するということが先決ではないか。

最近病院の看護師の研究指導をして気づいたことがある。そこでは、研究を仕上げることが優先され、先行研究(つまりすでに行っている研究)を検索し、その一つ一つの研究を読み込んでいくという作業が軽視されている。

本来研究は、すでに同じ研究がなされていたら、それは実施する必要がない。すでにわかっているならば、その研究から結果を拝借して、自分たちが活用すればいい。

しかし、看護研究を実施し論文を作成することが前提となっており、とにかく何か研究をしなければという気持ちがあり、今ある研究では本当にダメなのか、十分に吟味されていない。

これを一般社会での問題解決に置き換えると、おかしいということがよくわかり。

一般には問題が起こった時に人はどう行動するのか。たぶん専門家に聞いたり、ネットから情報収集し、その出来事に対して他の人たちがどのように対処しているかを知り、それを自分の場合に当てはめて解決につなげる。

看護の現場でも同様に、疑問が出たら、まず、今までの研究から情報を得て、そこからヒントを得て問題を解決していくことが理にかなった方法。

研究をするのは、どうしても先行研究から解決のための手がかりが得られなかった時だけで十分。いつもいつも新たに一から研究を始める必要はない。

まず、読める力、活用できる力の向上を目指そう

中途半端な研究をするよりも、一つ一つの質の良い研究をなん度も読み返す。そうすることで、研究から得られたエビデンス、そしてそのエビデンスがどのような方法で明らかになったのかを理解できる。

この地道な作業がとても大切。

これをなん度もやっていくうちに、研究の力がついてくる。「エビデンス」とな何か、そしてそれをどう活用するのか、その能力が向上する。

とにかく、若い時は「研究をする」のではなく「研究を読む」ことに時間を使った方がいい。

そうすることで、自分の行う看護のケアに向き合うことが楽しくなり、研究に関心が湧いてくる。

そうしてはじめて、「研究をやってみたい」という気持ちになれる。

ではでは


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