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曇天にゆず

娘と小学校まで。
これが曇天というのだよ、
と言いながら歩く。

手袋と手袋で手をつないで歩く。
この冬、私は初手袋。
あったかいなあ。
寒さの中で感じるあったかさは
たしかにうれしくなる。



登校班の集合時刻は7時45分。
けれど娘は7時30分に家を出ないと
気持ちがダメになってしまうよう。
班長は息子で息子は43分くらいに家を出る。
(だから)あわてることなんてないんだよ。
○くん(お兄ちゃん)を見てごらん。
とか言ってみるけど、
そういう問題じゃないんだよね。
用意もすっかりできているのに、
35分じゃ、もう許せなくて泣いている。
じゃあ遅刻して行く?というと泣き止む。
一気に元気になる。そんな感じで、
ちょっと遅刻して行くことが増えている。
遅刻って言っても、
朝の会が始まる直前。

いつまでも続くわけじゃないだろう。

昨日は近所の子どもが泣いていた。
何がおきたのかは分からないけれど、
多分昨日は行きたくなかったんだろう。
「ひとりで(学校に)行くから」
と泣いている。
「登校班で行けなかったら、
(保護者と)一緒に行かないと
いけないの」お母さんが困ってる。
お母さん、仕事間に合わないだろうな。
洗濯物を干しながら
2人のやり取りがちょっとだけ見えた。
お母さんの気持ちを思う。
男の子の気持ちを思う。
うちも同じだよー、と連絡しようかと
思ったけれどやめておいた。
そのうち、私たち親子が歩く姿を
目にするだろうから。

小学校に着いたら、
担任の先生があわてて職員玄関に
入るのが見えた。
あ、先生も遅刻じゃない?と娘に言う。
娘は えっ って顔をして、
振り返ることなくダッシュした。



帰り道。空をながめる。
ふたたび曇天だなあと思う。

大根を買って帰ろうと
100円玉2枚ポケットに入れておいた。
畑をやっているひとが、
庭先で野菜を売っている。
そこの家には柑橘の木がいくつかあって、
今、見事に実っている。たわわ。
むかしアゲハの幼虫を飼っている時、
ここの家から葉っぱを分けてもらった。
「すみませーん!
アゲハの幼虫を飼っている
○○と申しまーす!」
緊張しながらおじさんに声をかけたあの日。
へ?って顔されたけど
「ああ!アゲハの幼虫ね。いいよねえ。
好きなだけ持って行きなさい」
と言ってくれて嬉しかった。
私が絵描きなら、
この柑橘の木と家を描くな、
とながめるたび思う。

今日は何が売っているのか。
ゆずが二個で100円!
立派な大根もあったけど、
葉つきのかわいいにんじんもあって。
結局、ゆずとにんじんを買った。
箱にちゃりんとお金を入れる。

台所のカウンターにゆずをおく。
さっそく部屋中、ゆず。
これだよ、これ。

二個のゆずがよりそっているかのよう。
おつかれさまのゆず。
ずっと良い香りに包まれている。

いいものを買えた朝だった。