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何気ないゲイカップルの日常

 今日は朝起きてから、二人ともシャワーも浴びず、パジャマのまま。
 朝は、冷凍したクロワッサンとスクランブルエッグにコーヒー。ふわふわスクランブルエッグは僕の得意料理だが、卵とのバランスなど気にせずケチャップをたっぷりかけて食べると尚うまい。
 豆から挽いて抽出できるコーヒーマシンを買ってから、香りの良いコーヒーが簡単に自宅で楽しめるようになって、朝食を外に食べに行く頻度はガクッと落ちた。
 今朝も、天気も良いし外に出てみようかな、と一瞬思うものの、新型ウイルスの話題で持ちきりの今、人混みの街に出ていくのは億劫だ。

 結局、家の中でネットをしたり読書したりしているうちに昼になり、ストックされていたインスタントラーメンを茹でて、ラーメンの簡単な昼食を済ます。今日のラーメンは、年末に二人で名古屋に行った時に、ホテルの側のローカルスーパーで買った台湾ラーメンだ。冷凍してジップロックに入れてあるニラと、本家とは違うアレンジだが卵を一つずつ落として食べた。
 本家の台湾ラーメンは、年末旅行の時に名古屋駅の味仙で食べたが、とんでもなく辛いという前評判に恐れ慄き、直前でひよって辛さマイルドなアメリカンを頼んでしまった。結果、言うほどは辛くなく、なんだかちょっと薄い中途半端な感じがして物足りなかった。すっかり忘れていたが、僕は幼少期から辛さの英才教育を受けているため、ある程度の辛さであれば、難なく完食できるのだった。今日のインスタントラーメンは、なかなか上手く再現されていて美味しかった。

 午後に突入したが、まだ二人ともパジャマのまま。昼寝の邪魔者であるコンタクトレンズすらはめていない。amazon primeで映画を見たり、そのまま寝落ちして長い昼寝をしたりして、友達からのLINEの返事もワンテンポずれる。でも、今日はいいのだ。有難い友達からのお誘いがあっても、出かけるつもりはないのだから。

 元々出不精だが、冬になると特に篭りがちになる。
 そもそも僕は休日に、一歩も外に出なくても全く平気な人間である。休日に疲れる人混みに出かける人の気が知れない。ましてや行列だらけのテーマパークなんて、とんでもなく体力気力が有り余っている人でないと楽しめない場所であると、僕は考えている。
 休日引きこもりの僕は、パジャマから着替えないのはもちろん、食事についても昼夜全部出前館で済ませるのも厭わない。マンションの下にあるコンビニですら、風雨に晒されることなくアクセスできるにもかかわらず、滅多に行かない。
 外に出るための着替えの手間、エレベーターで他の住人とやり過ごす時間、コンシェルジュに挨拶する、コンビニでの「カードでお願いします」「ありがとうございます」という、二言三言の発声。想像するだけで億劫だ。
 何なら、休前日の夜に休日の間の食料品を全部買いだめして、冬眠中の熊のようにひたすらベッドで寝ることが至福の時間なのである。
 「眠りにつく瞬間が一番幸せだ」という僕のような人間は、ある程度の睡眠時間が確保されている限り、平日を含め、日々幸せを感じる瞬間が訪れるのだから、幸せのハードルが低いなと、自分でも思う。
 
 一方、僕ほど出不精ではない彼は、外に出たいなぁ、などとぼやくが、僕は聞こえないふりをする。「休みの間一歩も外に出ないと、なんだか良くない気がしてとりあえず外に出る」などと彼は言っているが、僕は知っている。
 僕抜きで彼一人で外に出ることは、彼にとってとんでもなく億劫で、絶対に実現しないことを。
 
僕はこのお篭り時間を心から楽しんでいるのだ。彼の気まぐれに巻き込まないで欲しい。
 
 夕方、彼は確定申告の書類に埋れて、何やらPCで作業している。
僕は、会社に着ていくワイシャツのアイロンがけをする。1週間分×二人分ともなると、なかなかの重労働である。でも、僕は元々、「アイロンがけ」という家事自体がそんなに嫌いではない。加えてスタンドタイプのアイロン台があれば、10枚のシャツとはいえ苦もなく作業できる。
 それよりも、貴重な休日に、宅配クリーニングを毎週受け取るために在宅時間を調整する手間の方が、よっぽど辛い。
 
 ここへ来て、僕のエンジンがようやくかかり、動き出す。
 昨日手洗いしたカシミアのニットは浴室乾燥機にかけたまま、洗濯したデニムと一緒に浴室の物干し竿にぶら下がっている。乾燥機の中には、昨晩のうちに乾燥まで終わって、取り出しサインすら消えてしまった状態で、洗濯物が入りっぱなしになっている。それらを一気に片付ける。

 昨晩は、近所のふたごで焼肉だったから、今夜の晩ご飯は軽めでいいよね、ってことで意見が合致した。
 ご飯を炊いて、里芋の煮物だけつくって、連休初日のけんちんうどんの具材の使い回しの味噌汁と、あとは納豆。

 食事をしながら、昨日の焼肉屋のことを思い出す。 直前予約だったにも関わらず、珍しく席がすんなり取れたのだ。
 ふたごはお店の人の感じが良くて好きだ。付かず離れず、楽しく食事ができる。美味しい肉をサクッと食べて、二人合わせて1万円以下。ポイントカードを持たない僕だが、ふたごはLINEで来店ポイントが貯められるし、ネット予約も簡単だ。

 食後、コーヒーを飲みながら、二人でソファでゴロゴロする。この後は風呂に入って歯を磨いて寝るだけだ。まだ20時前だ。時間は優にある。
 ダウンロードしたまま読んでいない本を読んでもいい。次の旅先の情報収集をしてもいい。眠りにつくまで、あと3時間。最高の休日だ。

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